作家・城山萌々のこと
今回は作家の城山萌々さんをご紹介したいと思います。
現在は山形在住の城山さんですが、出身は千葉。移住者です。なぜ山形なのかお伺いしたところ「単に仕事があったから」と言います。初めは東北芸術工科大学の副手として山形にいらっしゃったそうです。現在は羽陽学園短期大学で講師を務めています。移住してみて実際に住んでみないとわからないメリット、デメリットを様々体験したようですが、今ではすっかり山形の虜になっているそうです。
城山さんに初めてお会いしたのは、10年ぐらい前のこと。私がS&Tというじぶんのギャラリーをひらいてからまだまもない初期の頃です。当時開催していたアートショップというイベントに参加していた他の作家からの紹介でした。作品を持ってきてくれるということになり、彼女はすぐに何点か持ってきてくれたのですが、その作品を見て驚きました。
彼女は版画家、と聞かされていたので、私はどんな作品なのか色々想像をめぐらしていました。しかし、持ってきてもらった作品を見た時に「えっ!これが版画?」と声が出ちゃうほど、私の知っている版画とは似ても似つかないものでした。そして、それを見た一瞬で理解しました。彼女は版画家ではなく芸術家なのだと。私の知っている版画の概念とは似て非なるもの。それが彼女の作品です。きっとご本人も版画家なんて思っていないのでしょう。油絵、水彩などと同じように、彼女の表現に合うからきっと版画という手法を選んでいるだけなんだと思います。
彼女の作品は誰にも媚びるところがありません。SNSの普及でにわか芸術家が増えた昨今、そんな人達の作品(?)というのはどこかで見たことがあるような表現であったり、鑑賞者に媚びていたりしているように私には見えます。真似が全て悪いとは思いませんが、誰も見たことがない新しい作品を生み出すのが真の芸術家なのではないでしょうか。城山さんの作品にはそれがあるのです。それでこそ芸術家。そんな作家が世に認められてほしいなと私は思います。残念なことに今の日本ではそんな芸術家は控えめで世に出ることも難しいのですが、私は声を大にして言いたい。これが本当の芸術なんだと。ここ数年、彼女と同じイベントに参加することも多かったのですが、いつ見ても驚きを隠せません。おそらく彼女の作品を一度でも見た方は皆さんそう思うことでしょう。
昨年のイベントの作品などは、壁面からも飛び出して立体作品の程をなしていました。彼女の作品を見た人はそれが版画だとは思っていない人がほとんどです。版画をベースとしている技法がそこにあることを伝えると、皆さん驚きの表情をみせるのはとても面白いことです。彼女が意図しているのかいないのかわかりませんが、唯一無二の作品を生み出しています。

「版画なら何枚でも刷れるんでしょう?」とは、よくお客さんから言われるフレーズですが、結論から言うと彼女の作品については何枚も作ることはできません。後々刷られることも不可能です。その理由は彼女独特の制作方法にあります。ご本人のお話によると、版画ですからいわゆる版があるわけですが、それを壊しながら制作を進めていくそうです。だから、1枚目と2枚目では当然異なります。そして、壊しながら制作を進めていくためいずれその版では刷ることができなくなります。そうする事で彼女の理想の表現を追求しているわけですから、5枚ぐらいが限界というわけなんです。その辺も版画の常識とは大きく異なりますよね。ブッ飛んでます。
現在、羽陽学園短期大学で講師を務めている城山さんは色んな事に興味を持っていて非常に勉強熱心です。つい先日も昨今の世界状況をみて、戦争と芸術について何やら分厚い本を読んで楽しみながら勉強していました。それが次の作品のテーマなのか尋ねると、「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません。ただ、興味があるだけです」と答えていました。そのあたりの答えかたにも芸術家らしさを感じます。
10年くらい彼女の作品を見てきました。SNSの発達のせいで表面だけそれっぽくて中身のない作家が増えた時代にあっても、彼女の作品にはひとつ芯が通っていて、いつ見てもブレがありません。それこそが彼女を本物の芸術家たらしめている所以ではないかと私は思います。
彼女や彼女の作品を見るといつも、私もこんな作家が活躍できる場を提供できるように頑張らねばと身を引き締めさせられます。
プロフィール
城山萌々
1981 年 千葉県生まれ
2016 年 筑波大学大学院人間総合科学研究科 博士後期課程 芸術専攻 修了
現在 羽陽学園短期大学 幼児教育科 講師
https://www.instagram.com/shiroyamamomo/
















