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福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

インタビュー

2022.03.29

福井の地域情報誌URALA編集長が、福井県内を飛び回り、気になる人にインタビューしていく企画です。第3回はリノベーションしたビルの運営を行う(株)ピンタイの高岡さんと石田さん。この春、福井県福井市の繁華街片町で、かつて服飾系専門学校だった場所がコワーキングスペースとして生まれ変わりました。オープンまでの経緯や、空き物件であった古いビルをよみがえらせるスキームについてお話を伺いました。

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

日本は戦後からスクラップアンドビルドを繰り返し、街を発展させてきました。しかし、バブル経済が破綻して以降、失われた●●年と呼ばれた年月は、20年、30年と今も尾を引き続けています。スクラップしても投資に見合うビルドができないことから、華やかなりし時代に建てられたビルたちは、スクラップされることもなく、当時の形を残したまま、手つかずの状態で街にあり続けることになりました。そしてその風景は地方において顕著になっています。

ただ、スクラップアンドビルドを良しと感じていたのは、いわゆる高度経済成長期を幼心に感じ、そこからバブル経済期をモーレツに生きてきた人の価値観。既にそこから30年以上経った現代、その価値観に疑問を呈する人が半数以上を占めるようになってきたのも事実です。

SDGsという言葉が市民権を得て、同時にリノベーションという言葉も市民権を得るようになってきました。高校生が親の若い頃の服を着て街を歩くような現象は、誰かが言った「時代は回る」もそうかもしれませんが、きっと元気だった時代の日本のアイコンたちを潜在的に求めているのかもしれません。

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

そのアイコンとは、身の回りだけではなく、町全体もそうなのかもしれません。昭和の空気に郷愁や高揚感を覚えるのは、その証ともいえるでしょう。地方においてある意味見捨てられたビルたちも、過半数を超えた人たちから見れば宝物に見えるはずです。そこに平成・令和的なスパイスを加えると、存在価値の高い“物件”に生まれ変わるのです。

しかし、実現化するには様々なハードルを超えなければなりません。それを一つずつ、一歩ずつクリアして進めたのが『株式会社ピンタイ』の高岡勇治さん、石田竜一さんです。

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 
ピンタイのお二人。高岡さん(左)と石田さん(右)

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 
かつての教室の床や備品などを残しつつ、新しい空間に生まれ変わっています

手掛けたのは福井県の繁華街・片町にある、かつて専門学校だったビル。この場所は『まちづくり福井株式会社』と『福井市』が実施したリノベーションイベント「Descove Re-Fukui」の案件となった物件の一つでした。昭和の建物でかつ福井市の中心地に存在しているので、さまざまなアイデアが出て盛り上がったのですが、実現に至りませんでした。この案件のメンターが高岡さんだったのです。自身としてはもったいないないと感じ、サテライトオフィス、シェアオフィスなどの可能性を感じていました。ここで問題だったのが、この建物の所有権が学校法人であること。さらにその学校法人に資金力がない ことでした。問題点は3つありました。

・学校法人として莫大な解体費用は出せない
・学校法人所有であるがゆえに賃貸など収益事業として活用すること が難しい
・学校法人解散をすると免税対象から外れるので税金がかかる

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 
打ち合わせや撮影などに使える場所や備品も随所に配置されています

実際にオーナー自身もこの物件に関しては足踏み状態が続いていたそうです。もちろん思い出の場所でもあるので、単純に壊したくないという心情もありました。そこで二人が出した答えが

・法人の解散と売却の準備を同時に行なう

というアイデアでした。ただ、法人解散に対して議会での審議されるのが年に2回のみ。このアイデアを思いついたのが審議会の2カ月前。大至急上記の内容をクリアできるスキームを考え、2021年10月に間に合わせました。「学校法人解散にあたっては経理的な精算も所定の手続きを踏まえて進め、結果理事長には大変感謝をされました」。建物自体に価値はつかないですが、リノベーションをすることで付加価値は発生します。その付加価値と賃貸での収入を天秤にかけたとき、いける、と判断したそうです。「片町という繁華街の強さがありますから」。

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

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屋上にはインターンの学生たちが色を塗った壁面も。新しい思い出が古いビルにまた鮮やかな色を重ね始めています

そして二人は念願のオフィスビルリノベーションに辿り着くことができたのです。「この話を進めるにあたって、『まちづくり福井株式会社』さんが間に入って諸々の諸手続きや取組みスキームの調整をして もらえたことが大きかったと思います。あとは詰将棋のように一つずつやっていっただけです。この案件でもそうでしたが、所有している人がこのスキーム(建物を壊さず追加投資して再生させる) でできたら付加価値が発生して収入の道につながります。もちろんリスクもあります。そのリスクを軽減するには物件をお任せするのがいいと思います」。

福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 
福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

きっと地方には多くの空きビルがあるはずです。リノベーションへのスキームは街の活性化とSDGsにつながる取り組みになっていくはずです。
福井市片町に新スペース「LUFF」オープン!~地方の空き物件を“収益物件”にするスキームとは? 

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思い出として教室で使われていた黒板は駐車場に掲げられています

 

屋号

LUFF

URL

https://www.luff.info/

住所

福井県福井市順化一丁目15-29