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地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん

移住者の声<山形>

2020.05.26

山形暮らしを楽しむ #山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストはカメラマンの伊藤美香子さんです。

岩手県宮古市生まれ。大学にて幼稚園と小学校の教員免許を取得するも、上京してプロカメラマンに。東京を拠点に雑誌や広告などで約10年にわたり活動したのち、2018年の秋に山形市へ移住。個人的な活動として、伊藤さんが撮った写真をキャンバスにして子どもたちが絵を描くワークショップ「しゃしんおえかき」も開催しています。山形を舞台に伊藤さんが仕事で感じる変化や日々の生活についてお話をうかがいました。

地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん
伊藤美香子さん

──山形へ移住したきっかけは?

夫の地元が山形市で、夫の家族の都合で山形で暮らすことになりました。3年くらいは東京と山形で別居婚をしていて、毎月1回くらい山形に来ていたので、どんな環境なのかはなんとなくイメージできていたつもりでした。

だけど、いざ住むとなるととても不安でしたね。訪ねて来ているときは気が楽だったけど、暮らすとなるとイチから築いていかないといけない。一番の不安は仕事でした。はたしてフリーのカメラマンとして成り立つのか。

移住する前から少しずつ山形の会社に営業をして、はじめはちょっと難航したのですが徐々にお仕事ができるようになってきました。いまはタウン誌や新聞社、印刷会社やメーカーさんの現場などで撮影しています。

──仕事のスタイルに変化は感じますか?

山形では、たとえ仕事の現場であっても、カメラマンである前にひとりの人間として自分が存在している気がします。専門性やプロとしての腕はもちろん大切ですが、それ以前に私が誰であるのか。肩書きよりもまず相手と向き合うことが大切だし、「伊藤美香子です」から始まって「カメラマンをしています」という順番かな。現場でもただの仕事相手だと割り切った付き合いではなくて、プライベートな会話も混ざり合うような温度感がありますね。

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仕事を開拓していく中で、山形では本質的な人付き合いが多いような感触があります。ときどき「山形では人と打ち解けるまでに時間がかかる」と聞くことがありますが、そうは感じませんでした。人と打ち解けるのはあっという間だった気がします。

私は元々オープンな性格ではないのですが、カメラマンの仕事を諦めたくないと必死で、いろんな人に自分からアプローチしていったので、それが結果的に良かったのかもしれない。思い切って自分から自己開示することが大切なのかもしれないですね。そうすれば、相手も心を開いてくれる。

そして、なによりたくさんの人に助けてもらったから、いまの環境があると思っています。よく行くカフェの店主さんが地元の方とつないでくれたり、ローカルな情報を教えてくれたりして、少しづつ繋がりが増えていきました。

──山形のどんなところが好きですか?

産直がいっぱいあって楽しいです。「おいしさ直売所 落合店」によく行くのですが、種類が豊富で、伝統野菜など初めて見る食材が多くて行くたびに発見があります。出荷にいらした生産者さんと会うこともあるので、お話ができるのも楽しい。

自然が近いので、山や川を見に行くのも好きです。かみのやま温泉の葉山地区にある足湯にときどき行くのですが、蔵王連峰が一望できて、すごく開放的。そこでゆっくり読書をするのが至福です。市内では馬見ヶ崎川の河原も好きです。

山形で自然に触れにいくと、どこに行っても人が少なくプライベート感があって、景色をゆっくり独り占めできる。お金では買えない贅沢だなぁって思います。

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馬見ヶ崎川
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蔵王連峰

東京を訪ねて友人に久しぶりに会ったとき、「変わったね、どこか落ち着いた感じがする」と言われました。無自覚だったのですが、たしかに写真を見るとなにかが変わっているような気もします。

空の色や光のトーンがどこか東京とは違う気もするのですが、たぶん物理的なことよりも、精神的なこと。被写体が一緒だとしても、心構えによって写真の雰囲気は変わります。こうして自然があふれる環境のせいか、競争社会から距離がとれたからなのか、山形に来てから自分の気持ちがゆったりしている気がします。

地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん

──ワークショップ「しゃしんおえかき」についても教えてください。どんなきっかけで、どんな発想で始まったのでしょうか。

B1のポスターほどのサイズにプリントした写真の上から、クレヨンやポスカを使って子どもたちが自由に絵を描いていくというワークショップです。写真を使って想像しながら描くという普段のお絵かきとは違った体験で、あれこれ想像する楽しさを感じてもらえればと思っています。

もともとは震災のタイミングで始めたものでした。地元の宮古市に津波がきて、実家は山手なので無事だったのですが、沿岸部の親戚、知人たちが被災しました。自分は東京にいて、なにも共有できないことに申し訳なさを感じてしばらくは塞ぎ込んでいたのですが、自分も写真でなにかできないかと思い、始めたのがお絵かきのワークショップです。

地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん
地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん

地元のことを考えたとき、子どもたちの存在がすごく気になっていました。教員免許を持っていて、教育実習のときに子どもたちの絵を見るのが好きだったなって思い出したんです。

学生のときは教師を目指して勉強しましたが、自分には知らないことが多すぎて、こんな狭い知識のまま先生になるわけにはいかないと思い、手探りのまま上京しました。その後に写真と出会い、カメラマンとして生きていくことに決めたのですが。当時は子どもたちに教えるということに対して、責任や自信が持てなかったんですよね。

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──ワークショップによって、子どもたちに教えることとカメラマンの道がクロスした。道はつながっているのですね。

そうかもしれませんね。これが私なりにできることだし、大変なときだけど、一瞬でも子どもたちに楽しんでもらえたら、という気持ちでした。

震災以降もワークショップを何度か開催しています。写真のテーマは都度変わりますが、共通して心がけているのは「優しい写真」であることです。あとは、描くきっかけが掴めるような被写体を選んでいるつもりが、だいたい自分の意図とは違うところに反応して物語が生まれるんですよね。丘が海になったり、人や建物が様変わりしたり。なんでそうなるの? ということばかり(笑)。

描いたあと、子どもたちになぜこれを描いたのか聞くと、ひとつひとつにちゃんと理由があるんです。子どもって大人が思う以上にしっかり見て、考えているんだなと気づかされます。

地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん

地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん
2019年夏、SLOW JAMにてワークショップを開催。お店や料理を撮影したものに子どもたちが自由に描いた。

コロナの影響が広がる今、学校が閉鎖になったり、外出が自粛されていたり、多くの子どもたちはストレスを抱えていますよね。いまはワークショップが開催できないので、少しでも家の時間が楽しくなればと、お絵かき用の写真を各ご家庭に郵送しています。写真はご家族の情報から想像して、子どもたちが馴染みある風景やモチーフを選ぶようにしています。

※ご興味がある方は、記事末尾に情報を記載していますので、ご覧ください。

──これからの目標はありますか?

大人の方もワークショップに興味を持ってくださる方がいます。普段は馴染みの風景にじっくり向き合うことがないかもしれないので、例えば蔵王連峰を撮って、山形の人に描いていただくなど、対象を広げていけたらと思っています。もしくは、別の地域の風景写真を使って、地域の交換みたいな試みにも興味がありますね。

山形に来てから気持ちにゆとりが持てるようになった気がします。これからは個人的な活動も大切にしていきたいと思っています。

地域とつながりながら働くということ/カメラマン・伊藤美香子さん

写真提供:伊藤美香子さん


【お知らせ】

「お絵かきワークショップを、ご自宅で体験してみませんか。いま、お家で過ごす時間が多いお子様に向けて、お絵かき用の写真プリントを無料でお送りしています。ご興味のある方は、以下の情報を添えて、mikakoito0815[a]gmail.com ([a]を@に換えてください)までお気軽にご連絡ください」(伊藤美香子)

※お送りする写真サイズはワークショップより小さいものになります(A3ノビ予定)。
※枚数に限りがあります。

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