【名古屋市中区・東区】東桜エリアマネジメント協議会が紡ぐ「終わりのない」まちづくり
東桜(ひがしさくら)エリアは、愛知県名古屋市東区にあり、栄エリアの北東側に位置する地域です。繁華街に近いながらも落ち着いた雰囲気があり、大きなビルや公園がある一方で、チェーン店ではない知る人ぞ知る店が点在する、名古屋駅や金山駅とは異なる表情を持つエリアです。
今回は、このエリアの価値を高めようと活動する東桜エリアマネジメント協議会の事務局 山口さん、平尾さん、別所さんにその活動について伺いました。

※エリアマネジメントとは?
地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組みのことをいいます。
東桜エリアマネジメント協議会とは?
東桜エリアマネジメント協議会は2024年11月に設立されました。その背景には、名古屋駅や栄周辺で加速する大規模開発への危機感がありました。
昔からの家々は駐車場やマンション、大きなビルへと変わり、街の特徴が見えなくなるのではというものでした。
大きな特徴は、その「共創体制」にあります。NTTアーバンソリューションズを代表に、中部電力、東海テレビ放送といったインフラ・メディア企業、さらには大林組、鹿島建設といったスーパーゼネコンまで11社が参画しています。
ここに東桜学区区政協力委員長をはじめとする住民代表、そして名古屋工業大学の伊藤孝紀准教授らが、企業と同格のパートナーとして名を連ねています。
デベロッパーの「開発視点」と、メディアの「発信力」、そして住民の「生活実感」が同じテーブルで融合し、東桜一丁目エリアを住宅エリアとしただけではなく、ビジネス拠点、観光拠点として価値を上げていく活動を行っています。
活動エリア。北は桜通沿いから南は広小路通沿いまで、東は空港線沿いから西は久屋大通沿いまで
東桜エリアマネジメント構成員
(法人会員:11社)
・NTTアーバンソリューションズ株式会社(代表)
・中部電力株式会社(副代表)
・東海テレビ放送株式会社(会計監事)
・愛知県文化振興事業団
・NTT都市開発株式会社
・株式会社大林組
・鹿島建設株式会社
・株式会社コミュニティネットワークセンター
・株式会社ザ・ソーシャル
・トヨタホーム株式会社
・株式会社FabCafe Nagoya
(個人会員:4名)
・東桜学区区政協力委員長 その他3名
(オブザーバー)
・名古屋市住宅都市局
・名古屋工業大学伊藤孝紀研究室
・伊藤孝紀(名古屋工業大学 准教授)
(事務局)
・NTTアーバンソリューションズ株式会社
・名古屋工業大学 伊藤孝紀研究室

ビジョンを「社会実験」で研磨する
協議会は「感性豊かな時間を堪能できるまち」というビジョンを掲げています。
彼らは「東桜エリアマネジメント構想」という将来図を、現場での「社会実験」を通じて絶えずアップデートし続けています。ビジョンを提示し、現場で人々の反応を試し、そのフィードバックで構想を磨き上げるというプロセスを繰り返しています。
公共空間を使った社会実験(実証実験)
・2024年11月「AFTER HOURS」
栄公園で実施。多くの方がその存在自体は知っているものの、意外に利用されていない公園ということが判明し、どう過ごすことができるのかを模索しました。
社会実験の前に、勉強会メンバーで集まり現状の栄公園で思い思いの過ごし方を検証。キャンプ用チェアやカードゲーム、ランタンなど多様なグッズが集まり、普段とは異なる栄公園
を体験することができました。
本番では、焚き火やキッチンカー、アコースティックライブなどの取り組みを実施しました。
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・2025年11月「HIGASHI SAKURA BLOOMING ~まちづくりフェス~」
テーマは、アート×アーバンファーミング(都市農業)。文化・芸術というこのエリアの"らしさ"を感じてもらうこと、地域のコミュニティ形成を目的とした「アーバンファーミング」のキックオフの要素を盛り込みました。
栄公園: 普段は利用が少ない公園を活かし、子ども向けの昔遊び(けん玉やこま)や絵本のワークショップを実施しました。
Blossa(サンクンガーデン): 愛知県芸術劇場と連携し、立ち見が出るほどの盛況となったプロのオペラコンサートを開催しました。
SLOW ART CENTER NAGOYA: ビル屋上で育てた野菜(アーバンファーミング)を起点とした、都市農業を通じたコミュニティ形成に関するトークイベントを行いました。
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・2026年2月~3月「HIGASHI SAKURA BLOOMING ~モビリティ&パーク~」
久屋大通公園「希望の広場」にて、名古屋市の新たな路面公共交通システム「SRT」(2026年2月13日運行開始)と連携した社会実験を実施しました。シェアサイクルポートの設置や、東桜エリアを巡る謎解きラリーなどを通じて、SRT降車後の街への回遊性向上を検証しています。
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都市の「スポンジ化」との戦い
2022年の勉強会発足から協議会設立に至る道程は、理想と現実が衝突する連続でした。特に注視すべきは、飯田街道沿いなどで見られる「駐車場の増加」という都市のスポンジ化(空洞化)問題です。
地権者にとって、土地を駐車場やマンションにすることは、最も合理的で手っ取り早い収益化手段です。しかしながら、まちにとってそれは景観の同質化に繋がり、特徴や魅力を削ぎ落とす「緩やかな衰退」を意味します。
まちに魅力がなくなり、人がいなくなれば駐車場すら必要ではなくなります。
仮に、オフィスビルが頑張って、魅力的なコンテンツを打ち出したとしても、東桜という地域の単位でブランディングしていかないと最終的にビル自体の価値が落ちてしまいます。この「個人や企業の経済合理性」と「地域の長期的な資産価値向上」という対立構造をどう調整するか。ここにエリアマネジメントの難しさがあります。
20年後の未来から逆算する
2025年3月に策定された「東桜エリアマネジメント構想Ver.2」は、2045年の社会から逆算したバックキャスティング・モデルです。
「20年前にはiPhoneもSNSも存在しなかった」という比喩が示す通り、予測不可能な未来をあえて具体的に描くことで、ステークホルダーへ強力な意志を表明しています。
今後、
飯田街道: 江戸時代のルーツを持つ「への字型」の特異な通りです。ここに飲食店が染み出し、歩行者が主役となる賑わいを創出します。
栄公園・東栄通り: 「人の目」を意識した施設整備により、多世代が安心して憩える空間へと再生します。
錦通: 音楽やアートのコンテンツを常設化し、単なる移動空間を「文化の回廊」へと変えていきます。
久屋大通: 2026年2月の社会実験では、新たな停留所周辺での回遊動線を検証します。滞留から街への誘引を、技術・人流検証の両面から強化する予定です。
不確実な未来に対して具体的なロードマップを掲げることは、一つの「賭け」でもあります。しかし、その強い意志があるからこそ、行政の協力や地域のキーマンの共感を引き寄せることができます。ビジョンは未来を当てるための予言ではなく、現在を動かすためのツールなのです。


街を耕す
「まちづくりに終わりはない」
この言葉は、インタビュー中に、皆さんからよく出てきた言葉です。都市を完成された「製品」ではなく、常に成長し続ける「有機体」と捉える視座から生まれます。
東桜モデルの優位性は、大企業の資本力と、地域住民の「顔の見える関係性」。これらが対立することなく補完し合っている点にあります。その核にあるのは、「決まる前にまずヒアリング」というプロセスの徹底です。聞くのは、住民や地権者。
効率を優先する現代社会において、この対話は極めて非効率に見えるかもしれません。しかし、この丁寧なプロセスこそが、住民にとっての「他人事」を「自分事」へと昇華させることに繋がります。
これからのまちづくりは、行政やデベロッパーからパッケージとして「与えられるもの」ではありません。そこに生き、働く人々が日々土を耕し、種をまき続ける「耕作」のプロセスそのものだと感じました。
私自身、自分の住まいに対する欲求はたくさんあるのですが、まちに対する思いを考えたこともありませんでした。
まちを利用したり、遊んでいないからかもしれません。
アーバンファーミングにはとても興味があるので、次の機会に参加してみようと思っています。















