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【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.7

連載

2023.08.31

山形市長町にある〈エンドー〉は、地域密着型のスーパーである。創業は昭和40年。以来、地元の人々に親しまれ続け、日々、さまざまな顔が集う。そこにある時間と、ここにしかない風景。今日のエンドーでは、どんなことに出会えるだろうか。

【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.7
〈千歳小マーチングバンド〉によるパフォーマンス。千歳小学校はエンドー店主・遠藤英則さんの母校であり、マーチングバンド部のOBでもあるという。店内と駐車場がお祭り会場になっている。

「エンドー昼市」だョ! 全員集合
私たちによる、私たちのための夏祭り。

2023年8月20日。前日までの不安定な天気が嘘のように晴れたこの日、「エンドー昼市」が開催された。マルシェでもなければ野外フェスでもない、すなわち祭りである。

夏祭りは各地で行われているものの、地域のスーパーが主催というのはあまり聞いたことがない。当日はエンドーの店舗はもちろん、その周辺に広がっているJR羽前千歳駅付近一帯に祭りのムードが漂っていた。盆踊りにJAZZバンドのライブ。地元小学校のマーチングバンド部による演奏。金魚すくいに射的、当てくじ、すいか割り。充実のフード&ドリンク。洋服店ブースにDJブース。この、ちょっとカオスな感じ。子どもも大人もみんなが楽しめる“やさしいカオス”は、エンドーの得意分野でもある。

懐かしさと新しさが融合した夏祭り、「エンドー昼市」は、今回で3回目を迎える。当日の様子を写真とともに振り返りながら、祭りを楽しむ人や祭りをつくる人たちを通じて、日本の祭りの魅力と原風景を感じていただけたら。

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右のブースから、夏のあいだはかき氷も人気の〈餅の星野屋〉。ふわふわの冷たいかき氷を求める人で行列が絶えない。隣はエンドーのじいちゃん手づくりの漬物やカットフルーツ。左はニューヨークスタイルピザの専門店〈HAVE A GOOD SLICE〉。ライヴ中のMCでJAZZシンガーのヒラリーさんも「ここのPIZZAは本当に最高!」と絶賛。
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右上_生ビールからアイスコーヒーまで、ドリンクの品揃えが豊富な〈BOTA coffee〉。マイクを持っているのは、出店者をインタビューしながら会場を回るMCの逸見さん。右下_〈餅の星野屋〉のかき氷「梅」。左下_〈tatazumaiizumai〉はオリジナル帽子を限定販売。洋服店も参加する地元の夏祭り。左上_〈りば亭〉の本日の多国籍丼は「アチョーテポークのメキシコ丼」。
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宮城県からは〈仙台雀踊壹番組〉の「仙台すずめ踊り」。隣県ながら実際に見るのは初めてという人も少なくないはず。小気味良いテンポのお囃子と扇子を使った踊りが華やかで躍動感がある。その後は「花笠音頭」。唄の途中、観客席からの「チョイチョイ」といった合いの手も完璧。
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「そこの出目金とって!」「(ポイが破れても)まだいけるぞ!」。最近の祭りではあまり見かけなくなった金魚すくいは、初めてだという子どもたちも多数。金魚袋を手にぶら下げて帰るのがうれしかった幼少期の記憶が蘇る。
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いつもは商品が並ぶ陳列棚を使った射的コーナー。的がなんとも絶妙なバランス。豪華景品とあって真剣に狙いを定める。当たったら「お〜!」、当たらなくても「あ〜!」とみんなで拍手。
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JAZZバンド〈Ratbags〉によるライヴ。太陽の下で浴びる音楽は最高。奥山ヒラリーさん(Vo)、奥山浩己さん(P)、青木さん(B)、行方さん(Ds)。ヒラリーさんの歌声が響くと、皆が一斉にステージを見つめる。ここまで本格的なライヴが、街のスーパーの駐車場という限りなくひらかれた場で行われているのだ。
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〈千歳小マーチングバンド〉の堂々とした演奏に胸熱。感動。暑い中での素晴らしいパフォーマンスに大きな拍手を。大人たちと肩を並べて出演しているにもかかわらず、一人ひとり楽しみながら楽器を奏でているのが伝わってきた。

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祭りとは、みんなで作り上げるもの。右上_ステージでライヴが行われているあいだも、エンドー店内では「げそ天」や冷蕎麦などの注文で厨房は大忙し。左上_せっせと焼いてくださっているのは、おいしい焼き鳥。右下_何が出るかな?の「当てくじ」。左下_昼市の会場を盛り上げるDJ&MCチームのみなさん。
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元気に「ジャンケンポン!」。すいか割りの順番を決める。するとBGMが『となりトトロ』に変わった。「トットロ、トット〜ロ♪」の1フレーズで心が一気に浄化。
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「もっと右〜!あとちょっと左!」。親御さんの必死な声の誘導によって、子どもたちがんばる!すいか割りって、こんなに盛り上がるイベントだったのか。子どもを真ん中にしながらも、実は大人の方が楽しんでいたかもしれない。
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右上_続・祭りとは、みんなで作り上げるもの。厨房で作業する店主の妻・えりさん。右下_エンドー店主も通う、ご近所〈フォーチュン〉のグリーンカレー。左下_エンドーが初めての人もそうでない人も。おいしいお酒と食べものと、いい音楽で、いい時間。左上_岩牡蠣(庄内産)や馬刺し(白鷹産)を祭りで味わえるなんて贅沢。人気の筋子おにぎりは「すじこ爆弾」にパワーアップ。
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〈HOCCA WINERY〉はシードル(sweet /dry)をメインに日本酒も。隣が同じく鶴岡の〈りば亭〉で、スパイスの効いた料理と冷えたお酒との相性といったら。県内の人気店が集まったフード&ドリンクブースも注目。

祭りとは、みんなで作り上げるもの。楽しんでいる人。場を盛り上げる人。汗を流している人、見守っている人。祭りとは、どういうものなのか。それが私たちにとってなぜ必要なのか。エンドーの「昼市」は、同時にそんなことを確認し合う場でもあったように思う。
肩車された小さな子どもや浴衣姿の人たちを見られるのも祭りだし、日焼けとお酒で赤黒くなった強面のおじちゃんたちを見ることができるのも祭りだ。太鼓の音が腹に響けば体が熱くなるし、イントロが流れれば自然と手拍子が始まり、気づけば合いの手を入れてしまう。盆踊りは日本人にとって世代を超えたアンセムである。小難しくないゆるい一体感こそが、祭りの醍醐味。

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「すずめ踊り」を披露してくれた〈仙台雀踊壹番組〉のみなさんは、今回で3度目の出演。やっぱり盆踊りは日本の夏祭りに欠かせない。
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オリジナルキャラクター「筋子」の手ぬぐいを被った、浴衣姿のおさげの女の子。エンドーでリアル「筋子」ちゃんに会えるなんて?!  来年はもう一人のキャラクター、「げそ男」にも会えるだろうか。

「エンドー昼市」は、朝10時から夕方の4時まで行われた。前日からの会場設営や仕込みなどの準備を経て、当日の開催時間を迎えるころには、みなさんTシャツの色が変わるぐらい汗だくだった。今回、店主の遠藤さんがあまり写真で登場していないのは、そのぐらい常に会場内を駆け回っていたということ。エンドースタッフのみなさん、出店者や出演者、DJ陣のみなさん、デザイン事務所〈杉の下意匠室〉のみなさん、おつかれさまでした。出し物の準備や誘導係、駐車場の交通整理など、地元の学生を中心としたアルバイトスタッフのみなさんも大活躍。おつかれさまでした。ありがとうございます。祭りって、やっぱりいいなあ。

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写真提供:エンドー
DATA
エンドー
住所 山形県山形市長町2-1-33
電話番号 023-681-7711
営業時間 10:00-19:00(日・月曜休)
https://gesoten.jp/

写真:伊藤美香子
文:井上春香