【名古屋市千種区】「吹上ユニゾン」が奏でる食と文化の新しい響き合い

名古屋市千種区、地下鉄桜通線・吹上駅から徒歩数分の静かな住宅街の一角に、2026年3月にオープンした食と文化の複合施設「吹上ユニゾン」。
料理、音楽、写真、アート、建築など、さまざまなジャンルに関わる人たちが日常的に集い、まるでユニゾンを奏でるように新しい出会いとクリエイションを生み出しています。

街に開かれた
食と文化の複合施設
複合施設、といっても「吹上ユニゾン」は単なるテナントビルではありません。食や文化を通して多彩な人々が出会い、価値や創造を共有できる「街に開かれたコミュニティスペース」を目指して誕生した新しいコンセプトの交流拠点です。
1階はイタリアンレストランの「BUTTER NOTE(バターノート)」。明るくカジュアルな雰囲気の中、心地よい音楽とともに本格派イタリアンを味わえます。



「BUTTER NOTE」の店舗を間借りするかたちで、木・金・土・日曜の朝限定のモーニングカフェ「カフェ モノンクル」も営業中。

2階はフードスタイリストのオガワヒロコさんが主宰する「yuge FOOD LIFE STUDIO」。
定期的に料理教室なども開催されています。

3階の「SPACE Q(スペース・キュー)」は、個展や展示会、ポップアップ、ワークショップなど自由な表現の場として利用できる多目的なレンタルスペース。佐治さんの「SAJI PHOTO STUDIO」も併設されています。




施設を立ち上げた佐藤嘉宏(さとう・よしひろ)さんに、各フロアの紹介と、この地に新たな拠点をつくった理由や施設に込めた想い、ここから広がる理想の街の未来についてうかがいました。
街に根づく拠点づくりへの思い
2001年に商品やサービス、Webのプロデュースなどを手掛ける会社を設立し、2008年に東京・学芸大学で写真屋「monogram(モノグラム)」をオープン(実店舗は2024年に閉店、ECは継続)し、現在もさまざまなショップや商品のプロデュースを務める代表の佐藤さんは、「写真」と「場づくり」の二本柱をミッションに経営者・プロデューサーとして活動してきました。
地元の名古屋では、「名古屋の街に新しいかたちの社交場を」をコンセプトに2012年から続くマーケットイベント「SOCIAL TOWER MARKET」のプロデューサーとしても知られています。
長年、東京と名古屋を行き来しながら多忙な日々を送っていた佐藤さんが、なぜいま名古屋の吹上にこのような拠点を構えるに至ったのか、その思いからお聞きしました。

「ご縁があって、NPO大ナゴヤ大学 の立ち上げに関わり、その事業として、15年前に仲間とSOCIAL TOWER PROJECTがはじまり、10年目に株式会社THE SOCIAL(ザ・ソーシャル)を設立。
取締役として運営を続けてきた中で、いつかは自分たちの活動の拠点となる場を持たなければいけないな、という思いがずっとありました。
東京にも自分の会社があるので名古屋と東京を行き来して仕事を続けていたんですが、コロナ禍でリモートワークが増え、上京の機会が減ったこともこうした場づくりへの思いを強くする大きなきっかけになったと思います」

人気マーケットイベントとして回を重ねるごとに出店者も増え、大きな成功を収めてきたSOCIAL TOWER MARKET。
しかし、魅力的なまちづくりのためには、ただイベントを繰り返すだけではダメだと感じていた佐藤さん。しっかりと地に足の着いた活動にするために、「線」や「点」を繋ぐ場づくりが必要だという思いは、コロナ禍を機に一層強くなっていったといいます。

「SOCIAL TOWER PROJECTは、単にマーケットイベントを開くことが目的なのではなく、自分たちの街を魅力的にするための活動なんです。大切なのは、街に社交の場をつくり、そこで生まれる出会いやつながりをしっかりと街に落とし込んでいくこと。
それなのに、イベントだけに依存してしまってはそもそもの目的に反してしまうじゃないですか。イベントはあくまでもきっかけで、そこでさまざまな人が出会い、その活動をみんなで応援することによって街が魅力的になっていくことが本当の目的。そのためには日常的に人が集まれる『拠点』がどうしても必要だったんです」
さまざまな出会いと縁が引き寄せた
「吹上」というロケーション
吹上ユニゾンをつくったこの場所は、佐藤さんが大学時代までご両親と過ごした実家の跡地。幼馴染みや昔からの知り合いが今もご近所に暮らしていたりと、佐藤さんにとってはひときわ愛着のある街。
「実は、最初はここでやるつもりはまったくなかったんです(笑)。どこか良い場所がないかと2年近く物件を探していて、中には契約寸前まで行った場所もありましたが、決め手に欠けるというか、なかなかしっくり来る物件に出会えなくて…」
そんな時、写真家でコーヒー焙煎も手がける佐治さん夫妻が、モーニングのできるカフェのための場所を探していると聞き、一緒に探し始めることに。
「ある時、佐治くんが、良さそうな物件を見つけた!というので見に行くと、なんだか使いづらそうな建物だったんですよ。それで思わず『ここだったらウチ(実家の跡地)でも良くない?』って言っちゃったんです。
すると奥さんまで『さっくん(佐藤さん)家でやれたらいいよね!』なんて言いだして、急に話が盛り上がっちゃった。ちなみに佐治くんは僕の高校の同級生なんですが、たまたまSOCIALの活動で再会し、家も近所だったんです。『確かに、吹上エリアという選択肢もありかもね』ってことで、一気に話が進みました」
実家ではお父さんが数年前に亡くなり、その後、一人で暮らしていたお母さんも足腰を痛めがちだったこともあり、「一軒家に一人だと何かと物騒だし、いろいろ心配だったので、これを機に母を暮らしやすいマンションに転居させることができたのも良いタイミングだったのかなと思います」と、改めて実家跡に完成した建物を見上げる佐藤さん。
無機質でありながら、住宅街に開かれた明るく開放的な外観が印象的な3階建の木造建築。
建物の設計は、SOCIAL TOWER MARKETで長年ともに活動してきた名古屋工業大学出身の杉岡さんと、その奥さんによる建築士ユニット「kny architects(ニーアーキテクツ)」に依頼。ちょうどオフィスを探していたという彼らもテナントとして入居することになり、理想の拠点が少しずつ形になっていきました。

「最後に決まったのが、1階に入ってくださったイタリアンのBUTTER NOTEさん。店主の稲垣さんとの出会いもSOCIALの出店者だった方からの紹介がきっかけでした。
『吹上近辺で物件を探している』と聞き、すぐお会いすることに。稲垣さんとは初対面だったのに、会って30分で入居が決まって…(笑)。もちろん、人気のお店なので以前から気になっていたんですけど、実はまだ食べたことがなくて。入居が決まってから毎週のように通いました。
評判通り本当においしかった!おいしいのはもちろん大事。それよりも30分で即決した一番の理由はなんといっても稲垣さんの人柄です。
稲垣さんはもともとダンスをしていたんですが、怪我したりで、もう一つの好きなこととして料理人の道を目指してフランスに修行に行き、東京で経験を積んで名古屋でお店を開いたという経歴の持ち主。
いろいろ土地で苦労しながら挑戦してきた人だからこそ信用できるし、初対面の僕にそういうことまで包み隠さず話してくれたことで『この人と一緒にやりたい!』と強く感じました」

チャレンジを応援することで
街はどんどん楽しくなっていく
吹上ユニゾンに入居しているメンバーや、3階の「SPACE Q」で個展やポップアップを行う方たちの多くは、これまで続けてきたソーシャルのMARKETを通じて出会ってきた仲間たち。
単に出店の場所や機会を貸すだけでなく、経営者として会社やお店を育ててきた経験から、ビジネス視点でのブランディングやプロデュースのサポートができることが自分の強みだと話す佐藤さん。自ら直接声をかけ、挑戦の場を提供する背景には、プロデューサーとしての特別な思いがあるといいます。
「ユニゾンに関わってくれている人たちは、商品や作品が魅力的なのはもちろん、人柄や接客、内に秘めた情熱が素晴らしい方ばかり。MARKETの出店者さんたちを見ていると、この人とこの人が組んだらもっと面白いものが生まれるだろうなとアイデアが次々に浮かびます。
将来、自分のお店を持ったらいいのにとか、この街にお店を出してほしいなと思う人に声をかけているんですが、いろいろなジャンルのクリエイターが集まると、想像を超えるような化学反応が起こるんです。それが本当に楽しい。実際に異業種のクリエイター同士を繋ぎ、新しいコンテンツをブランディング・商品化するような取り組みもすでに始まっています」
自分一人ではできない。
だから「ユニゾン」
25年前、最初に立ち上げた会社の名前は、組み合わせ文字を意味する「monogram(モノグラム)」。
この度、新たに誕生したこの場所には、音楽用語で複数の音やメロディーを一致させることを意味する「UNISON(ユニゾン)」と名付けました。二つの言葉に共通するニュアンスとそこに込めた思い。最後に佐藤さんが描く未来への展望を話してくれました。
「僕はあくまでプロデューサー。一人では何もできません。だからこそ信頼できる仲間たちと組むことで、一緒に街を楽しくしたり、多くの人に喜んでもらえる価値を生み出していきたい。
『ユニゾン』という名前にはそんな思いが込められています。SOCIAL TOWER MARKETには、これから自分のお店を持ちたいと考えている挑戦意欲のある人たちがたくさん集まります。
そういう人たちに、まずはここでポップアップや展示をやってもらい、それを足がかりにいつかは『自分の店』を持つという夢を叶えてほしい。そんな流れを吹上ユニゾンからどんどん生み出していきたいですね」
















