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「マイルーツ、マイ山形」#2 相棒を見つける

地域情報
2025.12.23

ふと、無性に山形を恋しく思うことがあります。
そんなときはだいたいお腹が減っているときで、行きつけだったお店の味が恋しいときです。
そして、そんなお店の味を思い出す時は、そこで働いていた方の顔や、街の風景も、一緒に浮かんできます。

私は山形市の七日町にある会社で働いていました。
基本的にお昼ごはんは会社から歩いていける範囲のお店に食べに行っていて、それが平日の楽しみであり活力でした。
今日は、ラーメンか、焼肉ランチか、そばか、天丼か、喫茶店の日替わりランチか、市役所の食堂か、野菜がたくさん食べられるランチプレートか、お肉屋さんのお弁当にするか、はたまたちょっと贅沢にデザート付きのパスタランチか…
午前中の心の片隅で逡巡しながら、12時になると心を決めて街へ出かけます。

思い出深いお店のひとつが、「鬼がらし」。
当時のわたしの体は、鬼がらしの「納豆ラーメン」でできていたと言っても過言ではありません。
納豆ラーメンは、味噌ベースのスープと、ひきわり納豆、ニラ、長芋の相性が抜群の、健康っぽい気分になれる、罪悪感少なめラーメン。
私はライス(平日昼間無料)も食べるので、プラマイややプラス、みたいな感じではありましたが。
とにかく、わたしが愛してやまないラーメンです。

「マイルーツ、マイ山形」#2 相棒を見つける
納豆ラーメン。私の食べっぷりが良いことを知って、ライスは自動的に出てくるようになりました。

冬になると食べたくなって、よくお世話になっていました。
雪が舞う、寒い寒い日。縮こまった身体をダウンにうずめて足早にお店へ。
のれんを潜ると、もくっと食欲をそそるあったかい空気に一瞬で全身が包まれて、ほどけていく。
と同時に、気前のいい大将のクールな表情と声に迎えられる。
お気に入りのあだ名で呼んでくれる店員のお母さんはなにかと気にかけてくれる。
世間話をしたり、ふっと笑ってしまう言葉をくれたり、いつものなんてことないやりとりと、あたたかい感覚が、今も心にこだましています。

移住したばかりの頃は特に、挨拶や小話ができる場所が、心の拠り所になっていました。
自分が居心地良くいられるお店が少しずつ増えていって、だんだん、わたしも街の風景の一員になっていったように思います。

近くにあって、いつでも安心して入れて、お腹と心を満たしてくれる。家でも職場でもない、もうひとつの居場所。
そういう場所が自分の住む街にあることが、こんなにも心強いなんて、山形に行くまで知りませんでした。
山形には、そんな、自分にとっての「相棒」みたいなお店がたくさんあります。

味の記憶が、街の記憶を連れてくる。
ああ、食べたいな。会いたいな。元気かな。