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鎌倉市居住者インタビュー【アーティスト・工藤えいこさん】

移住者の声

2021.11.24

都内から子育てを機に2009年に鎌倉へ移住したのち、アーティストとしてその活動の幅を広げてきた工藤えいこ(活動名:ureshica)さんに鎌倉移住のきっかけや、ご自身の活動についてお話を伺いました。

鎌倉市居住者インタビュー【アーティスト・工藤えいこさん】
リラックスした表情の工藤えいこさん(撮影:はがかおりさん)

数年前のある冬の寒い日、堀部安嗣氏の設計した鎌倉山集会所にてウクレレとピアノ演奏とともに彼女の歌声を初めて聴いたとき、子守唄のようなやさしく包まれる歌声に自然と涙がながれ、感情が揺さぶられたのを覚えています。

詩の個展や音楽活動を重ね、今年の2月には絵本「ありくんとじかんくん」も出版。絵本の原画巡回展と音楽会を開催。最近では「空と樹と.」を立ち上げ、葉山にて人と人との点を紡いでいくことを目的としたマルシェを主催されるなど、多方面で活動をされている工藤えいこさんに、鎌倉の佐助にある、海まで見渡せる素敵な会場「TIETIE PUBLIC SPACE」での音楽会の後、お話を伺いました。

鎌倉市居住者インタビュー【アーティスト・工藤えいこさん】
活動の様子(撮影:はがかおりさん)

-活動のきっかけを教えてください。

工藤えいこ(活動名:ureshica)さん(以下工藤さん):小さい頃,宮沢賢治の「やまなし」を読んで日本語の音のおもしろさに惹かれ、詩を作り始めました。詩の製作を本格的に再開したのは、長女を出産してからです。

2009年に鎌倉に引っ越してからは出会った人との繋がりと、心地いい環境で心の余白が生まれ自然と表現するようになっていきました。出産で活動停止になっていた音楽を再開したのは5年前。それまでため込んでいた詩が膨大な量になってしまって、歌にしたらどうなるんだろうと作り始めたのがきっかけです。

鎌倉市居住者インタビュー【アーティスト・工藤えいこさん】
鎌倉にある工藤さんのご自宅。友人の子供もこの庭で遊ぶのが大好き

-鎌倉のご自宅は庭に森がある素敵なご自宅ですよね。都内から移住したきっかけを教えてもらえますか。

工藤さん:娘が感受性豊かだったこともあって、大きな音が出せない環境での子育てはすごく大変で。のびのびと子どもが過ごせる場所を都内で探していました。夫の仕事がとても忙しかったので、鎌倉は家探しの候補にはあがっていませんでしたが、たまたま見た物件がとても気になって、おもしろ半分で鎌倉まで家を見に来ました。

紹介してくれた不動産屋さんが連呼する「好きな人は好き」という言葉が気になる、山坂を登って森をかかえた一軒家。訪れたとき庭には一面のタンポポと満開の桜。3歳だった娘がそこで遊び始めたのをみて一目で気に入ってしまいました。「好きな人は好き」つまりはほとんどの人は選ばないともとれる家。都内に戻る電車の中ではあの家を諦める理由「夫の通勤、森の管理、坂道…」考え出したら果てしなく出てきました。それでも頭から離れないこの家でしたが、夫の「どうにかする」の一言で住むことを決めました。子どもに導かれ、感覚を大事にして決めた場所。ちょうど、近所には同じ世代の子どもたちも多くいて、山の住民で子育てできる環境にすごく助けられました。

鎌倉市居住者インタビュー【アーティスト・工藤えいこさん】
新作のえほん「ありくんとじかんくん」

-「ありくんとじかんくん」はページ毎の印象的な絵とシンプルな言葉でつづられた、大人も楽しめる絵画集のような絵本ですね。出版に至る経緯やどんな思いで作られたか教えてください。

工藤さん:イギリス人画家ブライアン・メイソンの絵を所有している友人から絵本の依頼を受けました。ブライアンの絵を初めて観たときの印象は、ありのままの自分を表現していてやさしさに包まれる感覚でした。それから600点ほどある作品を毎日見ているうちに、彼が絵を描いている時間を感じるようになり「過去の彼の時間と、今の私の時間がまるでとけあっているような」瞬間があって。彼はそれを楽しんでほしいと思っているんだ、と感じたんです。そして、大切なことはその時間は私自身の時間なのだということ。それを絵本で表現しようと思いました。

その人の時間は、ここにいることが素晴らしくて、どんな経験も素敵な時間。絵本のありくんはいろんな絵の中に入り込むのですが、時には肩を落としながらとぼとぼ歩いている。それもひとつの経験なんだろうと思います。だからこそ、想像力を使って様々な物事をとらえて自分の足で歩くのも人間のできる楽しみのひとつなんだろうと。もう一つは、自由ってなんだろうという問いかけです。観る、聴く、作る自由。枠から外れるとそこから新しい発想が生まれてくるんじゃないかと。

鎌倉市居住者インタビュー【アーティスト・工藤えいこさん】
アーティストとして活動の幅を広げている(撮影:はがかおりさん)

-詩人、歌、アーティストとして今後の活動を教えてください

工藤さん:新しい表現として「空と樹と.」というプロジェクトを立ち上げました。自分の感覚を大切にしていると、最終的には想像力で暮らしも彩られていく。そんなことを周りの人とやってみたいと話していたんです。ちょうどそのタイミングで、葉山の古民家「SEE THE SUN」を紹介してもらうことができて、「庭の音」というイベントを立ち上げました。

人と暮らしとアート、そして問いかけのある場所。庭のどんな音も素敵、一人ひとりの個性がそこにいるだけでいいって言える場所になればいいなと思い、「庭の音」と名付けました。「庭の音」はきっかけのようなものです。ここに関わってくださる方はもちろん、来てくださる方にとっても何かが生まれるきっかけになればと思っています。ほんの些細なことから始まるんじゃないかと。点という人と人、二人いたら社会になるし、仕事が生まれる。だいたいのことは絵本のようにシンプルなんじゃないかって思います。

アーティスト活動としては、本や絵本の制作を来年はしようと思っています。日本語を感覚で味わうような本を作りたいですね。音楽会も活動の場所を広げてたくさんの人と出会えたらと嬉しいです。

-穏やかな人柄のなかに、とてもとても真摯な思いを秘めて表現活動をされている工藤さん。身近な人たちの繋がりから生まれた表現の拡がりがこれからも楽しみです。12月には鎌倉の「佐助カフェ」、神保町の「無用之用」で音楽会。2022年春には福岡のピアニストと音楽会も予定されているとのこと。工藤さんの直近の活動については、下記のInstagramリンクよりチェックしてみてください。

工藤えいこ(ureshica)さんのInstagram

「空と樹と.」の活動はこちら

一部写真提供:はがかおりさん

また、11月21日~11月28日まで葉山町の「SEE THE SUN」にて、イベント「庭の音」を開催しています。

11月27日・28日にはマルシェも開催しますので、ご興味のある方は、ぜひお立ち寄りください。

日時

2021年11月21日~2021年11月28日

会場

「SEE THE SUN」

住所

神奈川県三浦郡葉山町堀内810-2

URL

https://seethesun.jp/sorato/

備考

イベント詳細はリンクよりご確認ください。