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【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

インタビュー

2023.02.14

甲府のまちのおみそ屋さん五味醤油

山梨にいて五味醤油の名前を知らない人はいないかもしれません。明治元年創業の五味醤油。味噌作りのワークショップは年間100回程開催し、学校の食育事業での一貫とした出張教室、プライベートレッスンだけでなく、味噌作りの道具の貸し出しも行っていて誰でも味噌作り教室を開催もできます。筆者自身も毎年のように味噌作りを楽しみ、甲州味噌作りのワークショップも開くほどの甲州味噌ファンです。米麹と麦麹をだいたい半々にミックスさせた合わせ味噌はしつこくなく、まろやかな味で毎日の暮らしに欠かせない素材となっています。

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

▲県内各地で開かれる味噌作り教室 味噌作りの道具は五味醤油から借りることができます

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

味噌作りの道具は五味醤油から借りることができます

誰もが楽しく甲州味噌を作れるようになる。甲州の味噌文化を根付かせ、現在の発酵ブームの火付け役とも言える五味醤油六代目の五味仁さんにお話を伺いました。

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

「五味醤油」六代目 五味仁さん 手前みそづくり教室が開かれる”KANENTE”にて

発酵デザイナー小倉ヒラクと五味醤油 そして「手前みそのうた」が誕生する

大学で発酵と経営の勉強をしていましたが家業を継ぐんだという意識はあまりなかったですね。卒業後は普通に就職をしてタイにいました。タイから帰ってきて実家で働き始めた頃に、発酵デザイナーの小倉ヒラクさんとの出会いました。ヒラクさんとの出会いもタイミングで、元々は妹の洋子が勤めていた会社の上司でした。最初は妹の上司、という事で気を使っていたのですが、話してみたらめちゃめちゃ気が合って。気が付いたら僕のおばあさんの家で家族と一緒に朝ご飯を食べてました。その後ヒラクさんは会社を辞めフリーになったのですが、仕事が無くて暇だったからその当時はよくうちの実家に居候していていたんです(笑)

そうしているうちに五味醤油ののWEBと会社案内のデザインを担当してくれることになりました。

誰もが味噌作りを簡単にわかる、そんなものを作りたい、手前みそのうたはじゃあ作ってみるか~というノリで始まりました。そこでもタイミングが良かったんです。友人のシンガーに手前みそのうたを作ろうと持ち掛けたらすぐにオッケーと(笑)

「みそ みそみそ 手前みそっ、ウチの数だけ味噌の味、みそみそみそみそウチで作ろうウチの味噌~♬」

踊りながらお味噌の作り方がわかってしまう。そして子どもから大人までが口ずさむ、そんな歌が出来上がりました。その翌年には絵本化のお話を頂いて、全てが本当にタイミングが良かった。

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

お互い忙しくなった今も小倉ヒラクさんとの付き合いは変わらない

ひとつだけの看板を背負わなくてもいいと思えました

仲良くしている勝沼のぶどう農家マルサン葡萄酒の若尾さんとの出会いが大きかったです。若尾さんの奥さんのご実家は300年続く果樹園で実家を継ぐと決まった時には帰り道が灰色に見えたそうです。僕自身もどこかしらで家業を継ぐだろうなとは思っていたけど当時の自分と家業の親和性がいまいち見いだせていなかったんです。若尾さんは元々音楽の道に進みたくて、でも途中で諦めて農家になりました。だけど、好きなものはやっぱり好き。だから仕事は農家だけど、好きな音楽も続けていて毎週ライブハウスで練習もしてるし、毎年クリスマスには自ら希望してDJをしています。そんな若尾さんの影響で僕自身も自分の趣味や楽しいと思ったことを家業に出していってもいいんじゃないかと思っています。

YBSのラジオ番組「発酵兄弟のCOZY TALK」(毎週土曜日16:30~16:45  YBS山梨放送ラジオ 左記URLからアーカイブで過去の放送を聞くことできるので是非っ)は僕の企画でスタートしました。

「発酵兄妹」こと妹の洋子と小倉ヒラクさんの三人組による、ちょっぴり笑える発酵ラジオ番組です。「今日この後収録なのでゲストでどうですか」ってそんなノリで毎回いろんなゲストの方に来て頂いています。味噌屋とは無縁のように思えるけれど、五味醤油という名前であれば、洋服屋でも不動産屋さんでもいいと思っているから、やるべきこと(仕事)もやりたいこと(趣味)も一緒。いろんなところに興味があると思いがけない繋がりが出来て、そこから新しいことが始まっていくんですよね。

生まれ育った甲府のまち

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん
僕が生まれ育った甲府は山梨県の県庁所在地ですが甲府のドーナツ化は深刻で、駅周辺はシャッター街が広がり、甲府駅から徒歩圏内の母校富士川小学校は2011年に閉校、隣接する小学校と併合してしまいました。友人でも実家や土地が甲府にあるのにわざわざ郊外の分譲地を買って苦労しながら甲府に通勤する人も多いです。新築じゃなきゃいけない、というステレオタイプの考え方がやっぱり今も主流であって、もっと違うところから考えてみたり、古いものでも丁寧に直せばまた使えるということをもっといろんな人に知ってほしい。古いものを今に置き換えて考えてみることは、案外おもしろかったり良いものができたりすると思うんですけどね。

別館taneと変わろうとする甲府のまち

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

五味醤油の敷地内にある別館tane。日常に寄りそうコーヒーを提供しているAKITOCOFFEEの焙煎所兼カフェになっている

五味醤油の敷地内にある別館taneは2019年6月に甲府駅北口のコーヒー店AKITOCOFFEEの焙煎所と喫茶スペースとしてオープンしました。taneは元々醤油の製造所だったところ。醤油の製造が中止されてからは鬱蒼とした物置となってい場所でした。AKITOCOFFEEの店主あきとさんがたまたま焙煎所を探しているという話から、「じゃあうちに使ってない蔵があるからどう?」という話になりました。不安要素はたくさんあったけど、20代のあきとさんのリスクを恐れないエネルギーに純粋に応援したいと思いました。僕自身こんな場所があったらいいなと思ったので迷いはありませんでした。

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

五味醤油のある身延線金手駅周辺は古くからの道や商店だった建物が残る歴史あるエリアで空き家や空き地も多く寂しさを感じてたのですが、お店の斜め向かいに長年使われなかった空き家があったのですが、昨年解体されてモデルハウスが建てられました。手掛けたのは甲府にある大正後期創業の老舗の工務店丸正渡邊工務所。丸正さんとは親交があったこともあって俊工時には一緒に近所に挨拶周りをしました。知らない人が挨拶に行くより顔を知っている人が一緒に行ったら安心するだろうと思って。もともと使われていなかったものが新しいものになるってなんか良いじゃないですか。近所の人も何も言わないけど、絶対いいって思ってるはずです。

何かことを新しく始める時、結末はあまり考えない、とりあえずやってみる、損得より楽しそうだったらやってみることが大事だと思っています。

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

こうなったらみんな幸せだよな。

老舗味噌屋の枠に捕らわれず、みんなの幸せを形にする五味さん。五味さんの今後の活動はこちら。

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん

こうふはっこうマルシェ:2023年3月4日(土)10:00~16:00 会場:甲府駅北口 アシストエンジニアリング よっちゃばれ広場

【山梨県甲府市】インタビュー/「出会いはいつも何かを始めるタイミングだった」明治元年創業五味醤油6代目 五味仁さん 

NHK公開番組「再発見!やまなしの発酵」2023年2月26日(日)開場13:30^開演14:00終演16:00 @NHK甲府放送局ハートプラザ  観覧自由(入場無料)

本文でも紹介させて頂いた発酵デザイナーの小倉ヒラク氏も登場する貴重な機会。事前の申し込みは不要です。直接、会場にお立ち寄りください。

文・写真:豊岡翠
文・取材:名取花

屋号

五味醬油株式会社 屋号「やまごみそ」

URL

https://yamagomiso.com/

住所

山梨県甲府市城東1丁目15−10

備考
【営業時間】 10:00~17:00
【定休日】 日曜、祝日(お盆、年末年始)
【電話】 055-233-3661
【FAX】  055-232-5332
【E-Mail】  info@yamagomiso.com
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