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生きる「思想」と「不安」描く作家のドキュメンタリー公開中!「描きたい、が止まらない」2019.6.27迄

※終了しました。

生きる「思想」と「不安」描く作家のドキュメンタリー公開中!「描きたい、が止まらない」2019.6.27迄

 東近江市に暮らす絵画作家の古久保憲満(こくぼのりみつ)さんを追ったドキュメンタリー映画「描きたい、が止まらない」が、現在フォーラム山形にて上映中です。

 古久保さんは、広汎性発達障害(自閉症)をもちながら3歳頃から絵を描き始め、その作品が国内外で高く評価されてきました。驚くべきは、彼の描く絵の力強い世界観。緻密で膨大なディテールを積み上げ、世界中の建築物や構造物を参考にしながら、都市の鳥瞰図を描きます。

 ある時には「自分の思想を描いている」と語り、またある時には「自分の不安を描いている」と語る古久保さん。それは時に色濃く、時に鮮やかな色彩表現として、画用紙の上にそのまま描き出されていく。一方で、作中では、自分を支える両親からの自立や、欲望ではなく自分の思いから絵を描き続けていくにはどうしたらいいかと自問する姿なども映し出されています。その姿は、生きることを追求するプロフェッショナルそのものとして、観る者に鋭く迫ってくるのです。

生きる「思想」と「不安」描く作家のドキュメンタリー公開中!「描きたい、が止まらない」2019.6.27迄

生きる「思想」と「不安」描く作家のドキュメンタリー公開中!「描きたい、が止まらない」2019.6.27迄

 今回の上映は、フォーラム山形の運営のもと、古久保さんの姿に魅了された、障がい者アートやドキュメンタリー映画の自主上映に山形県内で関わるみなさんの応援によって実現。山形国際ドキュメンタリー映画祭のプレイベントとして開催されています。

なお本編の上映に加え、フォーラム山形のロビーには、古久保さんの貴重な原画も展示されています。原画展示は、やまがた障がい者芸術活動推進センターぎゃらりーら・ら・ら(以下、ぎゃらりーら・ら・ら)が映画上映記念展として企画しました(上映終了後の7月1日(月)から5日(金)は、ぎゃらりーら・ら・らで展示)。

生きる「思想」と「不安」描く作家のドキュメンタリー公開中!「描きたい、が止まらない」2019.6.27迄

 そして622日(土)には、上映を記念したトークイベントが開かれ、山形県内で障がい者アートやアートワークショップの現場にかかわる3人の方が登壇しました。

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向かって右から武田さん、石沢さん、今野さん

 創作活動に取組むダウン症の息子さんをもつ今野由貴さんは、この作品を観て「こんなに達者な子が、ここまで絵を描き込まなければ昇華できない気持ちを抱えているということに、まずびっくりした」と言います。加えて、息子さんを連れていった上映会では、予想しなかった出来事も起こったそう。「『僕は絵を描く道具を持って行くから』と息子はあらかじめ宣言していたのですが、映画が始まると、絵で映画の記録をとり始めたんですね。本来はそこまで細かい絵は描かない人なんですけど、古久保さんに影響されたみたいで。一つひとつ見てみると、映画の流れを描きとっているんです。道具を持って行ったのは、本人なりにこういうことがしたかったんだなあと、これは母としての驚きでした」と、実際に息子さんが描いた絵を見せながら話してくれました。

 今野さんの息子さんは、今年まもなく20歳を迎えますが、中学部、高等部と特別支援学校で過ごしてきました。学校生活は、今後生活で必要な作業の練習など、インプットが中心。教員の指導はとても熱心でしたが、美術の時間などはなく、昼休みには自由時間があってもどう過ごしていいかわからない子どもたちが目立ったと言います。「今の世の中は厳しくて、自分らしいことをする前に社会に出られる力を身につけなければならないという不安が、家庭にも学校にも強かったように思います。でも、学校時代を引きずらず、社会に出てから自分らしさを追求できるような受け皿となる組織があったらいいなあということを、子どもが社会に出る今、強く感じているところ」だと言います。

生きる「思想」と「不安」描く作家のドキュメンタリー公開中!「描きたい、が止まらない」2019.6.27迄

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 その話を受け、アートワークショッププランナーとして子どもたちを中心に多世代の人々が交流する場づくりに取り組む石沢惠理さんは、「自由にやっていい」と言われても何をしていいかわからない子どもたちが増えていることを挙げました。「それは大人から、こうしなさい、ああしなさいと言われて、結果を重視して動くというスタイルが一般的になっているからかもしれません。あらかじめ定めたコースから外れぬようにという恐怖感のようなものが、なんとなく世の中全体にあり、それを子どもたちが敏感に感じとっているのではないかなと。何かをやるなかで、そのおもしろさに気付き、安心して熱中できるような、あたたかいまなざしこそ大切なのでは」と石沢さん。

 山形県内に暮らす障がいをもつ方々の芸術活動をサポートしているぎゃらりーら・ら・らの武田和恵さんは、「まさに社会においてはそういう場所が必要なんだと思いますし、自分のことを好きでなければ自分の好きなものを追求することはきっとできない。だからそういう場所をどんどんつくり、そこで多様な人たちが一緒に出会っていくことが大事」だと語り、今回のドキュメンタリー作品も、障がい者アートという視点だけでなく、家族のドキュメンタリーとしても見てもらえたらと話しました。

 トーク後の質疑では、発達障害をもつお孫さんがいると話す男性から、「自分の表現のアウトプットの場があり、社会のみなさんに認められていることが、障がい者であろうとなかろうと、とても幸せなことだと思う」と映画に対するコメントが寄せられ、それを受けて、上映の司会進行役を務めたわたしの会社の遠藤暁子さんは「私たちも古久保くんが特別な存在にならないようになったらいいなという気持ち。山形がどんな人でも生きたいように生きられる場所になるよう、これからも今日の登壇者のような人たちの活動を発信していきたい」と結びました。

 映画「描きたい、が止まらない」は、627日(木)までフォーラム山形にて上映中です。ぜひこの機会にご覧ください。

【上映時間】90
【監督・撮影】近藤剛
【出演】古久保憲満
【上映期間】6/21()6/27()

【WEBサイト】
フォーラム山形
ぎゃらりーら・ら・ら

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