real local 名古屋【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想 | reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想

インタビュー
2026.02.12

ビルからビルへと飛び移り、壁を駆け上がる――。パルクールと聞いて多くの人が抱くのは、スリルに満ちた派手な「スタント」のイメージではないでしょうか。今回インタビューしたのは、パルクール競技のスピード部門で元日本王者であり、世界7位(FISE広島2019)の実績を持つ木本登史(きもと たかふみ)さん。現在は株式会社スペモンの代表として、名古屋を拠点にパルクール施設「Max Attack」の運営や器具製作、大会企画、さらにはプロリーグの設立まで手掛けています。自らを「パルクール界の何でも屋さん」と称し、業界の構造そのものを変革しようと奔走する木本さん。その原点にある想いを伺いました。

スぺモンyoutube

 

木本登史さん プロフィール
名古屋出身。パルクールスピード部門、元全日本チャンピオン。世界7位。SASUKE2021や逃走中、はじめしゃちょーの動画などに出演。
<戦績>
2018年JumpJapan2018 1位
2018年WorldChaseTag2018 出場
2019年FISE WORLD SERIES HIROSHIMA 7位
2019年NINJA GAMES スピード部門 1位
2019年第1回パルクール日本選手権 スピード部門3位
2024年World Chase Tag2024日本代表

 

思いもよらなかったパルクールとの出会い

意外にも、かつての木本さんは身体が硬く、体育の柔軟性テストでは「1」の成績を取ったこともあり、器械体操には強い苦手意識を持っていたといいます。

転機は高校2年生の時。友人に誘われ訪れた名古屋・久屋大通公園で、パルクール発祥の地・フランスから来た二人の男性に出会います。日本でパルクールを10年以上続けている者など皆無に等しかった当時。木本さんは、彼らの重力から解放されたかのような動きに瞬時に魅了されました。
結局、誘ってくれた友人は現れず、言葉の通じないフランス人たちと身振り手振りで交流することに。

しかし、そこで教わったのは技術ではなく「遊び」だったと木本さんは振り返ります。
「苦になる動きがあればやめ、楽しいことばかりを追い求めていたら、いつの間にか勝手に上手くなっていました。」
外的な強制や義務ではなく、純粋な好奇心に従って「遊び」を突き詰めること。この自由な感覚が、彼をパルクールの深淵へと導いていきました。

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
楽しそうに当時のことを語ってくれる木本さん

 

デンマークで見つけた「教育としてのパルクール」

パルクールにのめり込むなかで、木本さんは業界の先行きの不透明さに問題意識を抱くようになります。

「当時、スケートボードが五輪種目に決まり、自治体が急ピッチでパーク建設を進めていました。しかし、ノウハウがないまま作られ、完成が五輪後にずれ込むような状況を目の当たりにし、パルクールも同じ流れを踏むのではないかと思ったんです」

ブームが来る前に、正しい環境整備のノウハウを学ぶ必要がある。

そう感じた木本さんは、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」制度を利用し、デンマークのオレロップ体育アカデミーへ渡ります。そこで出会ったのは、効率と規律を重んじる日本の教育観とは真逆の、「自主性を尊ぶ教育」の姿でした。現地では0歳児から90歳の高齢者までが年齢関係なくパルクールを実践し、幼稚園や難民学校、老健施設にまでプログラムが組み込まれていたのです。

特に衝撃を受けたのが、パルクールの「座学」です。週に一度、「自分にとってのパルクールとは何か」を問い直す時間が設けられていました。

・人助けのために身体を鍛える者
・思想として追求する者
・純粋なトレーニングとして向き合う者 などなど

答えは人それぞれでいい。日本の公園が「規制」で縛るのに対し、デンマークの遊具は「ここで何をする?」と問いかけてくるようでした。

「VUCAと呼ばれる先行き不透明な時代、AIが台頭する中で、自分で考え、選び取る能力を育むことは何より大切。パルクールは単なる運動ではなく、”自由であること”を学ぶ思想なんだと確信しました」

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
オレロップ体育アカデミー(出典:木本さんのinstagram)
【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
留学中の様子(出典:木本さんのinstagram)

 

アスリートから「変革者」への転換

帰国後、木本さんは全日本チャンピオン(JumpJapan 2018)の座に輝きます。競技の世界で活躍してきた木本さんですが、留学理由にもあるように元々はパルクールの業界全体に興味を持っていました。

アスリートの勝利至上主義な側面を超え、パルクールを通じて「自由とは何か?」を伝えることにより重きを置いた活動にシフトしていきます。
同時に、怪我や年齢でパルクール選手としてのキャリアが絶たれるアスリートが、指導者、映像作家、クリエイターなど、多様なキャリア選択ができる土壌を作りたいと思うようになりました。

「選手としての戦績は、パルクールを知ってもらう強力なきっかけになったと思っています。」 そう言い切る木本さんの視線は、自身の戦績よりも、パルクール業界全体へと向けられていました。

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
NINJA GAMES スピード部門 初代 王者 2019年 (出典:木本さんのinstagram)

 

パルクールをビジネスに

現在、木本さんが実践しているのは、パルクールをビジネスへと昇華させるための場作りです。

2021年にクラウドファンディングを経て設立したパルクール教室「MAX ATTACK」では、木本さんの思想を反映し、あえて月謝制ではなく「予約・都度払い制」を採用しています。

「今日はやる気がないから帰る、という選択も自由。自分で考えて決めることを尊重したいんです。経営効率を考えれば月謝制の方が安定しますが、通う方々が主体的に選択できるスタイルは崩したくありません」

さらに2026年3月からは、プロリーグ「ジャパンパルクールリーグ(JPL)」を本格始動させます。
最終決戦の地を名古屋に見据え、ライブ配信まで自社で手掛ける予定です。

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
パルクールパーク MAX ATTACK の料金表

 

最後に

インタビュー後、10分程度ですが、パルクールを木本さんに教わりました。最初は「こんなに体って動かないの!?」と思うほどでしたが、動きを何度も実践する中で、少しずつできるようになりました。短い時間ではありましたが、自分の体と向き合うことで、小さな自信が生まれたように思います。
パルクールの自由思想を少しだけ体感できたように感じました。
横断歩道を歩くことができれば、パルクールはできるそう。是非一度体験してみてはいかがでしょう。

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
木本さんが代表を務めるSUPEMONが運営する教室「マックスアタック」
【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想
マックスアタックの練習場。これらのボックスや内装もスぺモンの皆さんで手作りしたそう。

【愛知県・岐阜県】パルクールアスリート・木本登史が名古屋から仕掛ける「自由」という思想

 

備考

●木本登史さん
instagram

●スぺモン
HP
youtube

●パルクールパーク MAX ATTACK

住所:愛知県長久手市塚田1504
HP
instagram

●パルクールパークMAX ATTACK岐阜

住所:岐阜県岐阜市問屋町4丁目
HP
instagram