森を守る人と、木の価値を磨く人。それぞれの景色を持ち寄って生まれるもの / 株式会社WOODLIFE × woodyman
出水市高尾野町の江内エリアで、50年以上にわたり森を守り続けてきた株式会社WOODLIFE。以前、real localでは3代目・中尾雄基さんが目指す「200年先の森づくり」を紹介しました。今回は、木工職人・上野晃宏さんとの出会いから生まれた、新たなものづくりの物語を届けます。

株式会社WOODLIFEは、出水市高尾野町の江内エリアを拠点に、50年以上にわたり山守(※1)として林業を営んできました。
林業にもさまざまなスタイルがあるなかで、**同社が目指しているのは、**今ある森を未来へつないでいく「小規模持続型の林業」です。大きな機械に頼らず、森への負担を抑えながら間伐を中心に山を育て、長く循環する森づくりに取り組んでいます。
今回話を聞いたのは、WOODLIFEの間伐材を一部活用し、オリジナルプロダクトブランド「あわいもの」を手がけるwoodyman代表・上野晃宏さんです。
2025年には、代表作「ヒノキの草木染め箸 みろく」がウッドデザイン賞を受賞。その背景には、一つのプロダクトが生まれるまでに積み重ねられた試行錯誤と、人との出会いがありました。
森を未来へつなぐ林業会社と、木の価値を磨く木工職人。それぞれが見てきた景色を持ち寄ることで、どのようなものづくりが生まれたのでしょうか。
WOODLIFE代表の中尾雄基さんと上野さんの対話を通して、森とものづくりをつなぐ物語をたどります。
(※1)山林所有者から委託を受け、山の管理や保護を行う専門家のこと。
鹿児島で木工をする意味とは?
学生時代にデザインを学び、卒業後は屋久杉を扱う会社で約8年間、木工の技術を磨いてきた上野さん。独立後は住宅の造作家具を中心に制作を続けていました。
転機となったのは、コロナ禍で起きた「ウッドショック」(※2)でした。
(※2)2021年3月頃から、住宅の柱や梁(はり)、土台などに使う木材の需給がひっ迫して木材の不足により価格が高騰し、大きな混乱が生じている状況のこと。かつてのオイルショックになぞらえて名付けられた言葉。
「僕らが使う合板やベニヤが手に入らなくなったんです。その時に初めて、自分たちが使っている材料の多くが輸入材だったことに気付きました。鹿児島で木工をしているのに、目の前には木がある。それなのに材料が手に入らない。その違和感から、”鹿児島で木工をする意味って何だろう?”と考え始めたんです」
答えを探すように調べる中で、自伐型林業を紹介するYouTube動画で中尾さんを知ったといいます。
「YouTubeで中尾さんが話している動画を見つけたんです。森を守るために必要な間伐を行いながら山を未来へつないでいく。その考え方がすごく面白くて、”一度会ってみたい”と思いました」

また、屋号であるwoodymanにも、上野さんのものづくりへの姿勢が表れています。
由来となったのは、学生時代に好きだったアメリカ・デトロイトの音楽家・Moodymann。地元に根を張り、その土地ならではの音楽をつくり続ける姿勢に惹かれたといいます。
「地元で、自分にしかできないものづくりを続けたい。その思いは今も変わっていません」
鹿児島で木工をする意味を考え始めた上野さんにとって、WOODLIFEとの出会いは、自分の足元にある木や森を見つめ直すきっかけにもなりました。

森を知る
実際にWOODLIFEが管理する江内の森を訪れた上野さんは、その景色に驚きます。
「林業というと、険しい山で重機を使って作業をするイメージでした。でも、WOODLIFEでは道がきちんと整備され、車で山の中へ入ることができたんです」
その先に広がっていたのは、想像していた森とはまったく違う景色でした。
「まるで京都の庭園のようでした。木が適度な間隔で育ち、木漏れ日が差し込み、森全体に人の手が行き届いている。森がちゃんと呼吸しているように感じました」
木工職人として木と向き合ってきた上野さんにとって、森の中で立っている木と向き合うことは初めての経験でした。

一方、中尾さんも当時をこう振り返ります。
「ちょうど私たちも間伐材を活用したプロダクトづくりに取り組みたいと思っていた時期でした。ただ、自分たちには作る技術やセンスがない。だから、一緒につくれる人を探していたんです。そんな時に、上野さんご夫妻が江内まで足を運んでくださいました。お二人と話しているうちに、”この人たちと何かつくりたい”と自然に思えたんです」
こうして、WOODLIFEとwoodymanの新しい取り組みが始まったのです。

「あわいもの」がつないだ森と暮らし
上野さんが手がけるブランド「あわいもの」は、造作家具づくりで生まれる端材や未利用材を生かすことから始まりました。
「あわい」とは、日本の古い言葉で「間」を意味します。
外と内をつなぐ縁側のように、端材と暮らし、森と人、人と人をつなぐ存在になれたら。そんな思いが、このブランド名には込められています。
何かを作るために新しく木を仕入れるのではなく、目の前にある木から何が生み出せるのかを考えるものづくりです。

そんな「あわいもの」の考え方と重なったのが、WOODLIFEの森づくりでした。
上野さんは、それまで屋久杉を扱う銘木の世界で木工を学んできました。銘木とは、希少価値のある木材を生かし、その美しさや存在感を価値として届ける木材のことをいいます。
一方で、WOODLIFEが向き合っていたのは、森を健全に保つために必要な「間伐材」でした。
「中尾さんたちと出会って初めて知ったのは、価値のある木を選んで伐るのではなく、森を育てるために必要な木を伐っているということでした。だったら、その木にも新しい価値を生み出せたら意味があると思ったんです。建材や燃料として使われるだけではなく、暮らしの中で長く使われる道具になれば、森を守ることにもつながるんじゃないかと考えました」

「みろく」に込めた、木への向き合い方
WOODLIFEとの出会いから生まれたものづくり。その象徴ともいえるのが、「ヒノキの草木染め箸 みろく」です。
一本の箸が完成するまでには、数え切れないほどの試作が重ねられました。
最初は一般的な四角い形状から始まりましたが、「もっと持ちやすくならないか」「食卓に自然になじむ形はないか」と何度も見直しを繰り返します。
たどり着いたのが、手になじみやすい六角形を基調とした形でした。
さらに、ヒノキ本来の木目を生かしながら彩りを添えるため、草木染めを採用。木を塗りつぶすのではなく、素材そのものの表情を残しながら仕上げることにもこだわりました。
そうした試行錯誤を積み重ねながら、一つのプロダクトが形になっていきました。




その姿勢は、2025年のウッドデザイン賞(※3)という形でも評価されました。
(※3)ウッドデザイン賞とは、木の良さや価値をデザインの力で再構築し、暮らしや社会を豊かにする建築、空間、製品、活動、仕組み、研究などを幅広く募集・評価・表彰する顕彰制度です。木材の利用促進と持続可能な社会の実現を目的としています。
評価されたのは、商品のデザインだけではありません。
木という素材にどう向き合い、森とどのようにつながるものづくりを目指しているのか。その姿勢や取り組みそのものにも光が当てられました。
「賞をいただけたことは本当に励みになりました。でも、それはゴールではありません。ここからどう届けていくか、どう続けていくかが大切だと思っています」

木と向き合う者同士だからこそ、新しい価値に気付く
上野さんにとって、WOODLIFEとの出会いは、木だけではなく、その先にある森との向き合い方も変えていきました。
「木工をやっていても、山に立っている木を見て”これは杉””これはヒノキ”と見分けることはできませんでした。でも、中尾さんたちは山に立っている木を見ただけで、それが何の木なのかすぐに分かるんです。一方で、私たちは製材された木材や木口を見れば、樹種を見分けることができます。同じ木でも、見ている世界がまったく違うことも中尾さんたちと出会って知りました」
中尾さんの木の見方にも変化がありました。
「これまでは建材にならず、燃料用(バイオマス)として活用していた木にも”別の使い道があるかもしれない”と思うようになりました」
曲がっていたり、節が多かったりして建材には向かない木。これまでは燃料として活用されることが一般的だった木にも、新しい可能性があるかもしれない。
木との関わり方は違っても、木と向き合う者同士だからこそ気付けることがあります。
森で木を見続けてきた人と、木を暮らしの道具へと生かしてきた人。それぞれの視点が重なったことで、お互いが見ていた世界は少しずつ広がっていきました。

それぞれの景色を持ち寄ることで、生まれるもの
最後に、これからのものづくりについて尋ねると、上野さんはこう話してくれました。
「長年培ってきた技術が、誰かの役に立つものづくりにつながってほしいと思っています。昔からある技術を大切にしながらも、今の暮らしに合わせて工夫していく。そして、自分たちだけで完結するのではなく、WOODLIFEのように違う分野の人たちと力を合わせることで、新しいものづくりが生まれていくと思うんです」
異なる仕事や役割だからこそ、それぞれに見えている景色があります。
その景色を持ち寄ることで、新しいものづくりが生まれ、森を未来へつなぐ新たな循環が育まれていくのです。
WOODLIFEが目指しているのは、一本一本の木と丁寧に向き合い、その先にある森の未来を育てていくことです。
そして、その想いは林業だけで完結するものでもありません。
森を守る人がいる。
木の価値を磨く人がいる。
そのほかにも、それぞれの立場から森に関わる人たちがいます。
一人ひとりが見ている景色を持ち寄ることで、これまでになかった木の生かし方や、ものづくりの可能性が生まれていく。
今回の対話から見えてきたのは、森と暮らしの間に新しいつながりをつくるのは、異なる分野で木と向き合う人たちの視点と技術なのかもしれない、ということでした。

| 屋号 | 株式会社WOODLIFE |
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| 備考 | 株式会社WOODLIFEについて 関連記事:https://www.reallocal.jp/125938 上野晃宏さん・woodymanについて 今回ご紹介したwoodyman代表・上野晃宏さんの活動は、こちらからご覧いただけます。 あわいもの(オリジナルプロダクト) woodyman(オーダーメイド家具・木工製作) |















