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山形移住者インタビュー/若山雄大さん「自分を認めて生きていきたい」

移住者の声

2022.01.29

#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは若山雄大さんです。地元は千葉県浦安市、東京で暮らしていた若山さんが山形市に移住したのは、2021年6月のこと。ある日突然、縁もゆかりもない山形に移住しようと決意したといいます。自分の感覚を信じてまっすぐに行動する、そんな若山さんにとって山形はどのような場所なのか、日々どのように感じているのかお話をうかがいました。

山形移住者インタビュー/若山雄大さん「自分を認めて生きていきたい」

僕は秋田県生まれで、その後は親の転勤で東京、大阪、名古屋など転々として中学生から千葉県浦安市に住んでいます。浦安は東京のベッドタウンで、東京と行き来しながら暮らしていました。

社会人になってメーカーの営業職についたのですが、途中から違和感を感じるようになりました。学生時代は就活するのが当たり前だと思い込んでいて、無思考のまま就職してしまったんです。何のために働いているのか、自分の人生なのに手応えがまるでない状態。結局1年で辞めて、2019年の冬からオーストラリアのシドニーに1年半ほど留学することにしました。ありきたりですが自分探しの旅です。

留学中は本当に多くのアルバイトを経験させていただきました。コワーキングスペースで受付の仕事もし、色々なバックグラウンドを持つ人と話す機会も増え、その時初めて、フリーランスの人、正社員でも副業をする人などいろんな働き方があることを初めて知りました。

帰国して社会を見渡すと、海外だけではなく日本にもいろんな働き方があるんだと知り、その瞬間から世の中がカラフルで鮮明に見えてきました。そして自分自身ももっといろんなことができるのかもしれない、そんな気がしました。

山形移住者インタビュー/若山雄大さん「自分を認めて生きていきたい」

まずは趣味でやっていた動画編集を仕事にできないかと、機材を揃えました。ちょうどその頃はコロナが流行し始めた時期で、東京の自宅でひたすら机に向かい無我夢中で動画編集に明け暮れていました。

そもそもなぜ動画に踏み切ったかというと、学生時代からダンスをやっていたのですが、舞台で踊っていたダンサー仲間たちがコロナの影響で踊れなくなり、動画で発信する需要が高まっていて「ダンサーさん達を僕ならかっこよく撮影できるのでは?」と思ったのが一番の理由です。

ダンサーさんのツテもあり、半年も経つと仕事が軌道にのりはじめ、少しづつ生活できるようになってきました。しかしもっと色々チャレンジできるのではないかと「東京を出て生活してみたい」という思いが少しずつ膨らんできました。

編集やミーティングなど撮影以外の業務はPCとコンセントとWi-Fiがあればできるし、東京にこだわる必要はありません。現在27歳。こうやって感覚的に行動できるのは今のうちかもしれないと思いました。

山形移住者インタビュー/若山雄大さん「自分を認めて生きていきたい」

せっかくなら縁もゆかりもない場所に行きたいと思いました。条件は、定期的に撮影があるので東京に出やすいところ。また、シドニーで暮らして自然の魅力を感じていたので、自然が近いところ。そしてお金を貯めたかったので、物価が安いところ。

とりあえず北に行こうと思って検索していたら、山形が浮かび上がってきました。山形新幹線が通っていて2時間半で東京に行けるし、早めに予約すれば時期によってはチケットが半額になる。調べていくと、山形市から仙台はバスで1時間で行けることがわかりました。都会が恋しくなったら仙台に行けばいい。

家を探してみると、東京と比べて家賃の安さに驚きました。一度も山形に来ないまま、不動産屋さんのサイトからインターネットで部屋を内見して契約。家具家電付きの築浅で、一人暮らしに十分な広さがあって、駐車場も付いて月に5万円くらいです。

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2021年6月、入居の当日に初めて山形市を訪れました。知り合いもゼロだしどうしようかなと、ひとまず検索して出てきた冷やしラーメンを食べに七日町に行き、ブラブラしていたら「BOTA Coffee」というカフェを見つけてフラッと入ってみました。

店主さんに話しかけて「山形ってどうやって楽しめばいいんですか?」と聞いてみたら「いろいろあるよ」とメモ用紙に30件くらいお店やスポットのリストをつくってくれて、「今から行く?」とゲソ天の「エンドー」に連れて行ってくれたんです。ゲソ天のおいしさに感激して、いろんな話をして。偶然の出会いからいろんなものを紹介していただけて嬉しかったです。山形暮らしがいいものになりそうな予感がしました。

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移住してから半年が過ぎて、いまとても心地よく暮らしています。仕事は動画編集と掛け持ちで配達業もやっています。朝起きて運動して、配達と動画の仕事を交互にして、ときどき温泉に行って、という毎日。東京とは人口密度が全然違って、広くて自由で仕事にすごく集中できます。自分のペースが掴みやすいという感じ。配達の仕事で車を借りているので行動範囲は広いし、中心市街地の近くに住んでいるので自転車でも事足りています。

行きつけのカフェや床屋さんもできました。Day&Coffeeも僕にとって大切な場所のひとつです。キャンプ好きの人が集まるコミュニティのみなさんと繋がって、芋煮デビューもさせてもらいました。僕は山形で出会った人に恵まれているのかもしれません。みなさん自分でしっかり生き方を選んで楽しんでいる人が多くて、他人を認めて受け入れてくれます。

東京って人口が多くて遊ぶ場所の選択肢が多いから、似たもの同士が集まって深いコミュニティはできるし、他人を理解しようとしなくても生きていける。だけどあまりに固定化されて、そこ以外では生きづらく感じることがあります。

山形では自分とはまったく違った感覚の人と話す機会があって、誰もがフラットです。僕のセクシャリティはゲイでオープンにしていますが、あまり詮索されることもありませんし、他人を理解しようとする温度感がすごくあったかくて安心します。ぼくが移住したばかりでまだ見えない部分もあるかもしれないけど、いまはそう感じています。

12月からは駅前のワンルームのアパートからシェアハウスへ引っ越しました。イベントで偶然に知り合った人がそこに住んでいて、古い一軒家をリノベーションしたシェアハウスに入居させてもらうことになったんです。偶然の出会いが繋がって山形の生活がどんどん充実していく手応えを感じています。

山形移住者インタビュー/若山雄大さん「自分を認めて生きていきたい」

「なんで山形に住んでいるの?」といろんな人に聞かれます。僕は可能性を広げるために山形に来ました。いまはzoomで打ち合わせができるし、月に1度は出張して東京の仕事も繋がりも諦めることなく続けています。

将来的にはスタジオをつくってみたいんです。オンラインが普及して助けられたのと同時に、人とリアルに会える場、オフラインの大切さも痛感しました。動画や写真を撮ったり、カフェもあって人と繋がれる場所。いつになるかはわかりません。いまはそのための準備期間だと思っています。

自分なりの軸を持っていれば、どこに住んでもいいし、なにをしてもいいはず。僕は感覚を頼りにしか生きられないけど、山形に来てからそんな自分を認めてあげようと思うことができました。世間は「こうあるべき」という視線がきついし、僕自身もそれに囚われていた気がします。そこから外れても、自分の生き方に対して「これで幸せなんだ」と言えるようになりたい。

20代のうちに自分を認めることができるようになれば、30代からもっと自信を持って人生を歩めるようになるはず。その過程で山形で暮らす道を選んで行動した自分を褒めてあげたいと思っています。これから先、どこに住んでなにをするかはまだわかりません。だけど、いまの山形の時間は、確実に人生の財産になっていくと思います。

若山雄大さんインスタグラム
https://www.instagram.com/yuta.wakayama/

取材・文:中島彩
写真:伊藤美香子