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森と道について

人が集い、美味いものが集まる“まち”、2020はオンライン上で

2020.05.15
森と道について
森、道、市場2018にて。

僕は、森と音楽が好きだ。
例年だったらこの時期から色んなイベントが目白押しで、まさに今年も始まった!という時期でもある。
いわゆる野外フェスとか音楽フェスとか言われているイベントだが、数日間にわたって行われることも多く、その場合テントを張ってキャンプしながら楽しむ、ということになる。

大規模なイベントになればなるほど人も多くなり、どこにテントを張るか? という場所取りが重要になってくる。会場に近くステージが見える場所が良いのか?(利便性)、森の奥でゆったりと焚火を楽しめる場所が良いのか?(環境)、各々の理想の過ごし方に合わせて、よいサイトを狙っていくのである。

人気があるのは、木陰で水はけの良い場所だ。さらに平らで、地面がゴツゴツしてなくて芝生だったりしたら最高だ。風や雨、日射の影響が極力少ない場所を選ぶのが基本。自然の中では、雨が降った程度でテントが浸水してしまうサイトでは安心して眠ることもできない。そして雨は必ず降るものなのである。

スタートが遅れて、夕方くらいにサイトに到着すると、もう良い場所はいっぱいだ。ちょっとでも水はけが良い場所を何とか確保しようと空きスペースを見つけ、シートを敷く。もはや地面がゴツゴツしてようが、ちょっと斜面になっていようが関係ない。
丘と丘の間の、ゆるやかな谷のような近い一番水が溜まる場所だけは何とか避けて、どんどんサイトが埋まっていく。そして、一番低い谷のような場所が最後に残る。この残ったところが道として発展していくのである。

ひとたび人の流れができると、ほとんどみんな同じルートを歩くので、地面は踏み固められより歩きやすい道となり、さらに人通りも増えていく。気がつけば、その道端でコーヒーとかチャイとか飲み物とかを売る人が現れる。夕方くらいになってくると、肉を焼いて売ったり、雨具を売ったりといつの間にか何店舗も出現し、まるで闇市のような状態が起こることも多い。最終日になると、余ったお酒とか野菜とか、もはや叩き売り状態である。そしてイベントが終わると、人の形跡・動線だけ、すなわち道だけを残してすべてが消えてしまう。

これは、都市が発生し発展する過程そのものではないだろうか。
ちょっとした高台に人が住み着き、周りより低いところには、川が流れ、道ができ、人が通行するので、店ができ市場になる。そのうち、駅ができて、更にそれが加速する。

森と道について

今日から3日間、「森、道、市場」というイベントが行われる予定だった。
会場は、愛知県の蒲郡。海と遊園地に500店舗以上のお店が集まり、数えきれないアーティストが音を奏でる。

まさに、人が集まり、道ができて、市場が立つ。そんなイベントだ。
3日だけ、幻のように年に1回発現する。そこではいろんなアイデアの実験の場でもあり、美味いものが集まる市場であり、人達が年に1回集い、顔を合わせ語らう、リアルスペースでもある。

そんなリアルに人が集まる森、道、市場が今年通常の会場では中止せざるをえなくなったが、それでなくなるかと思いきや、オンラインに森、道、市場を3日間出現させるという。

僕はいつもどおり?3日間ずっとこのまちに居るつもりだ。オンラインだから、距離を飛び越えて会える人も居るし、去年より多くの人と乾杯できればと思っている。

何はともあれ、仮想のまちを3日間出現させる新たな実験が今日からまた始まった。

ライター

森と道について

吉里 裕也
Hiroya Yoshizato

京都生まれ、横浜と金沢育ち。ディベロッパー勤務を経て、2003年に「東京R不動産」、2004年にSPEACを立ち上げるとともに、CIA Inc.にて都市施設やリテールショップのブランディングを行う。建築・不動産の開発・再生のプロデュースや建築デザイン、「東京R不動産」「real local」「公共R不動産」、全国のR不動産等グループサイトのディレクション、地域再生のプランニング等を行っている。

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