real local その他【長野】小澤果樹園 小澤浩太さん nerdな農家が造る、geekなリンゴ酒 - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

【長野】小澤果樹園 小澤浩太さん nerdな農家が造る、geekなリンゴ酒

2017.09.28

あ、シティボーイだ。

ヒゲにウェリントン型のメガネ、アウトドアウェアにキャップ。リンゴ農園で会った小澤果樹園の4代目・小澤浩太さんの第一印象。東京あたりのダイナーに置いてると映えそうな、洗練されたボトルデザインのリンゴのお酒=「SON OF THE SMITH」の造り手であり、リンゴ農家です。

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自転車やキャンプ、バックカントリースキーもやるというアウトドア好きの小澤浩太さん。
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これが「SON OF THE SMITH」のボトル。この写真をFacebookにアップしたら、都会でカフェをやってる友達から即座に「それどこの?」とコメントが。そそるラベルデザイン。

 

「大町市で生まれ育って。ずっと外に出たかったんです」。大学進学で上京。学生時代はバックパッカー旅に没頭。プログラマーとして就職したものの、リーマンショックの憂き目を経て、地元に戻ってきた小澤さん。「自分にしかできない仕事をしたいなと思ったとき、家業のリンゴ農家があった。でも農業を学んできたわけではなく、“専業農家の長男”というステータスしかなかったんです」

……と、ここまではわりとよくあるUターンストーリー。この先の話が面白いのです。

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小澤果樹園のファームハウス。ローカル電車がのどかに走る大糸線のすぐそばにある。

 

ドラクエの主人公はリンゴ農家? ポートランドにたどり着く

果樹研究会で知り合った小諸市「宮嶋林檎園」の宮嶋伸光さんと、研究目的でリンゴのお酒の醸造を始めていた小澤さん。リンゴのお酒=シードルだろうと、冬の農閑期を利用して、『有志でノルマンディーに行こう!』となりました。そこで全農長野の顧問を務める小池洋男先生に視察先の紹介をお願いしたところ、「伝統的なノルマンディーで君ら若い人たちがいまさら学ぶことはない」との返答。2015年3月、まったく思いもよらなかったオレゴン州ポートランド行きが決まりました。

「ところが先生に紹介してもらった教授が90歳近くのかたで……。英語も拙い自分たちが突然うかがっても失礼だろうと(苦笑)。そこで大学時代の友人がたまたまポートランドにいたのを思い出して、現地の農政部などに話を繋げてもらったんです。学生時代のバックパッカーのノリだったんで、『テント張れるところある?』と訊いたら、おいおいって宿を手配してくれたり、サイダリーやリンゴ農家に1日10軒とかアポを入れてくれて」

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2016年3月、ポートランドでの「レヴァレンド・ナッツ・ハードサイダー」での醸造研修。(小澤さん提供)

 

小澤さん曰く、ドラクエの旅。街で会った人にヒントをもらって、次の人に会いに行く。

ここ数年ポートランドに関しては様々なメディアが取り上げていましたが、小澤さんはそんなブームも知らなかったそう。でも「誰も作ったことがないものを作りたい」という西海岸らしいクラフトマンシップあふれる醸造家たちに触れた旅。長野に戻ってから自分たちのハードサイダー造りへの決意となったのです。

クラフトギークの地が生んだ、ハードサイダー

ところで、シードルとハードサイダーの違いって何でしょうか?

フランスのシードルはその土地の常在酵母菌を使い、瓶内2次発酵をさせることで炭酸を作るナチュラルカーボネシー。一方、ポートランドのハードサイダーはアルコール発酵までさせた“リンゴワイン”に炭酸を加える人工カーボネシーが主流。前者はいわゆる農家による地酒的なルーツを持ち、後者は西海岸のクラフトビール文化の影響を受けているのです。

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【長野】小澤果樹園 小澤浩太さん nerdな農家が造る、geekなリンゴ酒
「Far East Cider Association」という普及団体として、ハードサイダーの認知を高める活動も行っている。小澤果樹園ではレヴァレンド・ナッツ・ハードサイダーなど、ポートランドのハードサイダーも販売。

 

帰国した小澤さんと宮嶋さんは、レヴァレンド・ナッツ・ハードサイダーでの研修やサイダー用品種の苗木生産などを経て、ハードサイダー造りを始めます。といっても原材料と思いはあっても醸造免許がないので、大町市の「ノーザンアルプスヴィンヤード」の若林政起さんの力を借りることに。そして2017年5月に生まれたのが、冒頭のオリジナルサイダー「SON OF THE SMITH」。グラニースミスという種類のリンゴを使ったハードサイダー。リンゴの酸度が高く、アウトドアでも爽快に飲める味を目指してのファーストバッチでした。

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これがSON OF THE SMITHの原料となる、グラニースミス。オーストラリアのスミスおばさんが作ったリンゴ。その息子、というわけです。

 

「インディーズバンドって自分たちでCDを手売りしますよね。だから僕たちもそんな感じで“レコ発ツアー”って言いながら、この夏はイベントでハードサイダーを売っていました」。お披露目は東京の清澄白河で開催された「ヒュッグリ市」。クラフトフードを作り手が販売するという、SON OF THE SMITHにふさわしい場でした。

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レコ発ツアーならぬサイダー発ツアーの様子。お客さんとの距離も近い。(小澤さん提供)

 

世代を超えてリンゴを守る、ナードな職人の姿

やっぱりシティボーイだ。

と、その風貌と出てくるキーワード、いまっぽい軽やかさからそう思っていたのですが、リンゴを語り出すと彼のもうひとつの側面が出てきます。

「うちの父は生産の一方で育種をやっています。リンゴは接ぎ木で増やしますが、種から育てる育種は、実るまでどんなリンゴができるかわからないんです。ポートランドの友人に『geekではなくnerdになれ』って言われたんですが、父はnerdなんですよ。ひたむきにリンゴが好きな職人。僕も一過性のムーブメントではなく、農家としてリンゴを守りたいという気持ちからやっているんです。誰かの食卓にリンゴがあって、誰かの楽しいキャンプの場にハードサイダーがある。食べ物を作るってすごいことだと思うんです」

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甥っ子が作ったという果樹園の看板。古いリンゴの木を使った手作り。

 

このほかにも、発酵クレイジー(?)なサイダリーたちの奮闘や、サードウェーブコーヒーやクラフトビールとの相似点など、面白い話をうかがいましたが、これはレコ発ツアーならぬハードサイダー発ツアーで直接訊いてみてほしい。だって、そういう生の声を作り手から聞けるのが、ガレージブランドならではの気分なのだから。

屋号

小澤果樹園

URL

http://www.ozawa-orchard.com/

備考

現在はハードサイダー自体の普及団体「Far East Association」と、小澤さんと宮澤さんによる「SON OF THE SMITH」など長野産ハードサイダー醸造の2本軸で活動をしている

■ハードサイダー普及団体「Far East Association」

https://www.facebook.com/FarEastCiderAssociation/

 

■SON OF THE SMITH

http://hardcider.jp/

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