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自分たちのまちの風景をつくる街路樹再生プロジェクト

インタビュー

2021.01.19

緑豊かな美しい景観に欠かすことのできない街路樹は、交通や通信などと並ぶ重要な公共インフラですが、数十年前に植えられたものが老木になり、やがて暮らしの安全を脅かし、環境にも負荷を与えてしまう厄介な存在になるとしたら…。名古屋市内でもいち早く、街路樹再生に取り組む「港区まちづくり協議会」にお話を伺ってきました。
自分たちのまちの風景をつくる街路樹再生プロジェクト

はじめに
名古屋市でも重要な課題のひとつに挙げられている街路樹再生。港区の西築地学区を拠点とする「港まちづくり協議会」では、まちを南北に貫く江川線(地下鉄築地口駅から名古屋港水族館のある名古屋ガーデンふ港までの約1kmの間)沿いに植えられた200本以上の街路樹の間伐や植え替えをし、その後の舗道空間の活用やまちのあり方を地元の人たちと一緒に考え実行する「江川線街路樹再生ワークショップ」を企画。自発的な活動としていち早くこの課題の解決に取り組んでいます。その概要と背景をお聞きするため、主催の港まちづくり協議会を訪ねました。

自分たちのまちの風景をつくる街路樹再生プロジェクト
港まちを南北に貫く「江川線」。南端の名古屋港ガーデンふ頭には名古屋港水族館や南極観測船ふじなどがある。
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港区西築地学区のまちづくりを担う港まちづくり協議会の拠点「港まちポットラックビル」

 

「街路樹再生に取り掛かったきっかけの前に、港まちづくり協議会はちょっと特殊な仕組みで運営されているので、まずその成り立ちからお話ししますね。」

インタビューの冒頭、そう切り出した、まちづくり協議会事務局(以降、まち協)の古橋敬一さん。

「ここは100%行政からの補助金で行われているまちづくり事業で、逆に言うと、自分たちではお金を生み出せません。今から15年ほど前、学区にボートピア(場外舟券売り場)を誘致し、まちの中で賛成派と反対派の対立が起こりました。結果、ボートピアの売上金の1%を活用してまちづくりを行う仕組みを活かし、まちづくりを進めたい賛成派の意見が通り、それを推進する組織として港まちづくり協議会が設立されました。しかし、一つの学区を中心とした限定的なエリア、しかも公共サービスとしての事業にはさまざまな制約もあります。まちの中には対立の余韻が残り、出来たばかりの仕組みや組織も、まだまだ磐石とは言えず困難な船出でした。」

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古橋敬一さん。西築地エリアのまちづくりのために組織された港まちづくり協議会、通称「まち協」で2008年から事務局次長として、陰になり日向になりさまざまな活動の現場を支え続けてきた港まちのキーパーソン。

 

解決できる課題が見つからない、そこに生まれたまちづくり協議会の使命とは?
「僕が事務局へ来たのがちょうどそんな時期でした。ところが、この仕組みを使ってまちの人が解決できるような課題が見当たらなかった。少子高齢化や商業衰退化、一般的な社会的課題はありましたが、まちづくりって、そこに暮らす人たちが取り組める適切な課題みたいなものがないと始まらないんです。もちろん僕も未熟者でそれを見つけられなかったというのもありますが、はたと困り果ててしまって(笑)。仕組みも潤沢な資金もあるけれどまちに中長期的かつ具体的なビジョンがない。そこが一番の問題だと考えるようになりました。」

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スタートから3年が経過した頃、まちのビジョンをつくる要請があり、その際に注目されたのが、デザイナーとの出会いを機に誕生した「み(ん)なとまち」というキャッチコピー。語呂の良さとかわいいデザインが好評。

 

まちづくりのコンセプトを示すキャッチコピーが誕生。まちの未来像を描くきっかけに
「〝みんな〟と〝みなと〟をかけた言葉遊びのような発想でしたが、かわいくて、いい意味で力が入っていない(笑)。ビジョン策定を進める中で、まずこのコピーの定義化を図ることに。改めてまちの成り立ちを振り返ると、ここは海を埋め立てて生まれた港まちだという歴史を再認識したんです。全国からたくさんの労働者が集まる人足寄場があり、外国人船員もたくさんやってきた。そんな人々のニーズを満たそうと多様な商店が開かれ、まちは華やかなにぎわいを誇った。そこに「みんなの港まち」の原風景がありました。まちのアイデンティティというのでしょうか。このまち〝らしさ〟のようなものがあるなぁと。
そういう〝みんなの港まち〟を現代に復活させようとするとどんなカタチになるのか?そんな問いから、名古屋中に、そして全国に誇れる『み(ん)なとまち』を目指すというコンセプトが見えてきたんです。コンセプトが定まると、自然にビジョンも見えてきました。」

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まち協にあるTOWN MAP。地図には、まち協が取り組む事業が書き込まれています。アートや音楽といったクリエイティブな要素も加わり、活動は年々幅を広げますます多彩に活発に。

以降、まちづくり事業に丁寧に取り組む姿勢や、まちの中で日々起こる出来事ひとつひとつに対する真心を込めたコミュニケーションなど、真摯な姿を通してまち協の存在は確実に港まちの人たちの中に認められるようになっていきました。

※まち協の事業例

「僕らのことを応援してくださる人もいれば、厳しいご意見をいただく場合もまだまだあります。でも、そんな時こそがチャンス。この仕組みは期間限定ですし、出来る限りのことはやっておきたい。僕個人としてはこのまちに育ててもらった恩返しをさせていただきたいとの想いもあります。」
ボートピアの売り上げは今後もずっと保証されるものではなく、現に年々減少し、今では半分ほどに。今後は何を優先するかをより真剣に考え、吟味しなければいけない時期に入ってきたと感じている古橋さん。高齢になったまち協の会長たちとも話し合いを重ね、聞こえてきたのが〝街路樹問題とその後のまちの姿を自分たちで考えたい〟という声でした。

 

切実な気持ちに、まち協が今こそ目に見える形で応えたい
老いた木は二酸化炭素を吸収しづらくなったり、災害時に枝や幹が折れやすくなるなど、環境や暮らしに負担を強いる上、管理コストは増え続けます。まち協の予算減少傾向を鑑みると早急に対処が必要。一方で街路樹を伐採し、景観が変わってしまうことに抵抗を感じる人も少なくなく、プロジェクトの推進は簡単ではありません。そんな中で始まったワークショップ。計5回のうちすでに3回が終了。説明会でその意義を理解してもらい、フィールドワークでの課題の抽出を経て、いよいよまちの将来図の素案づくりが始まっています。

自分たちのまちの風景をつくる街路樹再生プロジェクト
街路樹を間伐し植え替えなどしたあとに生まれる広い歩道スペース活用のアイデアとして、定期市の開催などが挙がりました。早速、試験的に開催している定期市との連動を図り、オリジナルなにぎわいやサスティナブルなコミュニケーションの創出を広げていきたいというまち協。写真は、試験的に港まちポットラックビルで開催した定期市の様子。
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定期市のフライヤー。みなと土曜市と名付けて定期的に開催しています。

 

さらに、現場で起きる出来事や世代間交流、さまざまな出会い。貴重な瞬間を動画に記録し、発信もスタート。

※ワークショップの動画 URL
江川線街路樹再生ワークショップ第二回
江川線街路樹再生ワークショップ第三回

「当初、年配者が中心だったワークショップに、まちで生まれ育った学生さんが興味を持ち、友達を誘って参加し自然に世代間の交流の場が生まれ始めたり。それって僕らが仕掛けて生まれるものではないんですよね。面白いのはそうした場を通じてまちのことがそれぞれの人の自分ごとになっていくこと。そこに大きな意味があると思うんです。発信に力を注ぐのは多くの人に関心を持ってもらいたいから。SNSでわかりやすく伝えるために動画や写真を使い、やがてそれらがログになり、同じようなことをしたいと思った人たちに気軽にアクセスしてもらえたらいいなと。いい発信が新しいまちの魅力になって僕らが目指す〝みんなとまち〟、つまり名古屋中に、そして全国に誇れる港まちに近づくことができれば嬉しいです。」

名称

港まちづくり協議会

URL

https://www.minnatomachi.jp/

備考

江川線街路樹再生ワークショップ
名古屋市街路樹再生指針