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【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」

家・物件探し
2025.08.20

【real local名古屋では名古屋/愛知をはじめとする東海地方を盛り上げている人やプロジェクトについて積極的に取材しています。】

岡崎の籠田公園からほど近く。古きよき「路地」が残る閑静な住宅地にある古民家シェアハウス「キノエノ*farm house」を取材しました。このハウスのオーナーであり、多岐にわたり岡崎の地域活動にもかかわる天野裕さんの熱く、そしてウィットな想いをご堪能ください。

※現在2室の入居募集中です。詳細は末尾概要欄をご確認ください。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
シェアハウス「キノエノ*farm house」

 

–本日は、よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。

 

–まず、このシェアハウスをつくったきっかけを教えてほしいです。ここは所有しているのですか。
そうです。もともと実家とかそういうわけではなくて、不動産サイトに出ているものを購入しました。本当はシェアハウスじゃなく自分が住みたかった。場所もいいし、広さも庭もあってよかったので。いま住んでいるマンションから移住するプランだったんですよ。

 

–引っ越しですね。
そう。引っ越しを企てて家族にプレゼンしたら合意が得られなくて。。路地に囲まれているので大きな車が通れないのがマイナスポイントでしたね。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
周辺には籠田公園など市民の行き交う場が多い

 

–おぉ、、それでシェアハウスにすることに?どのような思考の経緯でそうなったのでしょうか。
このあたり(QURUWA一帯)は、子供と遊ぶにしても夜ちょっと遊びに行くにしても、すごいいい環境だと思います。やっぱりそういう面白いものが出てくると通うよりも住んだほうが楽しいじゃないですか。ただ、不動産サイトで探してみても分譲マンション、もしくは建て売り戸建、あとは単身者向けの住まいみたいな感じで住みたい選択肢がないんですよね。そこで面白い「住む選択肢」をつくりたかったのがひとつの目的。

もうひとつは「路地裏」ですね。雰囲気も好きだし家が密集していて隣同士の距離も近い。
絶対に住んだら面白い場所になるなというのがありました。お店にするには周りが住宅地すぎるので他にない「住む選択肢」をここに用意できたら好む人がいるだろう。ということでシェアハウスというかたちに行きつきました。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
シェアハウスがある地域にはいまはめずらしい「路地」の風景がのこる

 

–いいですね。すごい面白い。入口が投機目的で買ってないというのが珍しいですよね。
この家には愛着がありますね、最初から。 買う前に町内会長さんにアプローチをして、仲良くなれたことも大きなプラス要因でした。

 

–根回し後に購入か。(でも家族には根回ししてなかったんだ…)
このあたりは道幅が狭いけど広げたら建て替えられるいわゆる二項道路ですらない通路っていうやつなんですよ。物件も接道しておらず建て替えできない物件が二、三十軒ある。それでは後継ぎ世代は不便で出ていっちゃうじゃないですか。結果的に空き家とお年寄りが増えていく。災害リスク的にはとてもよろしくない状態になるわけですよね。消防車も入れないし。

 

–理解します。時代が止まったままになる。
一般解でいう不動産価値で見るといろいろと難しい見方になると思いますが、一方ですごく立地はいいし、僕から見たらめっちゃいい場所だなと思う。
そういうネガティブ要素をポジティブに解決というか、解けるようなやり方があるはず!と思っていて。なので、ここだけじゃなくて「ここ使えたらなあ」と思ってる空き家や空き地がいくつかあります。

ここをひとつのきっかけにして、ほかの古民家もちょっとずつ借りたり、有効活用したりするのを増やしていきたいです。町内会長さんと事前に仲良くなるのは、一軒だけでなくエリアとして先ほど話したことの実現可能性がありそうかどうか、これを感じにいくためです。この物件は、ここの町内会の雰囲気ならいけるかもしれないと感じ得たため購入に踏み切りました。

 

–町内会をフィールド、町内会長さんをパートナーとして見てるわけですね。天野さんからは「一軒だけでなくエリアを観ている」というワードをよくお聞きします。その感覚に至るになにかきっかけがあったのでしょうか。
今の活動のベースにあるのが、松應寺(しょうおうじ)横丁ですね。10年くらい前にあいちトリエンナーレの展示会場になりました。こちらも再建築できない建物がたくさんあり、だれが持ち主かもわからない。僕らから「空き家を活用したい」と地元の方に持ち掛けたんですが、「こんな場所、誰も貸してくれんぞ。借りるやつもおらんぞ」と当初はネガティブでした。それが試行錯誤の結果、すごくいい形で再生されていった。

空き家が放置されている状態って、ちょっと暗い影が差している感じなのですが、人の想いや手がそこに入りコミュニケーションが産まれると生き生きとしてくる。この現象を起こすには、一軒だけではなくエリア全体を捉えて活動しなくては、と考えるようになりました。「この場所にはこんないいところがあります」ということをなるべく発信して想いをともにする仲間が増えてくると、地元の人たちも地元の良さを再認識されるというか、いい効果が出てくるんじゃないかなと思っています。

 

–かなり熱量を感じます。
この間もここで流しそうめんをしたりね、茶話会のようなものを月に一度やっています。基本的に町内会の方々に集まってもらうための機会にしようと思って。おじいちゃんおばあちゃんたちが、最初はやっぱり入りづらいんですよね。そこに町内会長さんや知った顔がいると、徐々に来てくれるようになって。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
リビングに設置されている縁側。この縁側も地域のみんなでつくった

 

–すごいことだな、、
茶話会を喜んでくれて、こういう住み方っていいねと言ってくれるご近所さんがいましてね。2階に4畳の部屋があるのを見て、「いまは家族と一緒に住んでるけど、もし独りになったらこういうところに入るのもありかもね。」とおっしゃってて、地域の老齢の方の選択肢になる、そんな角度でも地域貢献ができたらとても嬉しいと思いました。

 

–新たに街に入ってくる人だけじゃなく、いま住んでいる近所の方にとってもうれしい場になっていく。なかなかできないことですよね。
はい。そのひとつの仕掛けとして「畑」があります。シェアハウスだとやっぱり短期で出てかれる方もいます。また、現在は男性女性の隔てなく入居していますが、あまりよくない目で見るひともいたりして、外から入ってくる方が溶け込みづらいなっていうのは、いままでの経験からも感じます。

野菜ができたら「はい、おすそ分けです!」っていうのは、なんの下心もなくコミュニケーションできる。野菜は有効だっていう仮説のもと畑をみんなで運営しています。こないだは茶話会の後に食べごろの野菜をおすそ分けしたり、入居者の方が自主的に収穫した野菜を軒先に並べて持っていっていただいたりして、お礼の手紙が届いたなんてことも。最終的には入居者と近所の方が一緒に畑仕事をするって姿を思い描いていまして、作業してこの縁側でお茶できたらいいですよね。

この「縁側」もご近所の方との接点を持つ仕掛けとしてつくっています。
客人を招くとき基本は家に入らないといけないんですけど、家に上がるというのはちょっと気が引けますよね。そこでちょっとここでお茶だけすぐに出すのでと座ってもらうと、結局1時間くらい話していかれたりして。(笑)境界を曖昧にして居心地よい接点をつくっています。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
庭にある畑では野菜を栽培している
【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
入居者が自主的におすそ分け。夕方には空になった桶にお礼の手紙が入っていた

 

–人の交流が深く考えられていますね。ありがとうございます。想いやハウスの特徴を理解することができました。少し視点を変えましてつくった背景を聞きたいです。企画から費用捻出まで天野さんおひとりで担っているのですか?
そうですね。ただ企画段階では、QURUWAで催していた企業版リノベーションスクールに企画を持っていって皆さんのご意見を伺っていました。内装工事のことなどはQURUWA仲間であるstudio36の畑さんや地元の製材会社の現場監督をしている柘植さんに相談しながら計画や材料調達を進めていきました。
工事は地元のみんなの力も借りながら半分はDIYイベント的に進めていきましたね。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
外壁もDIYワークショップでみんなで塗った

 

あと、リノベーション予算は限られていたので今回手を付けなかったスペースもありまして。入居者でもそうでない人でもよいのですが利活用してほしいですね。一応、シェアハウスが全部埋まれば収支的問題はないですけど、そこが動き出すともっと面白いことが生まれるだろうと期待しています。どう対処していくかは入居者のみんなで考えた方が面白いだろうなと思っています。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
1階間取り図 チャレンジスペースはアイデアを募集して今後利活用していく予定(入居者も利用OK※費用要相談)
【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
2階間取り図

 

 

–地元のみんなと作りあげたのですね。作った後のことも教えてください。出来上がったのはいつ頃なんですか?またお部屋の構成もおしえてください。
入居募集を開始したのが2024年9月からですね。全3室あって、ちょうど転居される方がいて、2室が空きます(2025年9月時点)。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
リビングダイニング※共有スペース
【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
居室A (8畳+収納4畳)
【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
居室B(4畳+収納0.5畳)
【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
居室C(4畳+収納0.5畳)

 

–入居者さんを迎えてみて思惑と一致したこと、想定外だったことがあれば教えてくさい。
やはりオープンマインドな方が入居してきますね。勝手に自分を対外的に開いてくれる。流しそうめんなど町内会でイベントがありますが、休みの日に積極的に参加してくれたりとか。交流を楽しんでくれてるのはとても嬉しいですね。
僕の気持ちとして、地域の人たちと仲良くなってもらいたいのがあるので。
気づいたら自分で(入居者としての)インスタアカウントを作っていて、ハウスでの日常を発信してくれています。部屋が埋まってないのに僕が全然募集の発信しないので。笑

 

–このハウスを舞台にオーナーと居住者が相互補完してるんですね。
コンセプトが立ちすぎると排他的になる不安があって。緩めの運営意識をしていますが、こんな感じでぬるっと成り立っていってしまう。それがこの地域の魅力なのかなって思ったりしています。キーマンとなる人が意外と(地元出身者でない)よそ者が多いことも、ベタついてなくていいのかもしれません。

 

–なるほど。それでは最後に、オーナーとしてどのような方に入居してほしいですか?
僕も以前に住んでいましたが、シェアハウスの一番の醍醐味って人のつながりが広がることだなと思います。ここに住めばいろいろな人に会えるっていう、街とのハブとし使ってくれる方がよいですね。この街で面白いことしたいなとか、面白い暮らし方したいなっていう人に対してハウスが良い入り口になれるんじゃないかな。康生通りにあるコモンカシワさんなどこのエリアには他にもシェアハウスがあり、シェアハウスのなかでも特徴を見て選択するできることは良いことなので、その一端を担えればうれしいですね。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
ハウスでは定期的にイベントが行われており、多くの人が行き来している

 

–本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
ありがとうございました。

【愛知県・岡崎市】路地裏のシェアハウス「キノエノ*farm house」
お話を伺ったオーナーの天野さん

 

天野さんはシェアハウスの運営や未来について「入居者とともに考え実現すること」を大切にしていると強く感じました。
言わば商売道具である「賃貸住宅」を街の構成要素の一部とする意識がつよく、記憶に残りました。畑活動や茶話会をとおしてハウスと地域の交点をつくる天野さんの姿勢はこの住まいの特徴に昇華され、住むものの日常に刺激を与えてくれることでしょう。

住みながら能動的に運営にもかかわり、オーナーとともに住まいを育てていきたい方にはとてもよい環境だと感じています。そしてその経験は次の住まいに移る際によい財産になるとも。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

・文章|与那覇 侑哉(synesthesia

・写真|天野さん提供

所在地 愛知県岡崎市
備考

居室A:8畳+収納4畳 63,000円/月
居室B:4畳+収納0.5畳 40,000円/月
居室C:4畳+収納0.5畳 42,000円/月

■共用スペース
リビングダイニング:14畳
シャワー・洗面所
菜園・縁側

■チャレンジスペース※整備費用、賃料は応相談
ガレージ:アトリエ、工房向き
台所:厨房向き
書斎:物販、書斎向き

■内覧時、面談あり

■Instagram
https://www.instagram.com/kinoeno.okazaki/