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【山形 / 連載】穏やかな休日のための音楽16

連載

2022.04.29

「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のある南米のアーティストとそのアルバムを紹介しています。今回は番外編を。

地球の反対側の遥か遠い南米の国から、わざわざから山形まで来てくれるアーティストたち。ろくに自由な時間もないハードなツアーを見ていると、せめて思い出になる観光をさせてあげたいとか、何か記念になるものをプレゼントしたい、などと考えるようになります。

観光は残念ながら時間がないと物理的に不可能なので、何か形として残るものを贈りたくて色々悩んでいました。そんな時思いついたのが家内の実家の尾花沢市銀山に窯を構える「銀山上の畑焼」の器でした。

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銀山上の畑焼は、その名の通り温泉地として名高い山形県尾花沢市銀山にあり、山形県の四大古窯(米沢成島焼・山形平清水焼・新庄東山焼)の一つで、日本最北の磁器窯として知られています。銀山温泉は成瀬巳喜男監督の映画『乱れる』の舞台としてご存知の方も多いと思います。大正ロマン溢れる温泉街の景観が人気の温泉街です。銀山上の畑焼はその銀山温泉のすぐそばにあります。

上の畑焼は、実は天保時代の10年余りで窯の火が消えてしまい、以来幻の焼き物となっていたそうです。昭和五十五年に、同市出身の伊藤瓢堂氏が長年の研究の末、地元の陶石を用いて再現したのが現在の上の畑焼で、一昨年で復興40周年を迎えました。伊藤先生のプロフィールはこちらをご覧ください。上の畑焼に特徴的なのは「三多紋」と言われる文様です。仏手柑・桃・柘榴の三つを描いたもので、「多福、多寿、子孫繁栄」を表す縁起の良いものです。厚手の白地に美しい藍色の呉須で描かれた文様が美しいですね。

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当初は完成している焼き物から我々が選んでアーティストに贈っていたのですが、実は伊藤先生も音楽がお好きであるということがわかり、何度も我々主催のコンサートに足を運んでいただきました。そしてその後は焼き物を贈るアーティストの音楽をあらかじめ聞いていただいて、その印象から焼き物を作っていただくようになりました。

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伊藤瓢堂先生とジョアン・ドナート

今回はそんな伊藤瓢堂先生に今まで聞いていただいたアーティストの中から印象に残っているアーティストのアルバムを3枚選んでいただきました。

1)カルロス・アギーレ(Carlos Aguirre) / La Musica del Agua
ピアノによる弾き語りによるアルバムです。収録された楽曲は、パラナ川~ラプラタ川流域の先人や同胞たちによるもので、その地の雄大な自然と、人々の情景を綴ったものです。優しく繊細な彼の歌声と、水面の煌めきような端正で現代的なピアノとで描き上げた作品です。

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2)トゥリッパ・ルイス(Tulipa Luiz) / Tudu Tanto
サンパウロのインディー・ポップ・シーンを代表する女性歌手。堂々たる体躯から発せられる力強くふくよかな歌声には、彼女だけの爆発的な魅力があります。弟グスタヴォのエキセントリックなギター、捻りの利いたポップなサウンドはとてもパワフルです。

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3)アンドレス・ベエウサエルト(Andres Beeuwsaert) / Dos Rios
Aca Seca Trioの鍵盤奏者で作曲家。彼の音楽の遠近感、立体感、透明感、そして音楽的資質の無垢な美しさに圧倒されます。それを形作る源は、音楽的にはフォルクローレと、様々な南米の音楽やジャズなどの記憶であり、あるいは雄大なアルゼンチンの風土とによるものでしょう。

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今回は銀山上の畑焼きの伊藤瓢堂先生に選盤していただきました。穏やかな休日にぜひ聴いてみてください、