real local 金沢 » 観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん【この人】

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん

10年間、台日系カルチャーの伝道師として、日本と台湾を行き来しながら、企画、コーディネート、執筆、台湾式中国語教室「カルチャーゴガク」主宰など、縦横無尽に活躍してきた田中佑典さん。自身の生活そのものを芸としているから、「生活芸人」。実に田中さんらしい肩書です。

そんな田中さんの次なる10年の目標は、観光でも移住でもない、一つの場所に微妙に住む体験=「微住」を、カルチャーとしてアジアに広げていくこと。その発信拠点となる、地元・福井では、微住の受け入れが続々とスタートしています。

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん
運営資金を募ったクラウドファンディングもあっという間に達成。「微住」への期待がうかがえます。

私が田中さんを知ったのは、2018年の福井微住第1弾でもある『青花魚』発刊のreal local記事。
>>台湾×福井 『青花魚』発刊!
隣の金沢に住む私には、そんな福井の動きがうらやましくてたまりませんでした。なぜこんなに「微住」と田中さんが気になるのか、それを確かめたくて、福井・大野でまさに微住コーディネート中の田中さんに会いに行ってきました。

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん
待ち合わせ場所に着くと、台湾からの微住者たちが、台湾の定番朝ごはん「鹹豆漿(シェントウジャン)」を振る舞うため、わいわい料理中でした。今回来ていたのは、台湾・台中の編集者と建築デザイナーのチーム「ARTQPIE」のviviさんとその教え子であるデザインや建築を学ぶ学生たち。

「大野の商店街にある空き物件をリノベーションして、宿泊施設をつくるプロジェクトを地元のプレイヤーと彼らが一緒に進めています。大野と台中は、自然の中にシティカルチャーがある感じがどこか似ているなと思ってマッチングしました」

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん

台湾と日本の、似ているけれど微妙に違う感じ。その“ズレ”が心地よくて、台湾に興味を持ったという田中さん。あえて移住はせず、東京と台湾を行き来しながら、外の人間=「まれびと」の視点で台湾人よりも台湾をおもしろがる。そうやって活動を続けてきました。

――台湾で心地よいと思った“ズレ”には、どんなものがありますか?

「“行”の価値観ですかね。日本は『衣食住』ですけど、台湾や中国は『衣食住行』。“行”は移動とか変化というニュアンス。変化することが当たり前なんですよね。内と外、プライベートとパブリックの境目があいまいなところにも“行”を感じます。コミュニティも家族・同僚・友達とかがはっきり分かれていなくて、グラデーションのような感じ。

 あとは、ものづくりの感覚が“見切り発車”。とりあえずやってみようよ、世に出してみようよっていう感覚ですね。僕自身もともと、『どんなカルチャーも素人の“口から出まかせ”からはじまったはずだ』という自論を持っていて、それで『LIP SERVICE』っていう雑誌を学生時代つくってたくらいなので、台湾の“見切り発車”な部分に共感します」

――「微住」の考え方にたどり着いたのはどういう経緯だったんですか?

「僕みたいに外の人間が台湾をおもしろがっていると、現地の人も、そんなおもしろいものあったんだって気づいてくれたんですよね。見慣れたものや風景が活性化するというか。『微住』も、微住者がたのしむことも重要だけど、むしろ受け入れ地域の内部の活性化が目的だったりします」

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん
微住者がつくってくれた料理を食べに、大野の人が続々と集まる。

――「微住」は、従来の試住や滞在プログラムとはどんなところが違いますか?

「地域の内と外の接点を、少し内側にずらすようにしています。従来のもてなす、もてなされるの関係ではなくて、外側の人にも地域のために何かをしてもらう。今日もこうやって地元の人に料理をふるまったり、リノベーションの企画や作業をしたりして過ごす。そうすることで自分事になって、情がわいてくるんです。
 あとは、“完了させない”こと。あーたのしかった、で終わらせない。期間も、満足しきらないけれど想い入れも出てくる、2週間を目安にしています。いいところだけをパッケージした観光や、短期間のプログラムでは見えてこなかった、地域のスキの部分が見えてくるんです。
 例えば、インフルエンサーに来てもらって、たのしんでもらって、発信してもらう。発注する側も受注する側も、関係性として簡潔で楽だし、見栄えもいい。でも、それを見てやってくる人たちには、地域に対しての愛は生まれないですよね。地域をそういう風に安売りしても、結局どこも同じような感じになってしまう。
 これからの時代、真新しいプログラムとかサービスをつくるのって無理だと思うんですよ。今回の大野微住も『よくあるリノベーションじゃん』とか言われたりもするんですけど、目に見えるアウトプットは何も変わらなくていいんです。ただ、地域の内と外の接点の前線位置を変えるというか。それによって生まれる関係性が変わっていく」

――どう変わりますか?

「自分事になって、情がわいた地域には、また来たくなるし、受け入れた地域の人も今度はそっちに遊びに行くね、ってなるんですよ。僕もアジアのあちこち微住してますけど、情がわいた地域には毎年のように行ったり、あっちから来てくれたり、里帰りみたい。生まれ故郷の他に、自分で選んで、愛情をもっている第2のふるさとを僕は『ゆるさと』って呼んでいるんですね。福井を『ゆるさと』だと思ってくれる人を、微住を通してつくれたら」

――これからの微住の展開で考えていることはありますか?

「モノ消費、コト消費ときて、次はタメ消費だと思っています。人は、だれかのために何かをすることを求めている。日本に来ている人もそうだし、国内でも地域のために何かしたいという人が増えている中で、国内だけでやっていくのは拡張性がなくてもったいない。それなら国内外問わず『微住』でまとめて、プラットフォームをつくろうよって思っていて、これからつくるWebサイト『福井微住.com』もいずれ全国、全アジア規模で使えたらと思っています」

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん
取材の次の週は、河和田エリアで微住。台湾から6名のクリエイターと地元のクリエイティブカンパニー「TSUGI」、東京のWebメディア「しゃかいか!」でチームを組み、微住しながら「微住.com」のロゴやWebサイトをつくった。/Photo credit to @cityflaneurs

――ちなみに田中さんは、金沢についてはどう思っていますか?金沢を訪れる台湾の人はとても多いですが、微住的なつながりは生めていない気がしていて。

「金沢って台湾の人からするとめちゃくちゃ人気で、北陸の中でも一番知名度のある場所ですよね。この間カルチャーゴガクの講座で金沢に行った時も、台湾人すごいいるなって感じますし。
 観光という強みがある分、地域の内側の人がホームを奪われるように感じて内向していってしまわないかを考えていかないといけないんじゃないかと思います。誰でも来てくださいという時代から、自分たちの地域に必要なのはどういう人なのか、身元がわかる交流の仕方が大切。地域の内と外の接点をどうデザインするか。
 あとは、今ある地域のコミュニティってある意味では縄張りと同じなので、古い縄張りを地域の外側の人にも開放しながら、新しい縄張りをどんな人とどうつくっていくか、だと思います」

観光でも移住でもない「微住」をカルチャーに/生活芸人・田中佑典さん

取材に同行してくれていたreal local福井の佐藤さんの感想が印象的でした。

「田中さんは根っからの編集者なんだなと思いました。ひとつひとつの言葉や事象に関して、きちんと裏を見るというか。子供が岩をひっくり返してどんな生き物が住んでいるかを観察するように、すでに価値がついているものに対して、本当にそうなのかなって目で見てらっしゃるなと。それで、良いものは良いし、これはちょっと変えられるんじゃないかと思ったら試してみる、というふうに、正直に、これまでやってこられたことの積み重ねがあっての今なんだなと思って。聞いていて気持ちがいいというか、頼もしい!」

 まだまだ田中さんのお話が聞きたくて、3月8日(日)に、金沢で田中さんと台湾メシを囲む会を企画しています。田中さんが気になった方、なんだか台湾が気になっているという方は、こちらもぜひ。

>>3/8(日)「生活芸人・田中佑典さんと台湾メシを囲む会」@兼六園下ビル・町家棟

URL

田中佑典:http://tanaka-asia.com/company.html
微住.com:https://www.bi-jyu.com/

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