三崎のマグロを世界へ・未来へ!「三崎恵水産」を取材しました
冬のある日の朝、三浦市の最南端である三崎町城ヶ島へと向かいました。車を降りるとそこに広がるのはずっと遠くまで広がる海の青さと対岸のにぎやかさ、そして美しい富士山。そんな素晴らしい環境で働く「三崎恵水産」のみなさんの姿は朝日にまぶしく照らされます。今回は、三崎港城ヶ島のマグロ問屋「三崎恵水産」にお話を伺いました。


まず出迎えてくれたのは広報や工場直営のフィッシュ&チップススタンドの運営などを担当している現社長の奥様。冷凍されたマグロを加工する工場内を案内してくれました。1本のマグロを電ノコで4つ割りにし、マグロの皮の部分を削りとり、さらにオーダーのある部位ごとに切り分ける作業を行っていきます。経験を必要とする作業ですが、若いスタッフの方も多く手際の良さに目を奪われます。


加工する際に出る小さなマグロの切り落とし等は、その後また加工され2024年からはじまったオリジナルブランドのペットフードなどにも活用されるそう。廃棄を極力抑え、新しい形で活用しつくすというのも問屋ならではのアイデアだなと感じました。
そしてその後は、マグロが眠る巨大な冷凍庫を見学。「三崎恵水産」の冷凍庫はマイナス20度とマイナス50度の二段階となっていて、マイナス50度の世界は圧巻でした。横たわる巨大なマグロたち。マグロはマイナス50度で管理することで、漁獲したての鮮度を保てるそうです。また、この冷凍庫を常時稼働させるには大量の電気が必要ですが、「三崎恵水産」では、社屋の屋根の上のソーラーパネルと自然エネルギーで発電された電力を活用して、エコでクリーンなエネルギーで事業活動を行う努力をしています。

工場を見学した後は、現在の社長である石橋匡光さんにお話を伺いました。
石橋さんは二代目として2020年に社長に就任。大学は理工学部、アメリカへ留学しその後は帰国して広告代理店へ就職し飲食業界も経験したという水産業者の社長としては異色の経歴の持ち主です。

「先代の父が始めた家業で、僕が継ぐと最初から決めていたら、こういう経歴ではなかったと思います。結果として広告業界や飲食業界にいたことや、アメリカでの経験がいまの社長業に生きていて、これから50年先にも三崎のマグロを日本中、世界中に広めていくことが自分の使命と感じながら、現場主義で日々仕事をしています」と石橋さん。
三崎のマグロを守り、広めるために石橋さんが取り組んでいることは、大きく3つあります。
1つ目は、サステナブルであること。マグロは自然界の生き物のため、自然環境を良くしていかないと商売を続けていくことができません。そのため、取り組んでいることとして、先述のクリーンなエネルギーの活用、廃棄をなくすことや、環境に優しい梱包材を選ぶことや細かなところではオフィスの節電の徹底など。社員が一丸となって環境を守ることに取り組んでいることが、見学の中でも分かりました。
他にも、これまでは美味しく食べることが難しかったマグロの血合の部分(三崎では「茜身」と呼んでいます)を使って多角的な商品開発を行うなど、これまでの常識にとらわれないチャレンジで持続可能な資源の循環やフードロスの削減に取り組んでいます。
マグロは一時期個体数が減少し危機的状況であると言われていましたが、クジラと同じくマグロは海の食物連鎖の中では上位であり、少し力を入れて守ることで、個体数は回復していると言います。WWFも大西洋クロマグロは2022年に安全水準まで回復したと発表しています。
ただし、これからもマグロを守っていくためには乱獲せず、自然環境を守り続けることが不可欠。そのためにできることをコツコツと行っています。

2つ目は、働いてくれるスタッフを守り、育てること。いまはどこも人手不足が叫ばれる時代ですが、水産業も同じです。水産業者はイメージで怖い、匂いがきつい、体力仕事などと言われてしまう業界なのかもしれませんが、「三崎恵水産」では、例えばペットフードのパッケージデザインや広告物をおしゃれに企画するなどして、ブランド力を高めています。そうして若い世代にも親しみやすい商品を作ることが、業界全体のイメージアップや、雇用にも繋がると考えています。
また、二代目として社長に就任する際に徹底したことが、「現場に任せる」ということ。社長が全てを決定するのではなく、ベテランのスタッフやその分野の専門家に決定を委ねることで、みんなが安心して働ける環境を整えている最中だと言います。
「とはいえ、最初はみんな戸惑ったと思います。でも、おやっさん!って感じで現場で頼りになるベテランさんもいるから。そういう人たちにしっかりと任せて、僕は僕の得意な分野を会社の中で担っていけばいいと。そう考えています。例えばですが、昨年オープンした直営の居酒屋のメニューを僕が知ったのはオープンの2日前とか。それくらい、現場に安心して任せています」と、石橋さんは笑います。

この場所は三浦市の最南端の島で、自然以外は本当になにもない!と石橋さん。でも、自分の故郷に、移住をしてくる人たちへ働く場を提供できればと試行錯誤しています。「例えば、副業みたいな形で、プロのデザイナーが社外から入ってきてくれる。小さな子供がいるお母さんが週に2日でもリモートで経理を担当してくれる。そんな働き方を提供することで、移住したくても働く場所がない、と諦めている人たちに安心感を提供したい。それがこの町のためになるなら尚更」と、移住希望者に向けた発信にも力を入れていきたいそうです。

3つ目は三崎のマグロを日本中、世界中へ届け続けるということ。目先のお客様だけでなく、50年後の世代の方にもマグロを食べてもらえるように、今できる最大限の努力を惜しみません。
日本国内では水産物の消費量は減っていますが、海外では増えていると言います。また、刺身(生)で魚を食べる文化もサーモンが海外の方に浸透し、マグロもそれに続いているといいます。「僕たちとしては、缶詰になるマグロはツナ、刺身で食べるマグロはマグロと呼んで差別化を図っているところです」と話してくれました。
また、世界を相手にマグロを売るときには、石橋さんの経験が生きたと言います。
「アメリカに留学していたことがあり、英語ができるんです。水産業者で英語も話せるというのは少し珍しいかもしれず。そのスキルがあったからコロナ禍でも生き残ってこれたと実感しています。これからは、日本国内もそうですが、世界にもっとマグロを広めたい。また、人材として水産業に新しい風を入れてくれる若い人、世界に通用するスキルを持った人が入ってきてくれると業界としても、もっとよくなると考えています」と。

日本人、地域の若い世代にもっとマグロや水産業の知識を広めようと「三崎恵水産」では、地元の小学校などの会社・工場見学も積極的に受け入れています。小学生たちを相手に40分ほど、毎回社長自らが熱弁を振るうと言います。若い世代にマグロの経済学「マグロ(マクロをもじって)経済学」を教えています。と石橋さん。
世界が相手でも日本円で取引ができる商品であるマグロ。マグロは日本の文化として守っていくべき存在です。その価値をもっと確かなものに。そして、未来にマグロを繋げるために。石橋さんのアイデアとそれを実現させるパッションが、城ヶ島から世界中へと広がっています。

| 名称 | 三崎恵水産 |
|---|---|
| 業種 | 水産業・マグロ問屋 |
| URL | |
| 住所 | 神奈川県三浦市三崎町城ケ島658-142 |
| TEL | 046-881-7286 |














