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【鹿児島県大崎町】 一人ひとりの「やりたい」を受け止め、誰もが地域の担い手になれるまちづくりを / ふむふむ

インタビュー
2025.08.12

大崎町の元中央薬局跡地を自分たちの手で改修し、地域住民や移住者などが交流したり、ともに新しいことを企画したりする、コワーキングと夜カフェを兼ね備えた交流拠点「ふむふむ」。2024年6月にオープンし、1年が経過しました。こちらを運営する「合同会社うつろひ」の藤田香澄さんにオープンに至った背景や、この1年を通して見えてきたことなどについてお話を聞きました。

【鹿児島県大崎町】 一人ひとりの「やりたい」を受け止め、誰もが地域の担い手になれるまちづくりを / ふむふむ
ふむふむ ロゴマーク

自分で考え、問題解決のため自主的に動いていくこと

長野県で生まれ、幼少期を南太平洋の小さな島々(ツバル、キリバス、フィジー)で過ごした香澄さん。特にツバルは海抜高度が高いところでも5m程しかなく、気候変動による海面上昇の影響を真っ先に受けると言われ、さらに、ゴミ問題にも直面していたといいます。

“このままでは海面上昇で国土が沈む前に、ゴミに埋もれて人が暮らせなくなってしまうのではないか。”

そこから、発展途上国のゴミ問題を解決したいという想いが芽生え、高校時代には卒業研究でツバルを取り上げ、それが自身の人生に大きな影響を与えたのです。

「実際に現地調査を行うと、ツバルの人々が想像以上の問題に直面していることを知り、ツバルの島々が住めなくなってしまうのではないかというリスクを感じました。現実にある課題を調べ、自分の考えをまとめ、発表するという経験は、私が環境に関心を向けるようになったきっかけの一つです。」

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ふむふむ 藤田香澄さん

大学院時代にはフィールドワークプログラムで青森県十和田市へ1年間通い、地域の伝統や取り組みを学びつつ、抱える実情も知っていきます。

十和田市では過疎化や観光客減少といった問題に対し、行政や地域が一緒になり解決しようと取り組みをする姿も目にしたそうです。

「地域の抱える問題に対し、自分たちで課題解決策を考え、生業をつくっていくことはとても素敵なことだなと感じました。同時に、私も事業者側になってプロジェクトを遂行したいと思うようになり、地域活性化事業などに取り組む企業へ就職することにしました。」

就職から数年経ち、キャリアチェンジを考えたタイミングで、大崎町でサーキュラーエコノミーの構築を目指す会社の求人募集を見つけ、大崎町への移住を決意します。

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写真提供:藤田香澄 ツバルの中学生と(幼少期)
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写真提供:藤田香澄 高校時代にツバルに現地調査に行った際の様子
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写真提供:藤田香澄 青森県では十和田市を中心にフィールドワークを行ったという

相手の考えを受け止め、町民の「やりたい」を引き出すために

大崎町は人口約12,000人。住民・企業・行政の協働による、焼却炉に頼らない低コストな廃棄物処理システム「大崎リサイクルシステム」を1998年より20年以上にわたり続けてきた町で、世界からも注目されています。またインドネシアの自治体にこの取り組みを展開するなど、さらに広がりを見せています。

大崎町から世界に通ずる仕事をしたいという想いで移住し、多くの気づきと学びを得ながら、様々なことに仕事を通してチャレンジしていく反面、その中でも感じる課題もあったそうです。

「大崎町は集落など地縁単位での自治活動は残っていますが、地縁や世代を超えたコミュニティや活動が足りていないのではと感じたんです。さらに異なる意見を交わす文化が根づいていないのではないか。違いに気づき、認め合う風土がまだ十分に醸成されていないのではないかとも感じるようにもなりました。」

次第に、町民の「やりたい」を行政とも連携しながら、それぞれが自分たちで叶えていく、ボトムアップ型の取り組みの重要性を意識するようになるのです。

“全員の同意を得ることは難しいかもしれない。でも、対話の場を設けることでお互いへの関心や理解が進み、納得感を持ってこの町に暮らす人が増えたら…。”

そんな想いがふつふつと芽生えてきたタイミングで、大崎町役場近くにある旧中央薬局と出会い、活用することになります。

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写真提供:藤田香澄 かつての中央薬局 外観
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写真提供:藤田香澄 改修前の旧中央薬局 内観

場所をシェア運営をする「KOME kaffee」とともに改修を少しずつ進めることに。そして、2024年6月に誕生したのが交流拠点「ふむふむ」です。

どうして「ふむふむ」なのか。その由来を聞きました。

「“ふむふむ”の名前は、様々な人の考えや想いを“ふむふむ”と受け入れたり、一人で“ふむふむ”と思考を深めたりする場になることを願って名付けました。また“企む”という意味も込めています。一人やみんなで企み、その過程で自分の気持ちや相手の意見をしっかり受け止めることが大事なのではないかと考えました。」

「イラストレーター中原みおさんにお願いしてつくっていただいたロゴマークは”うずうず”や”くるくる変わる”、”モヤモヤ”など、10通りの気持ちや人の個性を表しています。“いろんな人がいてもいい””相手の考えを受け止め、汲み取っていきたい”という私たちの想いを表現してくれました。」

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写真提供:藤田香澄 改修中の様子 KOME kaffee、大崎町の仲間たちと改修を進めたそう
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写真提供:藤田香澄 ふむふむ・オープニングイベント トークイベントと交流会も含め開催された
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ふむふむ外観 町民が行き交う町役場に近くに位置する
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ふむふむ内観 元々あった雰囲気も残しつつ、どの世代も過ごしやすい空間になっている

一人ひとりが「じぶんごと」として物事に取り組んでいく風土を

オープン後、1F のレンタルスペースを町内の企業や地域団体などが交流会や会議といったカタチで使用するケースが増えてきたそうです。また、コワーキングや夜カフェの利用者同士が出会い、新しい動きが生まれたこともあったのだとか。運営する香澄さん自身もそれまで出会うことのなかった町の人と繋がる機会が増えたといいます。

そんな「ふむふむ」を運営する中で大事にしていることを聞きました。

「何か始めたい・チャレンジしたい人がいたら、どんなに小さくても1回目の開催のハードルを下げて、まずはカタチにすることをまず大事にしています。あとは、あることが好きな人が一人でもいれば、こんな小さな街でも他にも好きな人は必ずいると考えるようにしています。食のイベントや交流会、学びの場、ボードゲームなど、切り口はバラバラですが誰か一人の興味関心から始めることによって、”実は私もそれ好きなんです”という人を常に探しています。」

そんな町民の”やってみたい”から始まったのが、「みんなでよるごはん」。「ふたりでよるごはんを食べるのは寂しい〜。」というご自身のお子さんの声から企画されました。、とりあえず1回ふむふむでやってみましたが、その後、各集落の公民館を回られるようになり、世代や職種を超えた人が集う時間になっているのだとか。

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写真提供:藤田香澄 「やりたい」の声があれば、まずは1回目の開催をカタチにするため、すぐにイベントフライヤーの作成をする、もしくは促すのだそう。この時は主催の智子さんが全て準備されました。
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写真提供:藤田香澄 みんなでよるごはんの様子 0歳児から50代まで集い、新しい繋がりがたくさん生まれたとのこと
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写真提供:藤田香澄 ふむふむで毎月開催されている「ふむふむ ENGLISH CAFÉ」 日本語と英語を織り交ぜながら楽しい会話が毎回のように広がるという

「ふむふむ」を通して、様々な繋がりや動きが生まれている中でも、香澄さんが目指す姿はさらにその先にあるといいます。

「“この場所が”一歩踏み出しやすいということを目指しているわけではありません。大事なのは、小さなことでも、この町のどこでも楽しくチャレンジできる土壌をつくっていくことなんです。」

「町の未来をつくるには一人ではつくれないですし、決まった人たちだけがつくるわけでもありません。この町に住む一人ひとりが“じぶんごと”で取り組んで初めて変わっていくんだと思います。」

そのためにふらっと立ち寄れ、自然発生的にお互いの違いを認め合える対話が起きる場所を育めるように、まずは自分の手の届く世界からその風土を醸成しているように感じます。

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写真提供:藤田香澄 関西出身大崎在住の方とのゆるいお話の中で、企画されたたこ焼きナイト
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写真提供:藤田香澄 大崎町内の米農家とともに取り組む「おおさきマイ田んぼプロジェクト」 田植え体験を初夏に行った 8月末に収穫予定
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写真提供:藤田香澄 おおさき歴史探学会と開催した「ふむふむまち歩き」 普段知ることのできない町の歴史的経緯をユーモアを交えて語ってくれたという

興味関心から誰もが地域の担い手になれるように

2025年6月からは「ふむふむ」2Fを活用し「本でつながる書斎」の運営を町内の移住者仲間でもある森本和子さんとともに始めたといいます。読書だけでなく、仕事や勉強にも利用できるそう。設置している本棚には誰かの本が並び、手に取った人は付箋や書き込みなどを通じて言葉を残すことができる仕組みにもなっています。

森本さんに「本でつながる書斎」の運営に携わった背景などを聞きました。

「昨年、大崎町へ引っ越し、家以外の居場所が一つ欲しいなと思っていて、そのタイミングで香澄さんと出会いました。まちに本をゆっくり読めて、本を通じて人と出会ったり、集まれる自分にとって居心地がいい場所をつくりたいという思いから、本でつながる書斎は誕生しました。」

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「本でつながる書斎」を香澄さんとともに運営する森本和子さん

2025年6月から運営を始め、本棚会員やコワーキング利用、読書会を通して、少しずつ新しいつながりが生まれてきているのだとか。

 「運営前には、普段接点のない職人さんともお話させてもらうこともあり、この場所をきっかけに助けてもらえる人がいっぱいいると思えたことが暮らしやすさにつながっていると思います。」

 「まだまだ課題はありますが、たとえば、本棚会員であれば、大崎町だけでなく、私たちが今まで訪れた土地の人とゆるくつながっていける仕組みをつくりたいと考えています。積極的交流というよりは、静かなつながりを大事に。何となく同じ感覚の人が近くにいると感じれる空間にしていきたいです。」

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2025年6月から始めた「本でつながる書斎」 会員制となってる 月額会員は365日いつでも書斎を利用できる 1日だけ利用できるプランもあるとのこと
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コーヒーとモーニングとただただ、本を読む会の一コマ
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取材日は読書会を開催 参加者は思い思いの本を紹介し合い、交流した
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本棚会員制度があり、好きな本を5冊贈ることで、3ヶ月後に読んだ人の書き込みや付箋が貼ってある本が1冊返ってくるシステムになっている

「ふむふむ」のこれまでの変遷を辿り、少しずつ少しずつ、主体的な「やりたい」の灯火が生まれてきているように感じます。

 最後に、今後の展望について香澄さんに聞きました。

 「ふむふむを通して、まちづくりって、まちに住んでいる一人ひとりの興味関心だったり課題を明確にしてアクションを起こすことだと感じました。それが結果的に他に誰かを救うことにつながるかもしれないですし、大事にしたい考え方だと思いました。」

「これまで料理やボードゲーム、本などといった切り口でコミュニティの兆しが見えてきました。だからこそ、今後も、一人ひとりとゆっくり向き合いながら、誰もが思いを話せる場を育んでいきたいです。その先に一人の“やりたい”や“好き”から誰もが地域の担い手になれる風土が醸成されていったら嬉しいです。」

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屋号

 ふむふむ

URL

https://www.instagram.com/humuhumu_osaki/

住所

鹿児島県曽於郡大崎町仮宿1091-1

備考

<ふむふむ営業日>※2025年8月時点

・コワーキング

・夜カフェ

・各種イベント 不定期

上記については「ふむふむ」インスタグラムをご確認ください。

<本でつながる書斎 インスタグラム>

https://www.instagram.com/shosai_osaki/

※1階のシェア運営をしている、KOME kaffeeの営業日は以下のインスタグラムよりご確認ください。

https://www.instagram.com/kome_kaffee/