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【洲本】城下町の「余白」を色どる。築城500年目を迎えるまちの新しい歩き方

地域情報
2026.03.31

紀淡海峡を望むこの兵庫県淡路島にある洲本市は、かつて徳島藩における淡路国統治の中心地として栄え、今も江戸時代からの「碁盤の目」の町割りが息づく場所。2026年、洲本城跡は築城500周年という記念すべき節目を迎えました。悠久の時を刻む石垣と、迷路のように入り組んだレトロな路地。そんな歴史の集積地に今、鮮やかな新しい感性が混ざり合おうとしています。

【洲本】城下町の「余白」を色どる。築城500年目を迎えるまちの新しい歩き方

潮香る城下町。山と海に抱かれた洲本の風景

洲本を訪れたなら、まずは空を見上げてみてください。三熊山の頂に立つ「洲本城跡」は、まちの誇り。2026年に築城500周年を迎えたこの城には、全国でも珍しい「登り石垣」が残り、その重厚な佇まいはまさにまちの守り神のようです。

山を降りれば、そこにはどこか懐かしい風景が広がります。 城下町の古民家や町屋を再生した「洲本レトロこみち」。細い路地を曲がるたびに、こだわりのコーヒーの香りが漂い、昭和の面影を残す建物が今はモダンなギャラリーやショップに変わっているところも増えています。

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長屋が残る古いまちなみ。
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リノベーションした飲食店などもあちこちに生まれている。
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洲本城

さらに歩を進めれば、視界がぱっと開けます。日本の快水浴場百選にも選ばれた「大浜海水浴場」の白砂青松、そしてその先に続くのは島内最大の温泉地「洲本温泉」。山・まち・海がぎゅっと凝縮された、歩くだけで心がほどけていくような景色が洲本の魅力です。

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大浜海水浴場

「歩きたくなるまち」を、みんなでつくる

洲本市が今、観光において最も大切にしているのが「周遊」です。 古くから続く「淡路島まつり」は、8月の踊り大会、そして秋の夜空を彩る大浜海岸の花火大会と、まちが熱狂に包まれる一大イベント。行政はこの活気を一過性のものにせず、日常的な「まち歩き」へと繋げようと、官民一体となって力を注いでいます。

【洲本】城下町の「余白」を色どる。築城500年目を迎えるまちの新しい歩き方
大浜海岸の花火大会
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旧鐘紡工場の赤レンガ倉庫をリノベーションした複合観光・交流施設

「素晴らしい歴史や路地がある。でも、そこにどうやって新しい人の流れを生み出すか」。 そんな想いから、春と秋の「レトロなまち歩き」イベントや、歩行者目線のインフラ整備が進められてきました。歴史を大切にするだけでなく、今の時代の視点を積極的に取り入れる。その柔軟な姿勢が、洲本の新しいにぎわいを生んでいます。

新たな魅力:壁画(ミューラル)が変えるまちの表情

そんな「歩きたくなるまちづくり」の最新章として2026年1月に誕生したのが、市役所近くの全長50メートルに及ぶ巨大壁画(ミューラル)と、10点のアートボードです。

【洲本】城下町の「余白」を色どる。築城500年目を迎えるまちの新しい歩き方
生活道路の目の前にある、旧洲本バスターミナルの壁面に作品が描かれた。プロデュースしたのはWALL SHARE株式会社。

【洲本】城下町の「余白」を色どる。築城500年目を迎えるまちの新しい歩き方

このプロジェクトを担当された洲本市商工観光課の元木健太さんと井川拓士さんに、その舞台裏を少し伺いました。

元木さん:「洲本には素晴らしい町割りが残っていますが、一方でその魅力を多くの方に届けることができていませんでした。パリオリンピックでのブレイキンが競技として採用される様子を見て、『ストリートカルチャーだ!』と直感したんです。言葉がわからなくても直感的に楽しめるグラフィックなどのストリートカルチャーなら、海外の方も路地裏まで足を運びたくなる。それを道標にしたまち歩きを実現したかったんです」

井川さん:「2026年は築城500周年。この節目に、地元の小学生とも『共創』しました。子どもたちが挙げた『洲本の空と海の青』『人の優しさ』というキーワードを、世界的なアーティスト・TITI FREAKさんに渡し、構想してもらったんです」

元木さん:「制作中、信号待ちのドライバーが見入っていたり、近所の職人さんが『イギリスのような日常のアートができた』と喜んでくれたり。壁が塗り替えられていく10日間で、空間が息を吹き返していくのを感じました。子どもたちが自分の関わったアートを見て、まちに誇りを持ってくれる。それが一番の成果ですね」

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10点のアートボードが点在するメインストリート。一つひとつの作品を探しながら歩く、まるで『屋外美術館』のような体験が始まっています。

500年の歴史の先へ。対話から生まれる洲本の未来

ミューラルは完成しましたが、これは「きっかけ」に過ぎません。洲本市が目指すのは、観光客と住民が共に幸せになれるまちの姿です。

現在、まちでは「洲本市オーバーツーリズム未然防止協議会」が立ち上がり、地域のプレイヤーたちが本音で話し合う場が作られています。 「住民の方々と観光業の間の溝をどう埋めるか。アートという新しい変化をきっかけに、『自分たちのまちをどうしていきたいか』を語り合いたい」と元木さんは言います。

【洲本】城下町の「余白」を色どる。築城500年目を迎えるまちの新しい歩き方
洲本市は歩いてめぐれる距離に、海と山と川と歴史があるまちなのだ。

500年の歴史という重みを背負いながらも、新しい文化を面白がり、対話を絶やさない。 「このまちが好きだ」と誰もが胸を張れる温かいまちづくり。アートの道標を辿った先にあるのは、そんな洲本の人々の真っ直ぐな想いなのかもしれません。

50年後も、100年後も、美しくあり続けるために。 今、洲本のまちは、新しい色をまといながら歩み始めています。