「ぼくのたいき君」 その10・漕げよ! たいき君 ~ の巻
カヌー編
こんにちは。この夏、山形市の猛暑日の連続記録が更新されたとのこと。みなさま、いかがお過ごしでしょうか? 酷暑のなか、どうにか涼を感じたい!そう思ってわたしは研究室の窓辺にこれを吊してみました。

チリンチリンといい音をさせるのは、たいき君風鈴。正確には土鈴なのですが、涼しい川をカヌーで下るたいき君がモチーフになっています。そのたくましい腕は、握りしめるオールよりはるかに太い! 顔もなんだかいつもと違って妙に頼もしい!

たいき君土鈴の裏側を見てみますと「べにばな国体 カヌー競技会 ’92・9/5~9」と書かれています。きっと素晴らしい競技が繰り広げられたことでしょう。最上川に立ち上がる水しぶきを想像しただけで、涼しくなってきました。それにしても、土鈴のたいき君までいることを思うと、どれほどの種類のたいき君グッズが当時作られていたのか、また気が遠くなるのでした。
北前船編
猛暑日のとある日、たいき君捜索隊として仲良くさせてもらうようになった山形山岳会の仲間と連れ立って、山形の北に位置する大岡山へ行ってきました。たいき君の目撃情報があったのです。山形駅から山寺に行く途中にある楯山地区がスタート地点です。立ち並ぶ住宅の間を通って登山道へ入っていきます。

ちょっと進むと山のふもと、動物除けの柵のある鳥居が出てきます。さあ、いよいよ登ります。午前中とはいえ、まとわりつく熱波のような空気が襲ってきます。そんな中、ヒヤッとした風が吹いてくる場所がありました。見るとそれは・・・

風穴です。「砥石採掘洞」と看板があります。山の地下の冷えた空気がここから出ているのです。思わぬご褒美のような涼しい風が嬉しかったのです。そして、先に進むにつれて、この山にはやたらと多くの看板があることに気がつきました。


看板を作った主と会話をしているかのような気分になってきたそのとき!あっ!簡易山小屋のようなものの中にたいき君!

これまた貴重なたいき君の旗です。よーく見ると、たいき君のバックには旧タイプの酒田市のマークがあります。

ここでちょっと確認しておきましょう。星の数ほどあるべにばな国体グッズの1つに、ルーペがあります。これは酒田市で作られた逸品で、桐箱には今回の旗と同じたいき君がいます。

船の上で太鼓を奏でるたいき君がいますが、酒田市というわけで、きっとこれは北前船でしょうか。だとすれば、遅くとも江戸時代にはたいき君がいたことになります。たいき君のご先祖だとしたら、羽前屋たいき太夫とか、そんな名前だったら素敵です。
さて、さらに山を登ると、また見つけました!たいき君!

今度は机上に飾る小さな旗のたいき君です。ボロボロになっています。なぜこんなところにたいき君が・・・? 暑くてフラフラになっている頭で推理しました。
やたらめったらたくさんある手書きの看板。そして、こんな場所に不似合いな酒田のたいき君に机上用の旗・・・ピンと来ました。この大岡山には、山の管理をしていらっしゃる看板作りが好きな方がいて、その人の元に集まるさまざまな目立ちそうなグッズを山に飾っているのだ、と。だから山形市の大岡山の山中に酒田のたいき君がいても不思議ではないのです。モノを通してつながる人と人。大岡山の北前たいき君は、そんなあたたかくも活気にあふれた人々の交流を象徴しているのです。たぶん。
もう見つからないだろうと思っていても現れてくれるたいき君。奥が深いです。
それでは、また次回。