real local 名古屋【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」 - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」

イベント情報

2022.07.15

2010年より3年ごとに開催されてきた「あいち」の芸術祭は今年で5回目を迎えます。
国際芸術祭「あいち2022」の会場は愛知芸術文化センターのほか、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)。まちとの関わりも深い地元の芸術祭について、チーフキュレーターである飯田志保子さんにお話を伺ってきました。
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」

「アートって難しそう……」なんて方も少なからずいらっしゃるかと思いますが、目から鱗のお話をたくさん伺うことができましたので、ぜひこの夏は国内最大級の国際芸術祭に足を運んでみてはいかがでしょうか。

【real,local名古屋では名古屋/愛知をはじめとする東海地方を盛り上げている人やプロジェクトについて積極的に取材しています。】

 

「まだ生きている。」

 

––まずはじめに国際芸術祭「あいち2022」のテーマ『STILL ALIVE』に込められた想いについて教えてください。

今回のテーマは愛知県を代表する世界的アーティスト河原温の《I Am Still Alive》という作品から着想を得ています。
自身のアトリエや旅先などから「I AM STILL ALIVE」という文面の電報を1970年から30年間友人知人に送り続けた作品です。「わたしはまだ生きている」という宣言であり、逆説的には「まだ死んでいない」という解釈も可能な、生死観を読み取ることができます。

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
河原温
ソル・ルウィットに宛てた電報、1970年2月5日
《I Am Still Alive》(1970‒2000)より
LeWitt Collection, Chester, Connecticut, USA
© One Million Years Foundation

河原温はコンセプチュアル・アーティストとして有名です。コンセプチュアル・アートとは、日本語に訳すと概念芸術となります。つまり、目で見て美しいものや迫力のあるものだけではなく、アイデアそのものが芸術作品なのです。
世界が未曾有のCOVID-19や戦争に直面しているいま、『STILL ALIVE』というテーマを通して見るアートから、誰しも考えることがあるのではないでしょうか。
「あいち2022」はこうした人々のいのちの営みに迫るような作品と作家が選出されています。
時代に対して真っ直ぐでありながらも普遍的なテーマは、誰がどんな風に解釈しても良く、見る人自身に委ねられています。
美しいと感じても感じなくても、楽しいでも不可解でも良い。感想や感情がすぐに言葉にならなくても良い。何か感じて、考える。コンセプチュアル・アートはそのきっかけになります。

 

アーティストだけが表現者ではない。

 

国際芸術祭「あいち」組織委員会の方々は展覧会、舞台芸術としてアートを見てほしいという想いはもちろんありながら、もともと住んでいる地元の方、芸術祭を目的に遠方から足を運ばれた方にも、「愛知県って多様で面白い」と、作品を見ることをきっかけにまちの良さにも改めて気づいてほしいという想いを持って、まちと絡めたアートの展開を続けているそうです。今回選定されたのは昔ながらの産業、伝統の文化的特徴を色濃く持ち続けている地域でした。

 

【愛知芸術文化センター】

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
愛知県の文化芸術の拠点として、名古屋市中心部に1992年開館。愛知県美術館と、大ホール、コンサートホール、 小ホールを有する愛知県芸術劇場などからなる複合文化施設。「あいち2022」では、現代美術展とパフォーミングアーツ 両分野を横断し、ラーニング・プログラムがアートと観客を繋ぐ、最も象徴的な場所となります。現代美術展では、 コンセプチュアル・アートの起源から最先端のアートまでを往来し、「世界」の多層的な解釈を巡ります。(画像提供:愛知芸術文化センター/出典:国際芸術祭「あいち2022」チラシ)
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
ローマン・オンダック
《事象の地平面(Event Horizon)》2016
オールボー近代美術館蔵
Photo: Andy Keate
Courtesy of the artist and Kunsten Museum of Modern Art Aalborg
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
渡辺篤(アイムヒア プロジェクト)
《月はまた昇る》2021、プロジェクト「同じ月を見た日」より
(月の写真:アイムヒア プロジェクトメンバー)
「同じ月を見た日」R16 studio(神奈川)
Photo: 井上桂佑

 

【一宮市】

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
織物の街として知られる尾張地方の中核都市・一宮市では、尾張国の「一宮」である真清田神社へ向かう参道周辺、神社の裏にある旧看護学校や旧スケート場にかけて配置される作品を通して、祈り、誕生、死、ケアなど、 自然界と人間の関係を連鎖的に想像しながら「STILL ALIVE」を考えます。また、尾西エリアにあるノコギリ屋根の工場や愛知県内唯一の丹下健三建築である墨会館などで空間の特性に応答したダイナミックな作品を展示します。(画像提供:国際芸術祭「あいち」組織委員会/出典:国際芸術祭「あいち2022」チラシ)
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
塩田千春
《不確かな旅》2016/2019、個展「魂がふるえる」森美術館、東京
Photo:Sunhi Mang,Courtesy of Mori Art Museum
©JASPAR,Tokyo,2021 and Chiharu Shiota
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
奈良美智
《Fountain of Life》2001/2014
「奈良美智 for better or worse」豊田市美術館、2017
©Yoshitomo Nara
Photo: Mie Morimoto

 

【常滑市】

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
日本六古窯のひとつであり、急須、土管、タイルなど、時代に合わせてさまざまな焼き物を生産してきた常滑市では、昭和初期の風情を随所に残す「やきもの散歩道」を中心に作品を展示し、大地や火、水、空気など、焼き物を育む根源的な要素から「STILL ALIVE」を考えます。また、常滑の産業史など政治経済の在り方を掘り下げた新作も多数展示され、海に面することから海運の要所でもあった歴史に呼応し、人々の移動や移住の背景にある多様な物語を紐解きます。(画像提供:国際芸術祭「あいち」組織委員会/出典:国際芸術祭「あいち2022」チラシ)
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
デルシー・モレロス
《大地(Enie)−ウイトト族の言葉で−》2018
Photo: Ernesto Monsalve
Courtesy of the artist
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トゥアン・アンドリュー・グエン
《ザ・ボートピープル》 2020
© Tuan Andrew Nguyen 2022
Courtesy of the artist and James Cohan, New York.

 

【有松地区】

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
尾張藩が東海道の鳴海宿と池鯉鮒宿の間に開いて以来、400年以上にわたって有松・鳴海絞りを継承してきた有松では、 東海道沿いの町並み保存地区を中心に作品が配置されます。有松で継承されてきた伝統的な手仕事に対して、世界各地で受け継がれる手工芸、コミュニティの繋がり、先住民文化などに着目し、「STILL ALIVE」を考察します。また、伝統的な日本家屋の建築空間に応答する作品を通して、歴史、記憶、蓄積、移動、政治などに関わるさまざまな物語を紐解きます。(画像提供:国際芸術祭「あいち」組織委員会/出典:国際芸術祭「あいち2022」チラシ)
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」
ミット・ジャイイン
《Peopleʼs Wall》2019
Photo:Jim Thompson Foundation
Courtesy of the artist and Jim Thompson Foundation
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宮田明日鹿
「こんにちは!港まち手芸部です。Vol.4」2021
Photo: 三浦和也
Courtesy of 港まちづくり協議会

 

アーティストが表現するために土地の魅力や技術を搾取するのではなく、まちとともにアート、『STILL ALIVE』を考える。住む人も訪れる人も自分たちの足元について考えを深め、今後も生きていくための道筋を考える。そんなひとつのきっかけになるような、小石を投じるような想いで企画を組んでいらっしゃるそうです。

 

––まちと絡めて芸術祭を展開することは、まちに対してどのような“こと”をもたらすのでしょうか。

芸術祭でまちが盛り上がれば、次の芸術祭が開催されるまでの2年間にまちの皆さん自身が何かやりたいと思うアイデアの種を育んだり、自主的にありたい方向を見つけたりします。アートそのものはまち自体を変えませんが、触媒としてまちを活性化し、長い年月をかけて結果的にまちが少しずつ変化してゆくこともあります。
「あいち」のように周期開催される芸術祭やビエンナーレなどは、時代と社会の変化をアートの視点から20年、30年かけて定点観測する役目を担っています。私はそういった長い目で愛知県を見つめ、この芸術祭が地域に寄与することを願っています。
また、日本の中でも最大規模の芸術祭とあって、多くの人がさまざまな地域から訪れたり、芸術祭をきっかけにこの地域に定住したりすることもあります。
さまざまな人が自分たちの住むまちを訪れ、感動して帰っていく様子に、良い意味で驚くこと。このことも地域を見つめ直すきっかけとなります。
世界各地で周期開催されているトリエンナーレやビエンナーレは、そういったシビック・プライドを育てる一助にもなります。国際芸術祭「あいち」もその役割を果たしています。

 

生きていること、死ぬこと、生き続けるものがあること。

 

「あいち2022」では、5回目となる今回はじめて物故作家が選出されました。
これまでは現代美術展として今を生きるアーティストたちの新鮮な作品が届けられていましたが、今回のテーマである『STILL ALIVE』を通して見るアートは普遍的なものです。誰しもが生きていて、いつか死に、その傍らで歴史や現象として残り続けていくものがあります。
死を間近に見る機会が増えている今だからこそ、本質的に変わることのない「生きていること」を痛烈に感じることができるのではないでしょうか。

ぜひ皆さんも、会場それぞれの作品を通してご自身の『STILL ALIVE』に触れ、考えてみてはいかがでしょうか。
【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」

屋号

国際芸術祭「あいち2022」
国際芸術祭「あいち」組織委員会

URL

https://aichitriennale.jp/index.html

住所

愛知芸術文化センター:名古屋市東区東桜1-13-2
<4会場の情報はこちらhttps://aichitriennale.jp/venues/index.html

【愛知県内4会場】愛知県の魅力に迫るアートの祭典、国際芸術祭 「あいち2022」