real local 山形オフグリッドライフのこと/建築家 竹内昌義さん - reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

オフグリッドライフのこと/建築家 竹内昌義さん

2017.09.05

東京・渋谷のd47 MUSEUMで開催中のD&DEPARTMENT PROJECTによる「NIPPONの47人 2017 これからの暮らしかた − Off-Grid-Life −」展でキュレーターを務めるのが、建築家であり東北芸術工科大学教授の竹内昌義さんだ。今回のキュレーションの狙い、展示から見えてきたものについて、reallocal山形チームがインタビューしました。

*d47 MUSEUM「NIPPONの47人 2017 これからの暮らしかた – Off-Grid Life –」のサイトはこちら

オフグリッドライフのこと/建築家 竹内昌義さん

d47の展示は8月3日に始まったわけですけど、ひとはすごくいっぱい入ってるみたい。たぶんこれは、共同キュレーターの後藤正文さん( ASIAN-KUNG-FU GENERATION )のおかげですね。もともとは、彼が震災後に発行したフリーペーパー『THE FUTURE TIMES』で岩手県のオガールタウン(※)を取材してくれて「みんなでエコするのっていいよね、オガールっていいね」って言ってくれたのがきっかけで、それからのお付き合いですけど、やっぱり影響力がある!

もうひとりの共同キュレーターである伊藤菜衣子(暮らしかた冒険家 )さんは、自宅をバリバリ断熱改修してエコハウスにしてすごく快適な暮らしをしていたり、「物技交換」とか「高品質低空飛行」って言って、クオリティはすごく高いんだけどお金に縛られずに生きるにはどうしたらいいかってことを実践するひと。
そんなふたりと一緒にキュレーションできたことで、この展覧会は厚みも増して、おもしろくなったと思います。

実際、ひとりではなく3人でのキュレーションだったからこそ、いろんな立場の、いろんなことをやっている、いろんな年代の、いろんな面白い暮らしを実践している人たちを全国各地から集めて展示することができました。集めてみると47人ってすごく「たくさん」なんですよ、ほんとに。「よかった~、キュレーター3人で」って感じです。

※オガールタウン:岩手県紫波町に生まれたエネルギー自給施設を備えたあたらしいエコタウン。竹内さんはエコハウスのモデルハウスの設計などに携わっている。後藤さんとの対談はこちら

 

エネルギーとエコハウス
だけじゃない「楽しさ」

ナガオカケンメイさん(D&DEPARTMENTディレクター)から「エネルギーと暮らしの展覧会をしましょう」というお話を受けたのは今年の4月ごろです。以前から彼は「エネルギーをやっている竹内さんは面白い」って言って興味をもってくれていました。

じゃあどういう展示にしようかって考えたとき…。これまでいつも、もちろん今回の展覧会でも、僕は書いてるんですけど「東日本大震災で福島第一原発がダメになったとき、『エネルギーと暮らし』は思っていた以上に隣り合わせにあるってことに僕たちは気づいた」わけです。

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竹内さんが設計に携わった「山形エコハウス」。地元の木材で作られた、カーボンニュートラルな、1年中快適に暮らせる家。d47展では山形代表としてこのエコハウスの概要や技術を展示した。

だから、脱原発やエネルギーについて考え、エコハウスというところに行き着くわけですけど、この展覧会で、再生エネルギーの話やエコハウスの話をするのはもちろんいいけど、それを47個集めて並べてみたところで「ふつうのひとが見にきてくれるか?」って考えてみると「ムリだな」って思ったんですよ。

だって、それじゃみんなよくわかんないし、それじゃ面白くないから。だから、もっと一般化したかったし、こうした正しいことがメジャーなものとして広まるような、大きな流れのなかにあるようにしたかったんです。

オフグリッドライフのこと/建築家 竹内昌義さん
山形エコハウスの内観。寒暖差の激しい土地でも、夏は涼しく、冬は暖かい暮らしを、カーボンニュートラル(CO2排出ゼロ)で可能にする。

エコハウスというものが技術としてあるのはわかるし、作ることもできるし、選ぶこともできる。自分としては当然これまでやってきた「山形エコハウス」の展示をするし、北海道、秋田、富山、愛媛、沖縄からもエコハウスの展示をしています。
でもこれくらい揃えばもうおなかいっぱい。あとは、それだけじゃない、これからの未来に向かってめざすべきいろいろな暮らしかたを展示しよう、「オフグリッド」みたいな自分なりの自由さを手に入れた暮らしかたを集めてみよう、と考えたのです。

 

「自分なりの自由さを獲得した」
という意味でのOff-Grid-Life

「これからの楽しくて快適な暮らし」を並べる、そのキーワードが「Off-Grid-Life オフグリッドライフ」。

オフグリッドライフって本当は、電線から切り離されても暮らしていける家のこと。だからエネルギーが自立できている家ってことなんだけど、それをもう少し幅広く「これまでにあった既成の考えかたややりかたから自由になる」っていう意味でとらえよう、って感じです。

「実際、大きな電力会社から切り離された生活を想像したとき、僕たちになにがどうできるのか。そういう暮らしってどんなものだろう?」っていう問いもそこには隠されているんですけど。

そうして、全国からオフグリッドな自分なりの自由さのある暮らしを実践しているひとを集めてきました。

大切なのは「楽しそうに、ご機嫌にやっている」ひとだってこと。必死にもがいてこれから伸びていくであろう30代のひとたちとか。ちゃんと世の中で仕組みとなるように事業を作っていたり株式会社にしていたりしている50代のひとたちとか、実に幅広く。

で、実際に集まったひとを眺めてみると…カテゴリー分けの難しいことになっている。

「住む エコハウス/エネルギー/まち/たべもの/情報や働き方/泊まる/もののあり方、作り方/遊び方」とカテゴリー分けすることはしましたけど、かぶる人もいるし、そもそもカテゴリーを超え気味なひとたちばっかりだし。これまでの常識を超えているひとたちばっかりだから。

オフグリッドライフのこと/建築家 竹内昌義さん
「NIPPONの47人 2017 これからの暮らしかた」展の様子。竹内さん撮影。
オフグリッドライフのこと/建築家 竹内昌義さん
関連グッズや書籍も販売されている。竹内さん撮影。

 

これからのトークショーこそ
いちばんのお楽しみ

この展覧会は10月9日までですけど、本当に面白くなりそうなのは実はこれから。

9月9日(土)10日(日)、10月7日(土)8日(日)の4日間で、10組のトークショーを朝から晩までずっとやります。スケジュールは過酷ですけど、僕はものすごく楽しみ。このひとたちの話を東京で聞けること自体が貴重!という企画ばかりだし、この組み合わせで話を聞くとどういうことになるんだろう? どんなことを喋ってもらえるんだろう? どんなケミストリーが起きるんだろう?って、もう本当にワクワク。全部に参加できるパスポートも売ってますから、買ってください。

Off-Grid-Life Lecture & Talk イベントについてはこちら

今って、けっこう大事な時代の境目にあると僕は思っていて。
だって「原発を動かさないとこの国はダメになる」って言ってるひとがまだけっこう多くいるわけですけど、それって昔からやってきたやりかたなんですよね。でも、「原発がなくても大丈夫じゃね?」っていうことに、世の中の敏感なひとたちがだんだんと気づきはじめているし、実際に「再生可能エネルギーだけでいけるんじゃね?」っていう国もできているっていうのが今の時代なんですよね。

これまでの価値観から自由になったあたらしい暮らしかたが、これだけもう始まっているわけですから。

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竹内昌義(たけうち・まさよし)
1962年神奈川県生まれ。建築家、東北芸術工科大学教授。建築設計事務所『みかんぐみ』共同主宰。主な代表作に『SHIBUYA AX』『愛・地球博トヨタグループ館』『伊那東小学校』『マルヤガーデンズ』『山形エコハウス』など。『団地再生計画/みかんぐみのリノベーションカタログ』『未来の住宅』『原発と建築家』『図解 エコハウス』など、著書・共著書多数。

 

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