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『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁

2026.04.16

築90年の古民家を修繕した建物で、オーダースーツの店「背広屋 暁」を開業した上田さん。“スーツ”と“古民家”、異色にも思える組み合わせですが、あえて古民家を拠点に選んだ理由とは。そして背広屋とはどのようなお店なのか。背広屋暁の店主 上田さんに話を聞いてみました。

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
背広屋暁の店主 上田さん

「背広屋」という独自の世界観

新卒で入ったリフォーム会社の営業を数ヶ月経験した後、アパレル業界への転職を決意し、オーダースーツの店舗2社で約8年働いたのちに独立をした上田さん。30歳を節目に全てを振り切って、自分の世界観で店舗を持つことを決められたんだそう。

「スーツはイギリス・イタリアなどの欧米が発祥で、今でもトレンドは欧米から日本に取り入れるような感覚がずっとある。でも日本にも“背広”という呼び方をするような独自のスーツ文化が育ってきた。昭和の祖父母の世代やその前の大正時代から親しまれてきた“背広”という言葉をあえて使いながら日本から発信していきたいと思って。」

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
玄関入るとすぐ、掛け軸とスーツに迎えられる。日本の原型とも言える空間に欧米発祥のスーツ、まさに”背広”文化を表現する場所。

好立地の路面という常識を捨て、住宅地の古民家という選択

独立前の店舗はビルの路面でアクセスも良い、人通りもある商業的な立地だったにも関わらず、選んだのは吹田市の住宅エリアに位置する古民家。古民家や長屋などを中心に大阪、時には京都にも足を運び、物件探しをした末に決まったんだとか。

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
選んだのは吹田市の住宅地に残っていた築90年の物件。大阪R不動産で募集していた「耕す家」

「大工だった父親の影響でこういう日本家屋をよく見てたから、いつかは住みたいと思ってた。

別に市内の路面店だからってお客さんが来るわけではないし、思えば完全予約制だから作りたい人は県外からでもくる。オーダースーツという安くない買い物をするんだから、くつろいでもらえる、こういう空間で作ってみたいと思ってもらえるような場所にしたかった。

実は決まりかけていた物件が他にあったけど、今回の物件が大阪R不動産に出た瞬間に、TOPに載っていた写真に喰らって、すぐに見せてくれと電話した。

決め手になったのは“庭”と“築90年”というところ。そしてなんと言っても丁寧に暮らしてたことを感じさせる佇まい。一家で大切に住み繋いできた実家を賃貸に出すタイミングで、自分が引き継がせてもらえるのはもう縁だと思った。」

入居して、明らかに増えたSNSの反響

引っ越してから、とにかくSNSでの反響が増えた。2025年3月の入居時に5万人を目指すと言っていたインスタグラムのフォロワー数は一年ですでに10万人を超えている。

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
「背広屋」の世界観を発信している。将来的には自身と店の知名度を上げ、俳優にも挑戦していきたいとのこと。

「今は不動産も、スーツも、カフェなんかも5万通りとある中で、これからは結局、人にフューチャーされていくと思う。日本の伝統文化である“背広”と築90年の“古民家”、趣味の“盆栽”とかも掛け合わせて、自分が好きで魅力的と思える、かつ自分にしか表現できない世界観を発信するようにしている。

『こんな空間でスーツを作りたい』という問い合わせや、山口や広島や香川など、県外からの来客も増えた。」

一味違うオーダースーツの店、”背広屋 暁”のスタイル

田の字型で和室が4間という昔ながらの民家の形式。一見不便に思える間取りも、それぞれ展示・採寸・商談・試着の場所として使い分けている。古民家で背広を仕立てる、その接客スタイルも一味違う。

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
複数人を同時並行で接客するのはどっちつかずになってしまう。ゆとりのある時間設定でマンツーマンが上田さんの流儀。

「完全予約制で、マンツーマン。1人あたり約2時間程度とゆとりのある接客時間を確保している。

まだ若年層は経験ないかもですが、結婚式のプランナーさんの名前、車を購入する際のディーラーさんの名前、家を購入する際のハウスメーカーさんの担当者さんの名前、もちろん学校の担任の先生の名前、部活の監督の名前、


人生において節目の際、対応や教えをいただいた方の名前は覚えたりしているのに、昔仕立てたところのブランドさんと担当者さんの名前はどんな方ですかと今来ているお客様に聞くと名前や年齢まで覚えてもらってない、なんなら場所もあやふや。

たかがスーツ、されどスーツ
そんな経験をオーダーでしてほしくないので、ゆとりのある時間で思い出と経験に変えていって欲しい。

まずは基本的に雑談が長い。スーツの話もするけど、プライベートの話もめっちゃ喋る。特にSNSから来た人からは、こんなに喋ってくれると思ってなかったとよく言われる。

流れとしては、用途や予算に合わせて生地やデザイン・色を決めていくのに40分ほど、採寸に15分〜20分ほどの約1時間。1回の打ち合わせで完成する。

決して安くない買い物なので、とにかくくつろいでもらいたいというのは最初から思っていた。いぐさの匂いから始まって、おじいちゃん・おばあちゃんの家に来たような感覚。心なしかお客さんも長居する、スーツを作りに来たお客さんが気を張らずにゆっくり接客できる空間になっている。」

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
自身の名前の一文字でもあり、会社名にもなっている『寛』。静かでくつろいでもらえる空間を作っている。

親族で代々住み継いだ建物を引き継ぐ

冒頭でも触れたようにこの古民家は、一家で住み継いできた建物を賃貸で借りている。

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
かつて母が読書をしていたという縁側。時を経た佇まいをできる限りそのままに、現代的な暮らしに舵をきってしまうのではなく、敢えて建物に合わせて暮らし方も少し時代を巻き戻すようにリノベーションをしている。

建物が建てられたのは1936年。大阪に甚大な被害をもたらした室戸台風の翌年に当時の職人によって丁寧かつ頑丈に作られ、修繕をしながら約90年住み継がれてきた。建物を相続したオーナーは売却やマンション運用の声がかかる中、子どもの頃に暮らしていた思い入れのある建物を残したいという想いで、リノベーションして賃貸に出すという選択をした。

結果、想像以上にこの建物を使いこなす背広屋 暁が入居したことに建物オーナーは満足の様子。約90年間住み継いできた建物と思いが、しっかりと受け継がれた。

*リノベーションの企画・設計施工・入居者募集はアートアンドクラフト/大阪R不動産。

詳細はこちら▷「耕す家|吹田市の畑付き木造平屋」

『ただ、漢臭く』築90年の古民家で背広を仕立てる/背広屋 暁
「盆栽の水やりから始まる一日。静かでくつろげて、心なしかお客さんも長居する。正直、最高です。」

築90年の古民家という場所で、店主の上田さんが表現する”背広屋”という独自の世界観。

ただ、漢臭く。自分だけの背広を一着仕立ててみませんか?

名称

『背広屋 暁』

株式会社 寛 上田寛貴(こうだひろき)

業種

オーダースーツ(完全予約制)

URL

インスタグラム:@hiroki_koda_akatsuki