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「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催

イベント

2024.04.29

鎌倉とロサンゼルスを拠点として活動するアーティスト、フランシス真悟氏の展覧会「フランシス真悟 |Exploring Color and Space― 色と空間を冒険する」が、湘南らしい立地も魅力のアットホームな美術館「茅ヶ崎市美術館」にて開催されている(2024年6月9日まで)。

初期の作品から最新作まで約100点が展示される大規模な展覧会となっており、茅ヶ崎市美術館での開催に合わせて描かれた新作は、この美術館に展示されるからこその仕掛けもあり、見ごたえのある内容だ。

4月21日に行われたアーティストトークにお邪魔し、フランシス真悟氏自らの作品解説を通じて、この展覧会の魅力をお伝えしたいと思う。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
《Infinite Space (Sunshine turquoise) 》2023-2024 の前にて。フランシス真悟氏

アーティストトークに現れたフランシス真悟氏(以下「真悟氏」)は、とてもにこやかで気さくな印象だった。集まったひとたちは80名ほど。各展示室をみんなで順番に移動しながら、アーティスト自らが作品の解説をしていくというとても親密な会であった。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
天窓のある展示室。この天窓を活用した仕掛けがある

まず、美術館入口から奥の部屋へ。ここには、今回の展覧会に合わせて描かれた新作をメインに展示している。明るい天窓のある展示室に、繊細な色彩と、引き込まれるような奥行きを感じさせる独自の作品世界が展開されている。真悟氏の作品は抽象画で、その優れた色彩が人々を魅了し世界的にも高く評価されている。新作は、光によって色味の変わる顔料を用いて制作されており、見る角度や自然光の変化によって色が変化する。色の重なり、組み合わせ、空間という様々な要素が織りなす崇高な世界観が真悟氏の作品の醍醐味であるように感じる。ちなみにこの部屋には仕掛けがあるが、その話はまた後ほど。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
初期の作品からコロナ禍で描いた《Daily Drawing》シリーズまで、幅広く展示されている

その後、地下の展示室2へ移動した。ここには、初期の作品からコロナ禍のロックダウンの間に描いた作品が並ぶ。これらは、今回展示されている作品のイントロダクションともとらえることができる。中にはアメリカから持ってきた作品もあり、美術館に訪れる方々、特に子供たちに、ひとりのアーティストがどのように作品を描くことを始めたのか、また、そのプロセスを体感して欲しいという気持ちから、この展示を行うことにしたそうだ。

コロナ禍には真悟氏はアメリカにおり、都市のロックダウンのため自宅からアトリエに行くことができなかったという。そのため、自宅にある画材で一日一枚のドローイングを描いた。その日、その時に自分が感じたことを作品にし、その中からさらに深く突き詰めていきたい題材を探す日々だったという。その日々の渦中では、まだ作品がどこにたどり着くのかは自分でも分からなかったという。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
《Silent Light (Sky) 》2007

次の展示室3では、広い部屋に半円形に広がる作品《Bound for Eternity (magentablue) 》を見ることができる。ひとが生きるサイクルというのは、良いことも悪いこともいずれは過ぎ去っていくことであり、ひとつの場所でじっと意識を集中していると「私たちは大きな自然のサイクルの中で生きているのだ」ということが再認識できる、と真悟氏はいう。真悟氏は、抽象画というものはアーティストがどのように感じたのかを考えることも大事だが、見たひとがどのように感じるのかということもとても大切であるという。作品は半円形となっており、ひとが中に入り作品を体感することができる仕組みだ。ぜひじっと作品を見つめ、包まれるような感覚を味わってほしい。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
《Bound for Eternity (magentablue) 》 2009

さて、再度1階の最初の展示室に戻ると、そこに展示された作品は、同じものであるのに趣が違うことに気づくことになる。今回の展示では、1時間につき15分程、天窓を閉めて自然光を遮る時間を設けている。1階に展示された新作《Deeper Reflections in Blue》は、光の当たり方によって色が変化する顔料を使って制作されている。天窓からの光がないと、色が変わって見え、また作品に近づいていろいろな角度から観察しても色彩の変化がある。ひとつの作品には様々な面があり、様々な角度から物事を見るということの大切さを表しているようにも感じる。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
《Deeper Reflections in Blue 》2023-2024
「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
《Deeper Reflections in Blue》2023-2024 同じ作品だが、光の当たり方により色調が変化する

真悟氏は13歳のときにアメリカへ渡り、その後2000年に日本に帰国した。気持ちを切り替えて、改めて「日本の美」というものを感覚として味わったという。アメリカにはない「空気を読む」「間」といった日本の文化的なものに触れ、それを描いてみたいと感じたそうだ。真悟氏は現在鎌倉とロサンゼルスを拠点として活動をしており、鎌倉には神社仏閣も多く日本文化に触れる機会に恵まれているという。そのような環境で制作された、新作《Deeper Reflections in Blue》は正方形のキャンバスに円が描かれているが、円というかたちは自然のものとして完成したかたちであり、例えば寺にある丸窓は仏教の世界では完璧、完全を示す。真悟氏も円には自然のパワーを強く感じるという。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
左《Flight to Midlight 》2023・右《Spiral Light》2023

アーティストトークの最後に、簡単な質問のコーナーがあったがそこで真悟氏は日本の禅の文化にも影響を受けていると思うし、アメリカのロックやジャズにも影響を受けていると話していた。ジャズはその場の即興性が強く、そのとき、その場所でしか生まれない音楽であるとも言える。真悟氏の作品も、自然光やその空間、さらには見るひとの心境などによって、そのとき、その場所でしか生まれない唯一無二の「体験」であるのかもしれない。

「フランシス真悟 ― 色と空間を冒険する」茅ヶ崎市美術館にて開催
展覧会が開催されている茅ヶ崎市美術館

この後も、アーティストトークが開催される予定で、ご都合の合う方はぜひ参加してみてほしい。そして、会期中何度でも足を運び、その瞬間毎に生まれる作品世界を冒険してみてほしいと思う。

名称 「フランシス真悟|Exploring Color and Space ― 色と空間を冒険する」
URL

https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/7778/

住所

神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45

TEL

0467-88-1177

営業時間 10:00-17:00(入館は16:30まで)
定休日 月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
料金

料金 一般800(700)円 大学生600(500)円 市内在住65歳以上400(300)円
※高校生以下、障がい者およびその介護者は無料
※( )内は20名以上の団体料金

会場

茅ヶ崎市美術館 エントランスホール、展示室1・2・3

期間

2024年3月30日(土)~6月9日(日)

公共交通

JR東海道本線・湘南新宿ライン「茅ヶ崎」駅・徒歩8分

駐車場

主催

公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団

協賛

MISA SHIN GALLERY、GALERIE PARIS、ホルベイン画材株式会社