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縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉

インタビュー

2023.05.29
縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉
株式会社とみひろ常務取締役 冨田泰弘さん。

移住した先で、どんな仕事に就くのか。それは、いつか移住したいと望む人にとって乗り越えなければならないハードルのひとつ。ローカルであるほど就職先の選択肢は限られるし、それまで自分が就いていた職業や培ってきたスキルが新しいまちにフィットしないリスクだってある。「ここに暮らしたい」と望んだまちでも、理想的な仕事環境かはわからない。逆を言えば、仕事が先に決まるのなら移住はぐっとスムーズになるのかもしれない。

さて、山形市に本拠地を置く株式会社とみひろは、社員の約6割は県外出身者であるという、山形への移住者を積極的に受け入れている会社のひとつだ。創業から440年を超える、超のつくほどの老舗企業。中核である着物事業の枠を超え、振袖レンタル事業、フォトスタジオ事業、結婚式事業、さらには地域創生事業、養蚕事業や農業など、今やその事業領域は多岐にわたる。全国でも他に類を見ないユニークな進化を続ける企業なのだ。そんなとみひろは、チャレンジングな姿勢を持つ多様な人材を常に求めている。

移住者と、とみひろ。両者に共通するのは「挑戦心」である。
自身も東京やロンドンなど他都市での暮らしや仕事をしてきたのちに地元山形にUターンした移住者である株式会社とみひろ常務取締役である冨田泰弘さんに、とみひろの現在について、山形で働くことの可能性について、迎え入れたい人材についてお話を伺った。

縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉
地域創生事業の一環として立ち上げた、山形県白鷹町にあるリトリート宿泊施設「NIPPONIA 白鷹源内邸」にて。ここはとみひろと協力企業とが共同で立ち上げた新会社で運営している。

===ご自身も山形市にUターンした移住者であるわけですが、あらためて戻って暮らし働いてみて、山形という土地の可能性をどのように感じていらっしゃいますか。

冨田:わたしは山形市に生まれ育ち、大学進学を機に東京に出ました。大学卒業後はイギリスの大学院に留学し、そののちに日本の総合商社に入社、繊維部門でキャリアを積んできました。2017年に山形市に戻り、家業に関わるようになりました。

Uターンして6年目を迎えたいま、山形という土地の魅力を改めて見つめようとするとき、もちろん食とか酒とか具体的なものがさまざま思い浮かびますが、一番強く感じるのは「とにかく山形にはすごく伸びしろがある」ということです。山形に長く暮らしていらっしゃる方たちの目にはあたりまえすぎて見えてこないものや、「これがいったい何か?」と思わず首をひねってしまうような日常の何気ないものでも、外の目から見ればすごく大きな価値があるようなものが本当にたくさん眠っているんです。

とみひろは今、さまざまな事業にチャレンジしていますし、オンリーワンの企業としてますます磨きをかけていかなければならない途上にありますが、その一方で、地域に根付いた山形発の企業であることや着物を中核とした企業であるという原点はこれからも変わることがないでしょう。ですからその意味では、「外の視点から見た山形の良さ」を再認識するというのは非常に重要なプロセスであり、それをしっかりと会社や事業の中に取り込んでいくということが会社の成長にとって必要不可欠なことです。だからこそ、外からの視点を持っている人材を大事にしたいと考えています。

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===とみひろという会社の独自性や強みについて、そしてこれから目指すところについて、あらためて教えてください。

冨田:とみひろは着物業界では日本で唯一、自ら養蚕して原料となる絹糸をつくることから、着物の企画デザイン、染め織り、販売、仕立てまで自社で一貫して行なっている着物SPA(製造小売)です。他にはないこのような特殊な形態にたどり着いたのはひとえに山形の織物を広めたい、地域に根付いた文化であるとか養蚕や染織や和裁といった技術を絶やすことなく持続可能なかたちで次代に繋いでいきたい、という強い想いによるもの。そしてまた、それを可能にしてくれるようなさまざまな「ご縁」があったからです。

わたしたちの会社のロゴには「五」の文字が記されていますが、これは「人の縁、地の縁、時の縁、育縁(縁を育てる)、殖縁(縁をふやす)」という五つの「縁」を表しています。わたしたちが着物という枠組みに捉われることなく、呉服屋プロデュースによる結婚式場の運営であるとか、着物×カフェの複合店舗の運営であるとか、不動産のリーシングや宿泊施設の運営などをも含めた地域創生事業といったものに積極的に手を伸ばしチャレンジし続けているのも、そうした「縁」を大切にして育んできた結果なのです。

わたしたちはこれからもさまざまなご縁を大切にしながら山形の魅力を再発見し、その価値を伝え、オンリーワンの企業づくりをしていきたいと考えています。さまざまなバックグラウンドや知識や感性などを持つ多様な人材の力を結集してさらにまた新しい事業を創造しつつ、新しいとみひろをリデザインしていきたいのです。

縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉
反物の芯にあるとみひろのロゴの「五」の文字が示すのは、5つの縁を大切するという企業姿勢。

縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉

縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉
とみひろの養蚕事業は2015年から。国内の養蚕農家が著しく減少する中、「自分たちの手でいちから着物をつくりたい」という想いからスタートした。写真は2023年春先の桑畑の風景。長い冬が明けようやく春めいたばかりの中、着物の染織職人たち自ら草刈り作業に励んでいた。

===とみひろという会社は山形への移住者を積極的に受け入れる企業の代表であると思いますが、実際にどういうスキルの人材を求めたいとお考えでしょうか。

冨田:着物の染織職人、結婚式場のウェディングプランナー、地域振興やまちづくりの仕事、そして様々な事業に取組むこのとみひろという会社を支えるコーポレートスタッフ…、わたしたちと一緒にそうした仕事に従事してくださる人材を求めています。それらすべてに共通するのは、そのどれもが「新しいことにどんどん挑んでいく仕事」だということです。

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例えばウェディングプランナーひとつをとってみても、わたしたちが求めているのはオンリーワンの結婚式を実現してくれる方。一般的にイメージされるような、つまり仕事が分業化された上でのウェティングプランナーとは違う部分もあろうと思いますが、当社の場合は、衣装やサービスや司会に至るすべてに携わりながらどこまでもお客様に寄り添い、たったひとつだけのスペシャルな結婚式をお客様のためにつくりあげてくださるような方です。そして、そんな結婚式を挙げたいがためにお客さまが山形を目掛けて全国からやって来る…、そんなストーリーをわたしたちは思い描いているのです。もちろん、その実現のための仕事には困難も伴うでしょうが、同時にまた他にはない面白さもあるはず。それを楽しんでいただけるようなマインドの方を求めたいのです。

その意味では専門的な知識やスキルを持っているかどうかということよりも、新しいビジネスや仕事にどんどん取り組んでみたいという意欲や挑戦心を持っているかどうか。そしてまた、さまざまなことに興味を持ち、気配りや想像力を持って行動できる方かどうか、ということの方がずっと大事だと思います。

社員の8割は女性で、女性管理職も非常に多い会社です。これからますます一人ひとりのライフステージに合わせて働きやすい職場づくりをしたいですし、移住者の方のご経験、スキル、個性が発揮できる環境、そして共により良い会社づくりをみんなで一緒にやっていただきたいと考えています。

そのためにも、これからもチャレンジングな姿勢をもった移住者の方たちと出会える機会を創出していきたいですし、そういう出会いや縁のひとつひとつをぜひ大切にしていきたい、と考えています。

縁を大切に。山形から常に新しい挑戦を〈株式会社とみひろ 冨田泰弘さん〉

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INFORMATION
採用などの問合わせ先:
株式会社とみひろ
https://tomihiro.co.jp
023-635-1212

関連情報:やまがたインターン/株式会社とみひろ(経営者インタビュー社員インタビュー

Text  那須ミノル(real local Yamagata)
Photo 布施果歩(strobelight