山形移住者インタビュー/今野洋子さん「その土地なりの楽しみを見つけていきたい」
移住者の声
#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは今野洋子さんです。
結婚を機に東京から山形に移り住んだ今野さんは、それまでほとんど知らなかったという東北・山形での日々の暮らしをいまどう感じているのか、お話をお聞きしました。
東京から移住し結婚
山形で新しい暮らし
2019年11月、結婚を機に、東京から山形市に移住してきました。夫はずっと山形市在住のひと。宮大工の仕事をしています。
宮大工って、依頼のあったお寺に長期にわたって通いながら仕事するんですね。それで、栃木の山奥のお寺に嫁いだわたしの親友が、そのお寺に仕事にきていた彼のことをよく知るようになり、お互いを紹介してくれて。そんなことがきっかけで、わたしは東京で暮らしながら、彼は山形を拠点にしながら、それぞれの場所で生活しつつ、遠距離でのお付き合いをするようになりまして…。やがて、結婚し山形で一緒に暮らそう、となりました。
その頃わたしは代々木に暮らしていて、そこにある小さなビストロで働いていました。顔なじみが多く集まる、まちに愛されたお店でした。だからそこで働くわたしもまたまちのひとたちと次第に仲良くなれて、まちに馴染めたような気がして…、とても楽しいいいところだったなぁという感触が残っています。そしてその後、そこを離れこの山形に引っ越してくることになったわけです。
わたしはもともとは、生まれも育ちも埼玉です。専門学校卒業後に東京に出て、以来ずっと東京暮らし。荻窪、東高円寺、学芸大そして代々木…という感じで、引っ越しもそれなりに経験してきました。そうしてたどり着いた山形…。新しい住まいは、夫が決めてくれました。出張で不在になることも多いひとなので、わたしがひとりで過ごさなければならない寂しさや不安も多少あり、「一戸建てではないこと」「オートロックがあること」というのがわたしの希望でした。あとは夫が「猫と暮らしたい」ということで、ペット可の物件を探し…。それで、千歳山近くの住まいに決めました。
だからいまは山の麓で、夫と2匹の猫と暮らしています。山形駅からは少し遠いですけど、東京と違い、日々電車を使うわけではないので、駅からの距離ってあんまり気になりません。
車のある生活
自由に移動できる楽しみ
夫と付き合うまで、山形に来たのはたった一度あるだけ。ですから、最初はほとんど知らない、なにもわからない場所でした。でも、だからといって不安いっぱいということではなく、「どこにいってもその土地なりの楽しみを見つけられるもの」というくらいの気持ちだったので、新たにはじまる山形の暮らしはむしろ楽しみ、くらいに思っていました。
結婚してすぐ年が明け、2020年1月、自動車教習所に通いました。このトシになって教習所に通って車の運転を学び、免許をもつなんて…。まわりは若い子ばっかりでしたし、かなり新鮮な体験でしたね。
免許を取ってから、早速クルマでいろいろ行きました。冬の月山にもくりだしました。もうどこへでもひとりで運転して行きます。家からすぐ近くにあるコンビニでさえ…。おかげで東京にいる頃と比べると、ずいぶん歩かなくなくなりました。これはヤバイ、もうちょっと歩かなきゃな、ってこのごろ少し反省しています。
山形で運転することを覚えて、どこへでも好きなところへ行けるようになった…。これってすごいことだなあと感じています。好きなときに好きなように行けてしまう自由さは、なんとも言えずいいですね。こういう感覚、東京にいるときには全然なかったですし。
そういえば、小さい頃から車に乗るのは好きだったなあって、すっかり忘れていたけど、思い出しました。家族といっしょにいい景色を見に行くこともできるし、車の中は自分や家族だけのプライベートな空間なので、気も使わないし、すごくリラックスもできるし。
お金のかからない
楽しみと憩いがたくさん
実際に山形で暮らしてみて、「東京よりもずっとお金がかからないな」っていう印象があります。その理由のひとつは、やっぱり家賃が安いことじゃないでしょうか。それに、東京で賃貸暮らしすると2年に1度、更新料というお金が必要になる場合が多いですけど、山形にはそれもないですし…。
あとは、東京の場合、ちょっと気分転換とかリラックスとかしたいなあと思うと、それなりの施設に行ったりサービスを受けたりすれば結構なお金がかかるんです。でも、山形の場合はそれがすごく安い。だって身近なところにいい温泉がたくさんあって、たった数百円でゆったりとした気分になれてしまうわけで。ちょっとドライブしただけで、素敵な風景に出会うこともできますし…。気軽に、しかも安く、いい気分転換ができたり、リラックスできたりしますよね。
今になってみれば、東京っていうのは楽しむためにはいろいろとお金がかかる場所だったんだなあとわかります。逆を言えば山形は、お金をかけなくても楽しめる楽しみがいろいろあるっていうことなんでしょうね。
足りないものもあるけど
ラーメンと温泉が満たしてもくれる
山形暮らしをする前、東京にいる頃から real local 山形の記事、結構よく見ていました。とくに「仕事」の記事。山形で結婚して移住してからも、できれば働きたいと思っていたので。東京にいながらにして山形の求人を見つけるのってむずかしいですし、たとえ求人情報があったとしても条件提示だけだったり。なかなか職場の雰囲気や仕事の内容まで取材して伝えてくれているものがなかったので。その点、real local は小さなお店も丁寧に取材して紹介してくれていて、「あ、こんなお店があるんだ」とか「へぇ、この店、行ってみたいな」って思えるものがあって、参考にさせてもらいました。
山形に暮らして、まもなく2年になります。知り合いも増えました。身近なひとたちを見ていると、若い人でもフリーだったり独立して仕事していて、自分が好きなことをやっている人が多いなあという印象がありますね。
いまの日々の暮らしにすこし物足りないと思うことがあるとすれば、洋服とかキッチンツールとか靴とか雑貨とか、そういう大好きなモノに出会えるショップや場が少ないかな、というところです。ほしいものならネットで買えばいいんでしょうけど、でも、実際にモノに出会ったり見て触ったりっていうのが楽しいので…、そこはやっぱりリアルがほしいところなんです。
でも、そのぶん、山の景色に囲まれているし、ラーメン屋と温泉がすごく多いまちですよね、そこはとても気に入っているんです。夫と一緒に車で温泉へ行き、風呂上りの帰り道にちょっとラーメン屋にたち寄る、なんていうのがとてもうれしい。しかも毎回いろんなラーメン屋に連れて行ってもらえる…たまんないですね。
photo: 根岸功
text: 那須ミノル