「マイルーツ、マイ山形」#1 運転免許をとる
26歳から30歳まで、山形で暮らした、めくるめく4年間。
縁もゆかりもない土地だったのに、今や、もうひとつの故郷のような場所になりました。
私が見た、感じた、働いた、暮らした、山形について。今の私のルーツになった山形でのことを綴ります。

山形暮らしを経て〈趣味〉の欄に書きたいことがひとつ増えました。それは「車の運転」。
4年前、山形へ移住した当時の目下の課題は運転免許をとることでした。18歳まで地元で、その後は東京で暮らしていたため、運転の必要性を感じてきませんでしたが、山形暮らしでは、運転できたほうが、仕事でも便利だし、日常生活もより楽しむことができると思っています。(とはいえ、運転免許なしで山形ライフを満喫している友人もいる!バスと電車と便乗でどこまでも出掛けていく彼女はなんだか身軽で、それはそれでいいかも。)
ということで移住してから最初の3ヶ月くらいは、平日の会社終わりと土日に教習所に通う日々でした。とはいえ、教習所通いは苦ではなく、むしろ息抜きの時間でした。久しぶりに教室で受ける授業は楽しいし、山形弁のおじいちゃん先生の言葉はほぼ外国語だし、ちょっとずつ運転が怖くなくなっていくことがうれしかった。
はじめて路上教習で運転したときのこと。今までふつうに歩いていた道を、標識の意味やルールを知って車で走ると、まるで違う世界のように見えて、ものすごくびっくりしたことを鮮明に覚えています。的確にメッセージを送ってくる標識や整然と交わる道路の美しさ、そして何より、運転することのよろこびを知りました。
怖い気持ちもあったけど、それを上回る楽しさに夢中になった私は、まだ教習所に通っている間に、軽自動車を買いました。早く運転したい一心で、試験勉強に励み、8月のある日、ついに免許をゲット。やっぱり、すごくすごくうれしかった。それから数日後、かわいい車が納車されてはじめてのドライブに出かけました。ドキドキファーストドライブの目的地は、運転できるようになったら行ってみたかった「みはらしの丘」。恐る恐る車の列に私も混ざり、流れを乱さないように、乱さないように…ふつうに行けば家から20分ほどの道のりを、車線変更と右折に悪戦苦闘しながら、1時間くらいかけて。
やっとの思いで、自分の力でたどり着いた、みはらしの丘。走りながら窓を開けたら、叫び出したいほど風が気持ちよくて、大げさだけど自由を手に入れたような、最高の気分でした。
この日以来、少しずつ運転する距離を伸ばしていって、蔵王エコーラインを走ったり、庄内地方へ行ったり、実家のある山梨まで帰ってみたり、福岡まで日本縦断旅を友達としたり。いろんな道を走るたび、自分自身が広がっていくようでした。それに、遠くまで行かなくったって、土曜日のお天気のいい朝に、ちょっと山の方へ走るだけで、なんと清々しい気持ちになれることか。
運転、すごい。たのしい。
最近は、日常的に運転をする生活ではなくなりましたが、いつかまた、どこかに飛び込みたくなったとき、山形で手に入れた運転免許と自由が、わたしの背中を押してくれると思っています。













