real local 鹿児島【鹿児島県鹿児島市】フラットに創り上げていく、温かなはじまりの場所 /デザイン事務所 atelier SALAD -後編- reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

【鹿児島県鹿児島市】フラットに創り上げていく、温かなはじまりの場所 /デザイン事務所 atelier SALAD -後編-

インタビュー

2022.09.26

前編ではデザイン事務所『atelier SALAD』が立ち上がる背景について伺いました。後編では、そんなお二人がお仕事をされている上で大切にされていること等を伺っていきます。

【鹿児島県鹿児島市】フラットに創り上げていく、温かなはじまりの場所 /デザイン事務所 atelier SALAD -後編-

チャンスがきた時に準備ができているか

寛子さん:ある時、姉が「店舗をつくりたい」とおっしゃっている方を紹介してくれたんです。どう店舗づくりを進めたらよいかわからないとのことで、早速お会いすることになったのですが、その方のエネルギーや考え方に私たちが惹かれまして。

ぜひ一緒にお店をつくらせて欲しい!と思いました。その流れで、早速出店予定地を一緒に見に行くことになり、『atelier SALAD』として初めての案件を請け負うことになりました。

孝平さん:そのお施主さんと義理の姉には感謝しかありません。だって、設計事務所として全く実績のなかったんですから。そんな中で信頼してもらえるって本当にありがたかったです。さらにお施主さんからは「あの日、お姉ちゃんに会って、自分にやりたいことを話した自分を褒めたい」とまでおっしゃってくださって。

オープニングパーティにも声をかけていただき、その場でもたくさんのご縁をいただきました。少しずつですが「こんな空間をつくることができるよ」といったことを認知してもらえたと思います。

【鹿児島県鹿児島市】フラットに創り上げていく、温かなはじまりの場所 /デザイン事務所 atelier SALAD -後編-
写真提供:atelier SALAD 最初に関わった案件『発酵食Lab』改装前
【鹿児島県鹿児島市】フラットに創り上げていく、温かなはじまりの場所 /デザイン事務所 atelier SALAD -後編-
写真提供:atelier SALAD (撮影:Hiroki Isohata) 最初に関わった案件『発酵食Lab』の内装

寛子さん:その後も、例えば、自宅から近いカフェでお茶をしていたら、以前お世話になった方にたまたまお会いして。「鹿児島に戻ってきて、夫婦でデザイン事務所をやっています」と伝えたら、後日その方より電話をいただきまして。

「今度リノベーションを考えているのですが、コンペに参加してみませんか?」と早速声をかけてくださったんです。ありがたいことに、その案件に関わることになりました。本当に、偶然なんです。なんとなく散歩していて、カフェに入ったぐらいだったので。

孝平さん:そういう偶然で世の中は回っていくのかなとも思うようになってきました。上海の事務所の所長が「チャンスは偶然やってくるけど、その時に準備ができているかどうは、その人次第」とおっしゃっていたのを最近よく思い出します。

偶然カフェでお会いした方の件も、その時に、僕たちがデザインする能力や提案する能力がなかったら、もちろん仕事としてなっていません。偶然のチャンスに対して、ちゃんと準備ができているというところまでが幸運なのかなって。

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写真提供:atelier SALAD (撮影:Hiroki Isohata) 最初に関わった案件『発酵食Lab』の内装
【鹿児島県鹿児島市】フラットに創り上げていく、温かなはじまりの場所 /デザイン事務所 atelier SALAD -後編-
写真提供:atelier SALAD (撮影:Hiroki Isohata) 最初に関わった案件『発酵食Lab』の外装

カルチャーを知って、自然に繋がる

孝平さん:それこそ今、指宿市の『砂むし温泉 指宿白水館』(以下:白水館)様からご依頼をいただき、客室のリノベーションのお手伝いをしているところです。

僕らが提案したのはここにしかないことを使ったコンセプトでした。白水館様らしい元々ある旅館という場所、そして、指宿市の象徴でもある砂むし温泉。砂むし温泉は砂っぽい手触り感もありますよね。そこにしかないものを客室の中でも表現したら、砂の中に入っていくような手触り感のある雰囲気に仕上がるのではないかと考えました。

寛子さん:ただ、単にHP中に「リニューアルしました」と謳っても、埋もれてしまう可能性があります。なので、例えば「何かしらのブランド名をつけてSNS等でブランディングしてみてはどうか」と提案させてもらいました。

完璧じゃなくても「旅館として、これから変わっていきます」「生まれ変わるプロジェクトのスタートです」といったスタンス的な部分も含めて認知してもらえたらと思っています。元々のファンや、これからファンになるであろう皆さんにも愛されてほしいですね。

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写真提供:atelier SALAD 『指宿白水館』改装前

孝平さん:全国的にどの温泉エリアも観光客が減少し、再興するために奮闘されています。

指宿もその1つで、それで単なるリニューアルではなく、再興プロジェクトのような形で企画から一緒に関わらせてもらっているところです。そこが僕たちの強みかなと思っていまして。

寛子さん:お施主さんでもある白水館様の社長さんはとてもフラットな方で、私たちのことを信頼し色々と任せてくださっています。お客様ファーストといった感じで、会社として風通しの良い雰囲気も伝わってきます。

以前サポーズの谷尻さんと愛さんから「同じ業界だけではなく、自分からカルチャーを知ることで仕事が生まれて、自然と繋がっていく」と教えていただきました。この案件を通して、その教えを思い出しましたし、もっと鹿児島の文化や求められるものを知りたいと思うようになりました。

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完成=ゴールではない

寛子さん:私たちが一番大切にしているのは「お施主さんの声を聞くこと」です。まだまだそんなに立派に言えないですが。建築を“独りよがり”に捉えず、お施主さんのためにつくった空間が誰かに認知されて、それが結果的に居場所として出来上がっていくのではないかと考えています。

私たちの役割は建物が完成したら終わりだけど、お施主さんからしたら始まりなんです。だから、完成=ゴールではないと思っています。

孝平さん:小さい頃、僕は自然の中を走り回って遊んでいたのですが、そういう原風景が強烈に残っています。だから、学生時代から伸びやかな空間に興味がありました。

単に壁と屋根があるから建物ではなく、外と一体的に使えたりするような、そういう感覚に関心があるんです。鹿児島に限らず、ローカルなところだと、そういう空間が作りやすい部分はあると思います。

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写真提供:atelier SALAD (撮影:Hiroki Isohata) 独身寮を改修した案件
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写真提供:atelier SALAD (撮影:Hiroki Isohata) 独身寮を改修した案件

孝平さん:関わらせていただいた案件の1つに独身寮を改修した案件があります。その建物を土の塊のような建物に作り変えたんです。それも割と僕らなりの建物に対する考え方を表現しています。

いわゆる外と中を分けるような建物ではなく、ちょっと手触りがいいとか、土の表情が出ているとか。その建物がある地域の街並みが古いので、そこにマッチさせて、できるだけ自然っぽく。そして、その空間にいる人や外から見ている人の心の中が温かな気持ちになればと思って。

寛子さん:それこそ『Social And Local Architecture Design』の意味でもあるように、広い視野をもち、周りの人たちのことを考えられるようにありたいです。交換日記じゃないですけど、私たちもお施主さんも立場関係なく、基本フラットでいきたい。単純に温かい気持ちというか。

だからこそ、関わったことに対して、我が子のように愛せて、大好きな関係性が築いていけるのかなと思っています。『atelier SALAD』として、その感覚はずっと大事にしていきたいです。

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(終わり)

屋号
デザイン事務所 atelier SALAD
URL

https://ateliersalad.jp

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