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【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

イベント
2026.05.28

real local福井が新たに始めた企画「福井で仕事をつくる人たち」第3回目を開催しました。

企画趣旨はこうです↓


U・Iターンしてきた30歳前後が、福井の各地域で仕事をつくろうとしている。

福井で仕事をつくること。それは、ここで生きていくという意志の表れでもある。

誰かに頼まれたのか、自主的なのか。こりゃ一体何が起こっているのか?

「各地でぽこぽこと湧き始めた人たちのことを、もっと知りたい。個々の活動を、横につなぎたい」

そんな素朴な思いで始まった30歳前後の当事者による横つなぎリレートーク企画。

10代で東日本大震災、20代でパンデミックを経験した世代が、いま、地方でどう生きているのか。

泥臭さも、迷いも、前進する時の糧も赤裸々に、自分たちの言葉で語る仕事づくり実践のリアル。


※第2回目の記事はこちらからご覧いただけます。

 

 

第3回は2026年4月24日に開催。

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

 

 今回のゲストは福井で(はたまた福井に限らず全国で)劇作家・演出家・俳優として活動するカサマツさん。福井県出身のカサマツさんは大学在学中より芸人としての活動を始め、帰福後も独自に演劇・コントの制作を続けています。

「なぜカサマツは福井で演劇を続けているのか?」その謎に迫るストーリーを、なんと小学生時代まで遡ってお話ししてくれました。

 今回の記事では、聞き手の田上がその一部をお届けします。なお、この記事ではトークの一部を抜粋してご紹介しています。イベント全編は動画アーカイブでご覧いただけます。記事の最後にご案内がありますので、気になる方はぜひそちらもご覧ください。

【ゲスト】

カサマツさん|劇作家・演出家・俳優(演劇・コントユニット「タスサン」主宰/カサマツキカク代表)

1999年生まれ、福井県出身。日本大学芸術学部放送学科卒業。大学在学中より東京で芸人として活動し、卒業後に福井へ拠点を移す。2023年に演劇・コントユニット「タスサン」を結成。以降、倉庫や映画館、街中など既存の劇場空間に捉われない場所で、その場の空気や記憶を取り込んだ演劇・コント作品を発表している。2024年には福井の老舗映画館での公演を成功させ、200人規模の動員を記録。地域芸術祭への出展や長時間のパフォーマンス展示なども行う。2025年には新プロジェクト「WAKU」を始動し、短期間での継続的な作品発表を展開。2026年より個人企画「カサマツキカク」を立ち上げ、より実験的な創作を行っている。

 

【聞き手1】

田上 夏伊|建築士/うらのこうの代表/株式会社RIPEN所属

1996年福井生まれ。「うらのこうの」代表。2021年より南越前町地域おこし協力隊として活動。任期終了後は、株式会社RIPENに所属し建築・設計に携わっている。

【聞き手2】

川上 真理子|ライター/季節仕事人

1996年千葉県生まれ。学生時代のフィールドワークで訪れた池田町に一目惚れして2022年に移住。ライター業と池田町での季節仕事(しめ縄や山菜採りなど)を生業にしている。

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

 

 カサマツさんと私は最近出会ったばかりです。カサマツキカクによる最新演劇作「音とパラレルと夢と生活」の公演(2026年3月7、8日開催)を観に行きました。坂井市三国のある空き倉庫を演劇舞台として転用した挑戦的な公演でした。建築と地域に興味のある私は、会場情報を聞いた時点で興味をそそられていました。演劇に関しては門外漢なのもあり、大変失礼ながら演劇自体にはそれほど期待をせずに公演に臨みました。(そういえば、自分でチケットを購入して演劇を観にいくということ自体初めてでした)

 大きく期待を裏切りとても面白いものを見せていただけました。場面場面でクスッと笑えるし、断片的な不思議なシーンが最後にひとつのまとまりを見せて終わりを迎える。複雑なストーリー構成で脚本自体の面白さも感じました。
  その後ようやくカサマツさんのnote記事「演劇を辞めます」を読んだのですが、これがまた熱く鋭い批評を持った文章でした。(note記事リンク:https://note.com/kasama_2/n/na0ef38bf368f


 今回、カサマツさんにトークのバトンをお願いしたのは、そんな熱をもらって純粋にカサマツさんのことを知りたい、話を聞いてみたいと思ったからです。

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

(最新演劇作「音とパラレルと夢と生活」の会場である空き倉庫)

 

福井で育ち、東京で学び、福井で演劇をする

以下のチャプターで話をしてくれました。(各チャプターの内容の補足説明)

①体に流れているもの(=小学生から高校生までの出来事)

②ストイック東京(=東京での大学生、芸人としての出来事)

③福井で活動するということ(=帰福してからの出来事)

 

 カサマツさん自身もトークの冒頭で言われているので、恐れずに書きますが、カサマツさんの話には理解できなかったり、不思議だなと思う部分が多々ありました。でもなぜか聞き終わると共感できるような気もしていました。

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

カサマツさん:「いったん、僕の体に流れているものを皆さんにも流してもらい、僕と同じ感情になってもらいます。」

 

???、、、意図するところはわからないがとりあえず聞いてみよう。

 

カサマツさん:「出来るだけ線を結ばずに、複雑なまま聞いてください」

 

なるほど、理解できないことは理解できないままにでも受け止めるのが大切そうなのかな?

トーク冒頭すでにかなりユニークなカサマツ節が炸裂していました。

 

この後、過去を振り返り、その後のカサマツさんの活動の「核となる体験」が語られます。本当に理解や共感が及ばない話が多々あったのですが、なぜかずっと笑えて、楽しい時間だったなと振り返って改めて思います。

 

ここからはカサマツさんの話の中で特に印象的なエピソードや、言葉を一部抜粋します。

 

カサマツという身体性

「自分の世界を守るためにジャッジされている」

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

笠松:「高校2年の時に好きだった女の子がいて、器が広い女の子だった。その子が僕が教室で発狂しているのを見て笑っていた。そのマドンナ的存在の女の子が笑っていたから周りのみんなも笑いはじめた。」

 

「それから、毎休み時間僕が発狂するという発狂ゲームなるものが始まった。」

 

「クィやアァァアアアァ、と発狂しながら、本当にくだらないなと思っていた。誰が評価するかが大事で、なんでもいいんだな、、、」

 

「表現する人ってこういうことかと気づいた、発狂することでケンカを売っている」

 

「ユーモアを世の中に対する対抗として使えると思った。俺にとってこれかもしれない。笑いってこうやって自分のことを助けてくれるのか。」

 

 一連の発言を抜き出して書いてみましたが、伝わらなさそうですね。ぜひアーカイブ動画をご覧になって欲しいです笑

 諦めずになんとか言語化を試みます。うまく言葉にできないけど、このエピソードは私にはとても興味深く印象に残りました。

 

 高校のクラスの同級生が「自分の世界を守っている」状態に、ユーモアという武器を振り落とし、その状況を受け入れざるを得ない同級生を冷静に観察しているカサマツさん。

 

 この後のエピソードで出てくる真空ジェシカ川北さんのような芸人さんに対しても、私が共通して感じることなのですが、予想不可能でシュールなユーモアを持っている人は、奇想天外な思考回路を持ちつつも、裏に冷静な一面が垣間見えます。

 脳のあたりにあるコックピットに乗りながら、自分の行動や言動をコントロールして表現する感じです。もう一人の自分が少し後ろで自分のことを客観視しているとも言えるかもしれません。

 

「ずっと自分の人生を思いもよらぬ方向にねじっている」「自らが歪みとなり価値観を捻る」

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

カサマツさんからユーモアの仕組みの理論が説明されました。

ユーモアは想定されるものとは違う思わぬズレが面白さを生んでいるそうです。

 

カサマツさん:「僕自身が捻り続けること、自分で自分をいじめることで、思いもよらぬところに自分を連れて行ってもらう。そのことを歪みと呼んでいる。」

 

 ユーモアのズレの構造に重ねて、カサマツさん自身の人生や表現手法も重なっているのだなとすごく腑に落ちた言葉でした。社会に対する決まりきった固定観念や決まりきった理想像に対する怒りから、カサマツさんの表現欲が生まれていて、表現によってカサマツさんはまだ見ぬ豊かさを求めて人生をかけた実験を行っています。

 

 この記事内では触れられませんでしたが、トークでは核となる体験が生々しく語られています。生々しい話ですが、カサマツさんのユーモアある話でとても笑える内容になっています。会場で聞いていても思いましたが、文章で読むより、動画で見る方が絶対面白いと思います。ぜひアーカイブのご購入をお勧めします!

 

トーク全編のご購入方法について

全編は下記URLからご購入いただけます。ぜひご覧ください!
https://hororijapan.base.shop/

 

今回ゲストと聞き手の感想

カサマツ(ゲスト)

 これまで行って来たイベントや公演の後にはいつも大きな虚無感を抱き、その虚無感は次のイベントや公演の準備によって消滅し、終わればまた虚無感に襲われる。時間をかければかけるほど返ってくるものの少なさに絶望してやりがいを失いかけたりする。しかし反対にこの上ない幸福感に包まれたりもするから何度辞めようとしても辞められないのだろう。結果、活動を始めてから立ち止まらずに三年間走り続けて来てしまったわけだが、今回トークの機会を頂いたことで「自分がどこから来て、これからどこへ向かうのか」を深く考え、整理することが出来た。聞き手のお二人は僕が考えたぐちゃぐちゃの言葉を首を傾げながらも茶化さずに聞いてくれて、だからこそ信頼してぐちゃぐちゃをぐちゃぐちゃのまま届けられたんだと思う。ありがとう。僕だけが抱えていると思っていた虚無感をきっと二人は知っている。優しい相槌を受けながらそう思いました。隣にそう思える人がいる事は心強いし、寂しくない。安心して喧嘩腰でいられる。これからもどうぞよろしくお願いします。

 

田上夏伊(聞き手1)

 カサマツさんの「出来るだけ線を結ばずに、複雑なまま聞いてください」という言葉通り、脳をフル回転させながら、不思議で愛おしいカサマツ節に浸った贅沢な時間でした。これまで彼が抱えてきたであろう孤独や、虚無感は、福井で自ら仕事をつくろうともがく私たちにとっても決して他人事ではありません。だからこそ、彼が「茶化さずに聞いてくれて、信頼してぐちゃぐちゃのまま届けられた」と振り返ってくれたことが本当に嬉しかったです。お互いの弱い部分や迷いも開いた上で、安心して「喧嘩腰」で社会に向き合える仲間が地域にいることは、とても頼もしいことだと思います。

 

川上真理子(聞き手2)

 わからない。わからなすぎる、共感ポイントが探せない。いじめで長靴いっぱい雪が入ってて大爆笑した話、唐突に東京へ飛び出した話、売れっ子になる手前で福井に戻ってきた話。終始、一抹の不安と未知のワクワクに貫かれたトーク、前代未聞すぎる。それが率直な感想です。さらに、トーク終了後に友達が真顔で言った「予想以上に本当に変な人やった」という言葉も笑いを誘うわけです。でも、唯一わかったことがあるとするなら「カサマツさんは、本当に予想もできない、わからない方向へねじって、未来を選び取りたいんだ」ということかもしれません。こんなおっかなびっくりで真剣な奴が、福井にいてくれて、肩を組もうとしてくれて、有難い。そして何よりカサマツさんが言っていた「高校生の僕は、まだ僕の演劇に来てないと思うんっすよ」のひとことは、私たちの大きな夢であり、大きな課題だなと切実に思いました。高校生のカサマツと、出会えるような「動き」にするぞ。

 

次回のお知らせ

トークシリーズ「福井で仕事をつくる人たち」は、第4回を開催予定です!
今回ゲストが気になる次のゲストを呼び、今回ゲストが聞き手にまわる形でバトンを繋いでいきます。

第4回目は、2026年5月29日(金)19:00-21:00。ゲストはむらかみ道具店の村上捺香さん。

トークイベントのお知らせはこちらのインスタグラムで発信して参りますので、どうかよろしくお願いします!

【イベント報告】演劇×地域 自らが歪みとなり価値観を捻る 福井で仕事をつくる人たちvol.3 ゲスト:カサマツさん

(文:田上夏伊、編集:川上真理子)