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【移住者インタビュー】フランス料理をもっと気軽に、身近なものとして楽しんでほしい/肉とワインOHMA 岩本文平さん

インタビュー

2024.01.16

山形市七日町の路地の一角にある〈肉とワイン OHMA(オーマ)〉は、さまざまな肉料理とワインが楽しめるフランス料理店。オーナーシェフの岩本文平さんが東京で修業を積んだのちに帰郷し、2021年にオープンしました。食文化としてのフランス料理の魅力とともに、念願の自店を地元に構えたことや戻ってきてからの生活について、お話をうかがいました。

【移住者インタビュー】フランス料理をもっと気軽に、身近なものとして楽しんでほしい/肉とワインOHMA 岩本文平さん

好奇心が切り開いた、料理人への道

山形市出身の岩本文平さんは、かねてから「将来は自分の店を持ちたい」という夢を持っていました。高校卒業後は地元を離れて社会人経験を積みたかったことから上京し、飲食業界においてさまざまな業態を経験。そんななか、どんどん引き込まれていったのがフランス料理の世界でした。

「フランス料理って全然馴染みがなくて、それまでの人生で食べた記憶もなかったんですね。それで体験してみようと思って食べてみたら、すごくおいしくて。それ以来ずっとフレンチの世界で料理をやっています。たとえば砂肝のコンフィであれば、砂肝がこんなふうになるんだ、とかいろんな驚きやおもしろさがあって、もっと知りたいなって思ったんですよね」

食べることが好きだという岩本さん。初めのうちは、食べるのが好きだったら自分で作れるようになれば良いだろうという考えを持っていましたが、今となっては自分のために料理をすることは稀だそう。だれかのために作る料理こそがモチベーションだと話します。

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落ち着いた照明の店内。席数はカウンター6席とテーブル2卓(4名掛け)。

帰郷後に実感したのは
暮らす場所としての環境の良さ

「自分の店をやるなら地元山形でやりたい」。フレンチのシェフとしての経験を重ねるとともに、独立して店を構えたいという気持ちも強くなっていきました。東京のさまざまな店で料理の修業を積んだ岩本さんは、Uターンを決意。2021年6月に山形へ戻ってすぐに、開業準備を始めます。コロナ禍ということもありひたすら作業に集中した結果、半年弱で新店舗の準備が整いました。そして11月5日、念願である自身のお店をオープン。

「飲食店なので、エリアは七日町か駅前で探していました。こっちにきてからいろいろと調べて辿り着いたのが『やまがた街なか出店サポートセンター』という窓口です。当時は山形市内の飲食店事情をまったく知らなかったので、出店にかんする相談から支援までさまざまな面で助けていただきました。この店舗の物件も紹介していただいたんです」

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オーナーシェフの岩本文平さん。狩猟免許とソムリエの資格も持つ。フランス料理のおいしさに魅了され、料理の道に。

現在、奥さんと4歳と1歳のお子さんとの4人暮らし。13年ぶりに戻ってきた山形での暮らしにはとても満足しているそう。庭付きの物件を借りて東京では叶わなかった家庭菜園にも挑戦し、去年の夏にはトマト、ナス、ピーマン、オクラなどを収穫しました。「自分たちが食べるものを身近なところで作れる環境があるって贅沢なこと」と岩本さん。また、子育ての環境で考えたときも、東京より山形のほうがイメージしやすかったといいます。さらにはもうひとつ、決め手となった部分がありました。

「自分が育った環境とも比べちゃいますよね。東京で子どもを連れて公園とかに行くと、人が多すぎてかけ回ったりもできない感じがあって。山形だったらその辺の河原に連れて行ったら一発で解決するのに(笑)。子どもが無料で遊べる施設も多いですしね。あとは別の話になりますが、自分は狩猟免許を持っているので、狩猟をやるなら自然が近くにあるところが良いなと思っていました」

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シェフ自ら狩猟も行うとあって、ジビエもメニューに並ぶ。こちらは過去に料理としても提供されたイノシシ。

食文化としてのジビエと狩猟
おいしく食べることで地域貢献にも

時季のものが身近に手に入る山形は、料理人にとって食材の宝庫。食に携わる仕事を続けるなかで、東京と山形とでは料理の方向性や深度も変わっていただろうと話す岩本さん。狩猟やジビエへの興味の入り口は何だったのでしょうか。

「そもそもジビエ(gibier)はフランス語。フランス料理の中に文化として入っているんですね。つまり狩猟も昔から生活に根付いている。僕の場合はフランス料理に出会ってからジビエを知り、おもしろいなと思うようになったんです。うちの店にはジビエを食べたいっていって来てくれるお客さんも多いですよ」

狩猟を始めたのは3年前。狩猟免許にはいくつか種類があり、岩本さんが取得しているのは銃猟とわな猟。山形県内における狩猟期間は毎年11月15日から翌年2月15日までの3ヶ月間(イノシシ、ニホンジカ、その他鳥獣に分類され、一部のみ期間が異なる)と定められています。

「狩猟解禁日は必ず行ってますね。日の出前から動いて、日の出と同時に始めます。動物たちが警戒してないぶん、この日が一番重要なんです。狩猟期間の終わりぐらいになってくると、人間の気配を感じただけで逃げちゃうんですよ。動物って頭良いんですよね」

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山形に限ったことではなく、日本各地のいたるところで問題になっている獣害。駆除された動物を有効活用できるシステムがあれば良いものの、結局のところ殺処分されているケースがほとんど。料理人と自治体が連携しながら持続可能な協力体制を作っていくことができれば、少なからず一般市民への認知や理解が深まり、課題解決にもつながっていくのではないか。岩本さんがジビエをメニューに取り入れているのは、そんな一面もあるのです。

「自分でわなを仕掛けて、撃って、解体して、肉をさばくところまで行います。鳥であれば羽をむしるところから。食は素材から関わっていくほうがおもしろいですけどね。そこも含めて自分の料理になるから。たとえば仕入れている肉でもどんな豚や牛なのか、どうやって育てられた野菜なのかって、料理人だったらみんな興味あるんじゃないかな」

【移住者インタビュー】フランス料理をもっと気軽に、身近なものとして楽しんでほしい/肉とワインOHMA 岩本文平さん

フランス料理の魅力を伝えるとともに
地域の人に親しんでもらえる店でありたい

和食、洋食、イタリアン、中華、などとさまざまな料理のなかで、フランス料理にはどんなイメージがあるでしょうか。たとえば、コース料理できちんとしたマナーがあって、ちょっと高級で敷居が高い。こういった側面が切り取られがちです。しかしながら、フランス料理の純粋なおいしさを知る前に、イメージだけにとらわれてしまうのはもったいない。だからこそなるべく敷居は低くして、フレンチをカジュアルに楽しめるお店にしたいと岩本さんは話します。

「フランス料理の魅力を伝えるうえで重要なのがワインです。料理と本当に相性の良いものを合わせたときの感動っていうのは他にないというか、それが醍醐味でもあると思うので。今、ワイン自体の世界はかなり細分化していますが、僕はクラシックなフランスワインが好きですね。なので料理もザ・ビストロみたいな感じのものが多いです」

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炭火でじっくりと火入れした鴨ロースはしっとりとした赤みと香ばしい脂のバランスが絶妙(1人前〜 1,540円)。ボリュームたっぷりの前菜盛り合わせ(2人前〜 2,420円/お1人様のみ1人前の注文可)も人気。ワインの種類も豊富で、シャンパンはグラスもあり(800円〜)。

OHMAのメニューはアラカルト中心。予算に合わせて気軽にフランス料理を楽しめます。看板となるのは分厚くカットされた塊肉の炭火焼きで、鴨ロース、豚肩ロース、牛イチボなど良質なものをリーズナブルに味わえるよう産地を吟味しています。ソムリエの資格を持つ岩本さんが厳選したワインの品揃えにも定評があり、県産ワインは市内で提供するお店が多いことからなるべく違ったセレクトにしているとのこと。観光者目線ではなく、あくまでもこの街で暮らす人としての目線を大切にしています。

「まずは山形の人たちに楽しんでもらえるような店でありたいですね。この地で長く続けられているお店や先輩方はたくさんいるので、うちの店では他の人がやっていないようなことや山形にないものを提案していきたいなと。それでいうとフランス料理とワイン、ジビエをみなさんに楽しんでもらえるよう、これからもいろんな形で伝えていけたらと思っています」

【移住者インタビュー】フランス料理をもっと気軽に、身近なものとして楽しんでほしい/肉とワインOHMA 岩本文平さん

DATA
肉とワイン OHMA(オーマ)
住所 山形県山形市七日町2-1-25
電話番号 070-9009-3032
営業時間 17:00〜23:00
定休日 不定休
公式Instagram @ohma_wine

写真:布施果歩(STROBELIGHT
文:井上春香
協力:山形エリアマネジメント協議会