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日常と旅の融合

かつては宿場町として栄えた福岡市東区の箱崎。
今では博多駅まで電車で5分という立地ゆえマンションが立ち並ぶ一方、商店街や筥崎宮などレトロな風情が漂うこのエリア。

そんな箱崎にできた初めてのゲストハウス「HARE to KE(ハレとケ)」。
JR箱崎駅から徒歩1分と、まさに箱崎の玄関といえる立地だ。

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(駅を出るとパッと目に入ってくるオシャレなデザイン。2018年6月にオープンし、先日1周年を迎えた。)

しかし中心市街地でもなければ、観光地でもない場所になぜゲストハウスができることになったのだろうか。
そして、ゲストたちはどんな風に箱崎を”観光”しているのだろうか。

今回は、企画の段階から携わり「HARE to KE」を設計した「ハコと場をつくる (株)SAITO」の斉藤康平さんに話を伺った。「SAITO」とは、箱崎を拠点に設計のみならず、まちのストックを活かしたまちづくりも手がけている会社だ。

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(父政雄さんから会社を引き継いで兄弟で代表をされている斉藤康平さん。)

『「HARE to KE」はいろんな偶然が重なってできたんですよ。』と経緯を話し始めてくれた。

実は、港町でもある箱崎は国際色豊かなエリアである。九州唯一のイスラム教のモスクがあったり、エスニックな料理店が点在したりと、多種多様な人々が住んでいる。他方で、地域のコミュニティとして交流が活発とは言えなかった。そこでNPO法人「筥崎まちづくり放談会」では、その解決策として、地域の人も外からの人も集まれる「ゲストハウス」のような施設が必要なのでは、という提案が生まれていたという。

そんな中タイミングよく、駅前にあった鈴木不動産の建て替えの依頼が斉藤さんたちの元に届いたのだ。そんな複数の縁とまちの玄関という立地から、自然と2階部分をゲストハウスにすることになったそうだ。

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(一階には地域密着の「はこざき駅前食堂」が構えている)

客室は、二段ベッドが並ぶドミトリーの部屋と布団を敷いて寝る和室の2種類だ。しかもこの和室は客室のみならず茶会や展示会でも活用することが可能だ。

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室内の風情のある照明を見ていると、
「これ、三畏閣で使われていた照明なんですよ」と康平さんが教えてくれた。

三畏閣(さんいかく)とは、九州大学の箱崎キャンパスにあった、学生や教職員に長年親しまれてきた純和風の集会施設である。しかしキャンパス移転の際に解体されることなり、後世に歴史や文化を引き継いでいく目的として、使われていた建具や畳が「HARE to KE」などで第二の人生を歩んでいる。

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(左:新しい室内にもマッチし、風格を感じさせてくれる。右:今はなき三畏閣。堂々たる佇まいだ。)

実際に泊まりに来ているゲストは、韓国や中国、台湾からの方で8割を占めるそうだ。その証に多言語のガイドブックが所狭しと並べられていた。
中には「HARE to KE」を拠点に、九州各地を回るツワモノもいるそうな…

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一方で、ゲストのみならず地域との交流が盛んなのも「HARE to KE」の特徴だ。ロビーで商店街のミーティングや展示会が行われることもしばしば。また、建設時に行ったクラウドファンディングの返礼品には、商店街とタッグを組み、オリジナルの下駄作り体験やはしご酒ツアーなど、箱崎が感じられるものを盛り込んだ。

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(「HARE to KE」のロビー。期間限定で康平さんの父政雄さんのスケッチを展示中だ。)

そんな箱崎と共に歩んできた斉藤さんに、インタビューの最後、「HARE to KE」と箱崎のまちがどうなっていって欲しいのかを伺うと、「まちぐるみ宿」
というキーワードが返ってきた。

まちぐるみ宿とは、旅館やホテルの中だけで旅が完結するのではなく、まち全体を宿と見立てる考え方だ。例えば、宿の大浴場に入って客室内で食事を楽しむのではなく、近くの銭湯に入ってまちの食堂や居酒屋で地元の料理に舌鼓を打つといった具合だ。

歴史ある箱崎では、昔ながらのお店や神社がこれまでまちの顔となってきた。日本三大八幡宮にも数えられ、1000年以上の歴史を持つ筥崎宮。創業80年以上のはきもの店や老舗の和菓子屋などがその代表例だ。

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(筥崎宮(右)と放送会(左)。放送会は箱崎のみならず福岡の風物詩だ。)

一方で最近ちらほらと小さなアトリエや飲食店がオープンしている。福祉施設の品評会で5年連続金賞を取ったプリン屋や、お酒も飲めるおしゃれなカフェレストランなど、新しい風が箱崎のまちを駆け抜けている。

だからこそ「ここを拠点としてまちの日常を歩いて旅して、箱崎の人に出会ってほしいと思っています。」と斉藤さんは熱く語ってくれた。

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(新旧が見事に調和している箱崎商店街。)

きっと歩いて地元の人と出会うことでのみ、得られるまちと人の魅力があるに違いない。

今後は「HARE to KE」でも、英語のまちのガイドや商店街のお店のメニューを作るなど、より交流のしやすい仕掛け作りをしていくそうだ。

そして箱崎のまち全体も大きな転機を迎えている。九州大学の箱崎キャンパスが移転したことで住む若者が減ったり、商店主の高齢化によって空き店舗や空き家が増加するなど、徐々にまちから賑わいが失われている。

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(現在では一部の建物を残し、ほとんどが解体された箱崎キャンパス。)

しかし斉藤さんはポジティブに捉え直すことが可能だと言う。
「福岡市全体で見ても中心部に近い場所でこれだけ”余白”が残っているところは珍しいんですよ。そのハードストックを活かして、面白い人やお店を呼び込むことで、地域にとってもゲストにとっても魅力的なまちにしていく構想です。」

失われゆくものと新たに生まれゆくもの。
その二つの間に橋をかけたその先には、ホストとゲストの境界を越えたハレ(観光)とケ(暮らし)の新しい融合が待っているのだろう。

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名称

HARE to KE

業種

ゲストハウス

URL

https://haretoke.machicompany.com/

住所

福岡県福岡市東区箱崎3丁目8−1 鈴木店舗2F

TEL

050-5329-2350

アクセス

JR箱崎駅徒歩1分

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