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【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽13

地域の連載

2022.01.29

「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のある南米のアーティストとそのアルバムを紹介しています。

ピエール・アデルニ(シンガー・ソングライター)が山形を訪れたのは2010年のこと。当時のパートナーであった女性歌手アレクシア・ボンテンポとのユニット「ドーシス・カリオカス」としての公演でした。

【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽13

ピエールはポルトガル人の父とブラジル人の母のもとフランスで生まれ、幼少期にブラジルに移住。思春期をブラジリアで過ごし、音楽活動をスタート。その後、リオ・デ・ジャネイロに活動拠点を移しました。潮風の香りがするフォーキーな音楽性と、ブラジルの美しい自然や人々の日常、恋愛を題材にした詩作によって、シンガー・ソングライターとして独自の地位を確立。ブラジルのジャック・ジョンソン、と言われていたこともあります。現在はポルトガルのリスボンを拠点に活動しています。

山形公演が決定してから彼は、ネットで見た山形の1枚の写真(夕日に染まる銀山温泉の写真でした)にイメージを膨らませ、後に2011年のアルバム「アグア・ドーシ」に収録される「yamagata」という曲を書いてくれました。以下から試聴してみてください。

試聴リンク:
https://music.apple.com/jp/album/yamagata/1542754862?i=1542755445&l=en

歌詞はこういう内容です。
———–
yamagata
ヤマガタ/山形  

acordei sozinho ds duas da manhã
assustado, chorando  
abri a janela e vi uma cerejeira 
de vestido rosa florando 
夜中の2時に独りぼっちで目が覚めた
夢の中で泣いていて飛び起きた
窓を開けて桜の木を見た
ピンク色に咲いた花のドレスを着ている

nas maçãs do rosto 
meu riacho tinha gosto de você 
sem conseguir dormir 
eu pedi pro tempo amanhecer 
僕の頬に流れた小川は
君の味がした
寝付けなかった
朝が来るように時に祈った

acordei sozinho em Yamagata 
jurei te ouvir cantando 
juntei folhas brancas 
fiz um chá para acalmar 
seguir sonhando
夜中に山形で独りぼっちで目が覚めた
君の歌声を聴くと誓った
眠りを誘うお茶を入れた
落ち着いて夢を見られるように

olhei para as paredes 
abri um saquê pra relaxar 
me abracei no seu quimono 
pra seda e pro sono me levar 
部屋を見回して
リラックスするために日本酒を開けた
君に買った着物を抱きしめた
絹の肌触り、眠りに誘われますように…

[対訳:荒井めぐみさん, アルバム「アグア・ドーシ」のライナーより]
———–

ピエールは来日時にこんなことを言っていました。「カエターノ・ヴェローゾやシコ・ブアルキと違って、僕の詩はより直感的なんだ」と。この詩もいかにもピエールらしい、感覚的で映像的で、センチメンタルな詩と曲です。ちなみに歌詞に「日本酒」がでてきますが、ピエールは山形ではいっときたりとも日本酒を手放しませんでした。

そういえば大人の事情でクレジットはされていませんが、ユニクロの2010年冬のCMソングにも起用されているのですよ。

今回紹介するのは2012年の「Bem Me Quer Mar Me Quer: 君は僕を愛してる、海が僕を求めてる」というアルバムで、私がライナーノーツを担当した数少ないアルバムの一つです。

【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽13

本作はポルトガルのリスボンとポルトで録音され、参加しているのもポルトガルのアーティストが主体です。そこに同じポルトガル語圏のカーボ・ヴェルデやブラジルのアーティストが混在しています。すなわち本作はピエールを主体に、ポルトガル語圏のアーティストが結集した作品です。言葉を大事にする彼故に、共通の言語を持った国同士の音楽的コラボレーションは、極めて自然な方向性に思われます。多才なアーティスト達の個性を、囁く様な暖かい歌声で、ピエール・アデルニの作品としてまとめ上げた本作は、彼のキャリア中でも最高の成果ではないでしょうか。穏やかな休日に、暖かい部屋で聴いていただきたいアルバムです。

(試聴リンク)