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山形納豆物語 第一話

連載

2024.04.08

山形の人は、納豆が好きだ。
愛知へ嫁にきて20年、山形を離れて初めて気づいたことだった。

まずはスーパーの納豆コーナーをみてほしい。その広さ、中小メーカーがひしめく多様なラインナップ。みんなお気に入りの納豆で、納豆もちを食べ、ひっぱりうどんをすすっているに違いない。そんな山形の、納豆にまつわる思い出や家族のことをつづっていきたい。

第一回目は、私の母と納豆について。

山形納豆物語 第一話

私の母は、昔から納豆は「一度に3パック」という人だった。納豆は大概3パックで1個になっているが、それが母にとっての1回分ということになる。「お母さんね、好きだから食べちゃうのよ〜」と、ご飯にのせず、お椀にも移さず、パックから直接ぞぞぞっとすする姿を、私は小さい頃から当たり前のように見てきた。

それゆえ冷蔵庫には必ず納豆があるのだが、先日帰省した際は、冷凍庫に15パックを発見。なんでも自分で3個買ってきた日に、父も5個買ってきて、合計24パックになったため冷凍したのだそうだ。納豆で覆われたその光景にしばし圧倒されていた私へむかって母は、「ちょっと凍ってるところが残ってるのも美味しいのよ」と教えてくれた。いや、お母さん、そういうことじゃなくて。凍った納豆食べてるのも気になりはじめちゃったけどさ。

そんな母の納豆にまつわる思い出といえば、私が小学生のころ。学校から帰ってまったりしている私と妹に、心底びっくりしたという顔で報告してきたことがあった。

「ご近所さん、納豆1パックを家族4人で食べるんだって…」

母は、自分の1回分にすら満たない量を4倍の人数で食べていることに対し、本当に信じられない、どうやって食べているのか、そんなことで足りるのか、なぜ足りるのか…と驚きや疑問が渦をまいている様子であった。その報告に「えーーーー!」と心から同調した小学生の私たち。

しかし、本当に驚かれるべきは母の方なのでは…?と大人になった今思う。あの時、母はご近所さんに自分が一度で3パック食べることを話したのだろうか。

72歳になった母は、今日も変わらず納豆を3パックすすっている。
山形納豆物語 第一話