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コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん

インタビュー

2020.10.27
コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
佐藤千弘さん

山形暮らしを楽しむ #山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは七日町のコワーキングスペース「too」を運営する佐藤千弘さんです。

山形市出身で大学進学をきっかけに東京へ。ベンチャーや大手などIT企業にてECサイトのディレクションや運営サポートに従事し、2005年に地元山形へUターン。フリーランスとして働き始めてのちに法人化、2015年にはコワーキングスペース「too」をオープンさせました。2017年からはWebエンジニア向けのイベントを毎月開催し、人と情報のネットワークを生み出す場ともなっています。

「too」を利用するたび、とても集中できる空間でカフェにいるような居心地の良さを感じます。自分が働きたいと思う環境を自らつくり、いわば自分のオフィスを街に開放している状態。そんな佐藤さんのシンプルな行動原理が、居心地の良さの理由なのかもしれません。

佐藤さんが「too」を立ち上げた経緯や込める思い、現在行われているイベント、そこから生まれる新たな動きについて、お話をうかがいました。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
4つの固定席と中央にはフリーアドレスの大きなテーブルが3つ。定額制会員のほか、ドロップインでも使える。


「お疲れさまです」が言える場所がほしかった

東京にいた頃はIT系の企業に勤めていて、日付を回ってから帰宅するのが当たり前のような毎日を送っていました。あまりに忙しすぎて人としてダメな気がして、一回リセットしようと実家に戻ることにしました。東京に住みたいと思ったらまた行けばいいやというくらいの軽い気持ちでしたが、その後結婚することになり、そのまま山形で暮らしています。

Uターンしてから一番大変だったのが仕事でした。山形で新しく仕事を探すつもりが、自分に合う仕事が見つけられず、前職のつながりから再度ECサイトのディレクションや運営サポートの業務をフリーランスとして受託するようになり、パソコンひとつで自宅で仕事をしていました。いまでいうリモートワークです。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん

ずっと自宅で仕事をしていると、どんどん人に合わない生活になってしまい、どこか別の場所で働きたいと思うようになりました。起きてそのままパソコンを広げて仕事がスタートし、仕事のやりとりは基本メール。家族以外とほとんど会話をしない日もありました。誰かと「おはようございます」「お疲れさまです」を言い合える環境がほしかったんですよね。

そこで、知り合いの会社の一角を間借りさせていただき、5年くらいお世話になったのですが、ずっと甘えるわけにもいかないので、改めて自分の働く場所や環境について考えてみることにしました。


ほしい場所がないから、自分でつくる
コワーキングスペース「too」をオープン

パソコンさえ置ければどこでも仕事ができたので、テーブルひとつとネット環境さえあればOK。山形でコワーキングスペースやシェアオフィスがないかと探したのですが、自分のイメージに近いものは見つけられませんでした。

震災以降にできた石巻や仙台、東京のコワーキングスペースを見に行き「山形にもこういう場所があったらいいのに」と思い、やってみようかと本格的に考えるようになりました。

自分のオフィスとして今まで通り働きながら、その空間を開放する。他の人も気軽に一人で来て、一人で仕事ができる場所をつくるというイメージです。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
七日町2丁目の角地の2階、窓際に伸びる樹木が目印。

そんなある日、今の物件と出会いました。以前はアパレルショップだった物件で、入ってみたら、梁が出ていて天井が高く明るくて、ここならいいなぁと思いました。当時は本町に住んでいたので、自宅から近いのも好都合。そこからパタパタっと進展し、2015年の夏にオープンしました。

最初は七日町というロケーションに迷いがありました。駐車場の問題もありますし、郊外にお店が増えている中で、どれくらいの人が七日町に来るのだろうかと。ただ、やはりここは市役所や銀行、商工会などがあり、ビジネスマンたちが近くにいる環境。「せっかく新しいことを始めるんだから山形の街中で」というアドバイスをもらったこともあり、どう転ぶかはわからないけど、やってみることにしました。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
南側の大きな窓際には、大胆に植物が配置されている。グリーンが映えて天井が高く、明るく開放的な雰囲気。


多様な働き方、小さなニーズがたくさんある

大々的なオープンイベントも行わず、ひっそりと扉を開けるようにスタートしたのですが、日中この界隈のカフェで仕事をしているフリーランスの人が次第にここを見つけて来てくれるようになりました。

そのうちに、だんだんと山形にもいろんな働き方の人がいて、多様なニーズがあることがわかってきました。

フリーランスの人もいるし、県外に本社がある会社員の人がリモートワークをしていたり、営業職の人が車の中でパソコンを広げて仕事をするのが大変という声があったり、仕事終わりに資格の勉強がしたい人や、本社が近隣県にある企業で山形を営業するにあたっての拠点がほしいなど。

ひとつひとつは小さいニーズですが、まとめるとけっこうな量です。最初は自分のように働く場所に困っている人がどれくらいいるのか、まったく見えなかったのですが、結果的にはいろんな目的を持った人が集まってくれています。

ワークショップやイベントなど、スペース貸しの相談もあります。スペース貸しは営業土曜日のみ、事前予約で受け付けていて、読書会や展示会、お花のワークショップなど、いろんな用途で使っていただいています。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
tooは「〜も」という意味。あの仕事もこの仕事も、2枚目の名刺を持ったり副業したり、働き方の多様性、人と人の繋がりが広がっていくことをイメージしたそう。


人と情報が行き交うコミュニティ「Yamagata Developers Society」

2017年からは、この場所がきっかけで「Yamagata Developers Society」というコミュニティが立ち上がりました。ここの会員さんにはプログラマーやウェブデザイナーなどIT系の方が多く、会員さんたちの方から声があがって誕生しました。山形にはプログラマー向けのイベントや勉強会があまりないので、みんなで情報交換できる場をつくり、山形のWeb界隈を一緒に盛り上げていこうと、中心になってくれている2人に引っ張ってもらいながら、私は運営者としてイベントの取りまとめやご案内をしています。

概要としては、月に1回、プログラマー、デザイナーなどのWeb開発に関わっている方を中心に、マーケター、コンサルタントなどWebに関わっている方、そしてそれらを目指す人たちが集まり、毎回2〜3人に発表してもらうスタイルです。ネタは最近気になるツールや、セキュリティ、ウェブデザイン、本、マーケティングなど、Webに関わるものならなんでもOK。なにかひとつでも発見やおもしろいネタを持って帰れたらそれでいいという、カジュアルな雰囲気のイベントです。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
Yamagata Developers Societyのmeet upイベントの様子。コロナ以降はオンラインと組み合わせて、柔軟にかたちを変えながら開催している(画像提供:佐藤さん)

参加者は毎回10〜15人くらい。常連さんだけでなく、庄内や仙台からの参加者や学生さんなどいろんな職種や地域の人も含め、毎回新しいメンバーが加わっています。ここの繋がりから転職したり、新しい仕事が生まれたり、いろんなことが自然発生しているのがおもしろいなと思いますね。

こうして人や情報が行き来することもあり、ここ数年は“よろずや”のようになっていて「こういう人材がほしいから、誰かいたら連絡ください」とか「今度お店をやるんですけど、ウェブページをつくれる人知っていますか?」など、相談を受けることもあります。


気軽に出入りができる、風通しのいい環境づくり

コロナ以降にYDSのイベントにオンラインでも参加できるようにしたことで、首都圏や他地域の参加者が増えました。地元が山形でいつかは戻りたいけど、仕事があるのかが不安だし、山形のいまの状況が全然わからないから、戻る前から山形の人と関係性を築いておきたいと話す参加者も。移住検討者の心配事をひとつ減らすことになっていたら、嬉しいことです。

このコミュニティには、任意で参加できるFacebookやSlackのグループもあり、イベントで使った資料を共有したり、仕事上でちょっと聞いてみたいことを投げかけたりといろんな活用がされています。月一のイベントだけでなく、常時コミュニティが存在しているという安心感もあるみたいです。

コワーキングスペース「too」佐藤千弘さん
コミュニティのみなさんがつくったYDSのステッカー(画像提供:佐藤さん)

新規の方でも気軽に出入りできる、風通しのいい環境づくりを常に意識しています。そのためにはイベントを継続して行うことがなにより大切。派手にやらなくてもいいから、継続できる方法を第一に考えています。

参加者の中に、こんなイベントを庄内でもやりたいという方がいるので「ぜひやってください!」と言っているんです。いつか、庄内のWeb界隈の方々と何かコラボできたら楽しそうです。

コロナ以降はますます働き方が多様化して、自宅やオフィス以外の働く場所のニーズが高まっているのを感じます。ここは山形駅から徒歩20分以上と距離がありますが、Wi-Fi環境を求めてわざわざ駅から来てくれる人もいます。

私は2つも場所が持てないのですが、駅周辺にもう1箇所くらいはコワーキングスペースがあってもいいのになと思っています。これからもっと街の中で自由に働ける場所が選べるようになるといいなと思いますね。

取材・文:中島彩

名称

コワーキングスペース「too」

URL

https://www.coworking-too.com/

https://www.facebook.com/as.works.2015/

住所

山形県山形市七日町2-7-38 カジュアルSプラザ2F

TEL

023-673-0802

営業時間

土曜日は月2回営業。カレンダーにてご確認ください。

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