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縄文からつづく、山を思う暮らし

いつでも特別な存在「富神山」

山形在住の美術家・是恒さくらさんが山形市をフィールドワークして、日常風景に潜む「信仰」を紐解くシリーズ。第1回の舞台は「富神山」です。

縄文からつづく、山を思う暮らし

山形盆地の南部にある山形市では、どの方角を向いても山が見えます。中心市街地から離れて山の方へ向かうと、途中の道沿いには田畑が広がります。山々から流れる小川が水路を通り、集落へとそそぐ様子がわかります。

縄文からつづく、山を思う暮らし
富神山から流れる小川

山の麓に人の暮らしがあるのは、山形では馴染みのある風景です。

日本では古い時代から、自分たちの生活を支える自然をかけがえのないものとして、大切に思い敬ってきました。

山岳信仰はその自然崇拝のひとつで、山を崇める精神文化です。よく知られたものに、山形の月山・羽黒山・湯殿山の、出羽三山信仰があります。

長い歴史のなか、山裾で暮らしを営んできた人たちにとって、いつもすぐそばにそびえたち、田畑を潤す水源のある山は、生命の源と感じられたのでしょう。

縄文からつづく、山を思う暮らし

東北地方に伝わる信仰では、〈里に住む人の魂は、死後山へと上り、子孫を見守る〉とされてきました。

そこでいわれる〈山〉とは、人里に近い山のこと。里から離れた奥深い山々である「深山(ミヤマ)」に対して、「端山(ハヤマ)」と呼ばれてきた場所です。「葉山」や「羽山」など、漢字は異なっても同じ読みの山が日本各地にあるのは、この信仰の名残なのです。

身近な山をかけがえのないものとして崇拝する。山形では、そんな日本人古来の心のありようが見てとれる風景に出会えます。

そのひとつが、富神山(トガミヤマ)です。まるでピラミッドのような綺麗な三角形の山で、遠くからでもひと目でわかるかたちです。

縄文からつづく、山を思う暮らし
中央に見えるのが富神山

富神山の麓の柏倉という集落には、「富神明神社」があります。その名の通り、富神山を祀った神社です。まうしろに富神山がそびえるこの神社の社殿は、不思議なことに、縄文時代のストーンサークル(環状列石)の中心に位置しているのです。

縄文からつづく、山を思う暮らし

ストーンサークルとは、輪を描くように石を並べた古代の遺跡のこと。世界各地で見つかっていて、日本国内でも北海道・東北地方を中心に、いくつも発見されています。古代の人々が祭祀や葬送をおこなっていた場所だと考えられています。

富神山のストーンサークルは、昭和50年代におこなわれた発掘調査で見つかりました。今は見学できないものの、縄文時代からこの場所が人々にとって聖なる場所であったのだと想像がふくらみます。

縄文からつづく、山を思う暮らし
縄文からつづく、山を思う暮らし

山頂から山形市街を一望できる富神山の名前の由来には、いくつかの説があります。

よく知られている由来は、戦国時代の関ヶ原の戦いの頃の話です。直江兼続軍が最上義光軍の拠点である山形城を攻めようと、富神山の山頂から城の様子を眺めたそうです。

しかし城には霞がかかっており、10日間待っても霞が晴れなかった、と伝えられています。その出来事から、「十日見山(トオカミヤマ)」と呼ばれるようになり、山形城は「霞ヶ城(カスミガジョウ)」と呼ばれるようになったと伝えられています。

それ以前から「トカミヤマ」という名であった、という説もあります。貞観13年(871年)の国史「三代実録」のなかで、神階を授けられた「利神」とは、トカミであり、富神山であるとも考えられています。

また、山形だけでなく、宮城県、愛知県、島根県、大分県など全国各地に「トカミ」と名のついた山があり、そのどれもが富神山と同じような綺麗なピラミッド型で、〈聖なる山、神の山〉として祀られ、山頂や麓に神社があるのだそうです。

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富神山登山口の石碑

こういった話がいくつも出てくるのは、太古の昔から、この山がこの土地の人たちにとって特別な存在であったことの証といえるでしょう。

山々が並ぶなかで、富神山を特別なものと見ていた昔の人たちの気持ちを想像してみます。祖先と身近な人の魂がまっすぐ空を向いて上っていくイメージは、この山の綺麗なかたちを見ると、手に取るように感じられたのではないでしょうか。

どこから見てもすぐわかる富神山は、自分たちの暮らす集落の目印にもなったでしょう。遠く離れても、見守られている。富神山は、そんな存在なのでしょう。

参考文献:『西山形の散歩道 西山形地区 山形市合併五十周年記念誌』西山形振興会、2007年

「山形の信仰シリーズ」アーカイブはこちら

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