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【山梨県甲州市塩山】移住者インタビュー/原田弓大さん 果樹農家になるということ 

移住者の声

2021.06.08

今回、お話を伺ったのは甲州市塩山牛奥で農家を営む、原田弓大さん。
東京都国立市出身で以前は横浜でサラリーマンとして働かれていたそう。
なぜ東京、横浜といった都会から山梨の田舎の農家になったのか。
そんな原田さんの生き方や仕事に対する熱い想いをお伺いしました。

【山梨県甲州市塩山】移住者インタビュー/原田弓大さん 果樹農家になるということ 

――――なぜサラリーマンを辞めて山梨で農家になったのか教えてください

定年のない仕事がしたいと思ったから。65歳で定年退職をして、そこから新しいことを始めるよりも、今のうちから手に職を持っていた方がいい。
アウトドアが好きという事もあって農家になりたいなぁとは、なんとなく思っていましたね。
あとは、自分でつくったものがダイレクトに評価される仕事なので、収入以上にモチベーションが上がりました。
山梨を選んだ理由としては、実家から一時間圏内で来れるし、よく遊びに来ていて馴染みもあったので。

――――安定した収入が得られるサラリーマンを辞め、ゼロからのスタートである農家になることに不安はありませんでしたか?
不安はもちろんあったけど、少なかったです。

ヨーロッパとか海外だったら、ちょっと躊躇したかもしれないけど、同じ日本だし隣の県だし言語通じるし、何とかなるでしょ!!といった感じで始めました。

――――農家になると決めてまず何から始められたのですか?
この辺りだと農業大学校に通う人も多いのだけど、僕の場合はまずハローワークで農家のアルバイトを探しました。
ハローワークで就職すると就職祝い金がもらえるでしょ。実家を継ぐ人と違って何ももってないから0から何でも買いそろえなきゃいけなかったし。
今のメインは桃農家だけど、果物なら何でも良かったです。繁忙期の6月頃だったということもあり、すぐに見つけることが出来ました。そこから四年間、いろいろな農家さんのところで仕事体験をしましたね。農家さんによって考え方や作り方が違うので、自分のしっくりきたものだけを自分の農園に取り入れて今があります。

――――果物なら何でもよかったと仰っていましたが、なぜ果物だったのですか?
理由は二つ。一つは、野菜作りは腰が辛かった。果物と決める前に畑も体験しましたが、ずっと中腰の体勢がほんとにきつくて、これは続かないなと思って。
二つ目の理由が大きいんですけど、例えば大根をつくったとして、「原田さんの作った大根、煮物にしたら美味しかったよ」と言われても、それは自分のつくった大根が美味しかったのか、単にその人の料理技術がすごかったのかわからない。だけど、果物ならそのまま食べてもらえるので、美味いまずいがわかりやすい。だから果物にしました。

【山梨県甲州市塩山】移住者インタビュー/原田弓大さん 果樹農家になるということ 

原田農園のジューシーなさくらんぼ。メインは桃農家だがオールシーズン様々な果物を手掛けているそう。

――――なるほど。そんな原田さんの農園のこだわりは何ですか?
スプリンクラーは回さずに自然の降雨だけで水やりをする、除草剤は絶対に使わず長く伸びてきたら草を刈ります。そうすると、草が吸っている窒素が流れてくれるんです。
あとは、肥料は他の農家さんと比べて4分の1の量しか使っていません。肥料を使うと見た目は立派になるんですけど、味が劣ってしまうんですよね。僕は見た目より味重視です。傷みやすかったり、色が変わりやすかったりしても味が美味しければ僕の農園ではオッケーです。なので農協や市場では出回らないような品種も沢山育てています。

桃は今季で約25種類くらい(それも原田さん一人で)!

お客さんが喜んでくれるものをひたすら作る。その代わり自分の力で売らなければいけないので大変ですけど(笑)

【山梨県甲州市塩山】移住者インタビュー/原田弓大さん 果樹農家になるということ 

 

――――最後に、これから農業を始めたいと思ってる方にどのような言葉をかけますか?
正直、勤め人の時の方が収入はありましたよ。農家になって最初は貯金を切り崩してやり繰り。200万くらいは使ったかな(笑)
だけど、好きになれば結果はついてきます。目標を高くしすぎず、あまりこだわりすぎない方がいいです。好きでいつづけることは難しいけど、嫌いになりすぎなければ続けられるし、続けてればそのうち良いことがあります。自分がやりたいと思ってることがあればやってみればいいし、自分に合ってるなと思えば続ける事が大事だと思います。
それでも不安要素があるのであれば、実家から1時間くらいのところに引っ越して、すぐ逃げれる場所をつくるっていうのもアリですよ。不安なのは最初だけで一年やればなんとかなります。
どんな大手企業でもつぶれる可能性はあるけど、農業は人間がいる限り無くなりませんから。

写真提供:豊岡 翠

取材・文:名取 花(ABCアドバイザーズ.LLC/インターン)