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山形市双葉町「甘果」/和菓子屋

ローカル お店の情報

2021.09.26

2021年4月に山形駅西口から徒歩10分の場所に和菓子屋「甘果(かんか)」がオープンした。

山形市双葉町「甘果」/和菓子屋

製造から販売までを店主の田中美海さんがひとりで行なっている。定番商品は、店名の「甘果」が刻印された「甘果もなか」。あんこは豆から炊いて作っている。

「東京の銀座にある最中が有名なお店で修行していたこともあって、あんこにはこだわりたくって。濾した生あんの状態でも売っているんですけど、自分のお店をやるなら絶対豆から炊くと決めていました。あんこにする豆も数種類出ているので、それを食べ比べて、より良い豆を使っています。そのほうが豆の粒が揃っていて煮やすいというのもあるんです。あんこを炊くとき水分を保つために寒天を入れる場合があるんですけど、私は寒天を入れずに炊き切っちゃう。すると、甘すぎない仕上がりになるんです。砂糖も精製度が高いものを使って、甘さを調整しています」

山形市双葉町「甘果」/和菓子屋
6個入りで800円。

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それ以外には、季節に合わせた上生菓子とお干菓子を販売。夏期間にはあんみつや水羊羹があった。これからの季節は、栗を使った上生菓子が並ぶ予定だ。

「せっかく農作物が充実している山形でお店を出したので、旬のものを使って季節を感じられる和菓子を作っていけたらと思っています。今年、さくらんぼの収穫時期には、お店を休んで収穫を手伝いに行ったんです。そのときのさくらんぼ達は蜜漬けにして、お菓子になるのを待っています。将来的には市場に出せない傷物を材料として使いたい。食べてもらえなかった子たちを、おいしく蘇らせてあげられるのが私の仕事だと思っています」

山形市双葉町「甘果」/和菓子屋
木の型は、オークションサイトで購入したそう。お店を畳んだ人が出品した掘り出し物があるのだとか。

上生菓子やお干菓子には、さまざまな形があるが、そこには基礎的な昔ながらのものと職人が自ら生み出してデザインしているものと両方があるそう。

「いちから考えて作る方もいますが、私は昔からある形が好き。ありふれた形ではあるんですが、無駄がなくてきれいなんですよね。修行先で作っていた羊羹は角がピッと整っていて、それが美しかった。緻密な細工が入った練り切りよりも、そういう整った美しさにどんどん惹かれていってしまって。だからうちのお店のラインナップは少し渋いかもしれません(笑)」

山形市双葉町「甘果」/和菓子屋
「接客は好きです」。お客さんひとりひとりと丁寧にやりとりをする田中さんが印象的だ。

和菓子と聞くと年齢層が高い人が買うイメージもあるが、甘果には若い人も積極的に訪れている。それがうれしいと田中さんは話す。

「いらした若い方に『贈りものですか?』と聞いたら『自分用です』とおっしゃっていて、和菓子が受け入れられていることがうれしかったですね。Instagramでコメントを見ていたら『逆におしゃれ』とあって(笑)。逆って? とは思うんですけど、若い方の視点っておもしろいなと思いました」

田中さんが目指すのは、自分のお店だけが繁盛することではなく、街の活気を取り戻す要素になること。「人が外に出たくなるよう街づくりを手伝いたい」。そのために他県に出て、刺激を受けたあとに地元へと戻ってきたという。
「『この季節になったから、あのお店に行こう』。そう思える街の雰囲気って素敵だなって思うんです。今はまだその要素が街に足りないかもしれない。まだまだ私のお店だけでは力不足ですが、その第一歩になればいいなと思っています」

山形市双葉町「甘果」/和菓子屋

写真:伊藤美香子
取材・文:中山夏美

名称

「甘果」

URL

https://www.wagashikanka.com/

住所

山形県山形市双葉町2-4-38 双葉町中央ビル1-A号

備考

Instagram @wagashikanka

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