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金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん

インタビュー

2020.09.15

郡山市深沢で、金継ぎを手がけている「うつわつくろい」の佐藤倫(さとう・りん)さん。地元の人なら、カフェ兼雑貨店「ロムエン」を営む佐藤さんの弟さん、といった方がわかるかもしれません。建築内装を本職にされて、音楽活動も続けながら金継ぎをしている倫さんに話を聞きました。

金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん

――金継ぎをされるようになって何か変化はありましたか?

金継ぎを始めるようになって物作りに携わる方との出会いが多くなりました。また、そのような造詣が深い人たちが郡山にも沢山いるのだなと改めて気づきました。陶芸家さんの窯焚きをお手伝いしたり、木工作家さんと一緒に漆の器作りをしたりいろいろな経験もさせてもらっています。
また器の金継ぎ代をコーヒー豆や作家さんの作品と交換してもらうこともあります。金継ぎを通して今までできなかった経験ができていることが楽しいです。

――金継ぎを始めたきっかけはなんでしたか?

子どもの頃から使っていたものに不具合があるとバラしていました。今思えばその頃から直すことに関心があったのだと思います。そしていつしか何かを直して使えるようになる事に身震いするような喜びを感じるようになりました。器に興味を持ったのは姉が経営しているカフェ「ロムエン」の影響が大きいと思います。器を集めるようになったのは結婚して家庭を持ってからです。はじめは安くても気に入ったものを揃えていこうと妻と決めていましたが、作家さんの技法や想い、その魅力に引き込まれて今では作家さんの作品が大部分を占めています。そして「直す」という行為と好きな「器」が繋がって、4 年程前から金継ぎを始めました。

金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん

――金継ぎの魅力について教えてください。

キズを隠すのではなく、新たな「景⾊」として活かして、それを愛でることができるところが金継ぎの真骨頂です。金継ぎを施したことで逆にキズが付加価値になる。
お客様から器を預かり、数ヶ月間かけて直していくのですが、その器と長く一緒にいると私も愛着が湧いてきます。お返しした器が使われている様子をSNS で見かけると、金継ぎを施した器が元気にやっているなあと嬉しくなってしまいます。

金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん

――印象に残ったお仕事はありますか?

今まで行った金継ぎのなかで、知り合いの陶芸家さんから依頼を受けた平皿の補修のお仕事が特に印象に残っています。そのお皿は窯傷(かまきず)や窯割れ(かまわれ)と呼ばれる、素焼き本焼きの工程時に窯の中で割れたりヒビが入ったりする割れ方をしたものでした。
窯で焼いている段階で大きな亀裂が入ってしまい、それが段差になっていたので、その大きな隙間と段差をどのように埋めるのか、とても悩んだ仕事でした。上の写真を見ていただくと説明しやすいのですが、最終的には漆(うるし)で接合する部分を太くして、敢えて平滑にしないという選択をとりました。このお皿はその後銀座のお寿司屋さんに納品されました。いつかはそのお寿司屋さんに訪れて対面したいですね。

金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん
伊藤 文夫 粉引 湯のみ 金仕上げ
時間と手間のかかる作業

――金継ぎの方法について教えてもらえますか?

金継ぎは漆を使って接合する日本独自の器の補修方法です。
金継ぎには器と破片を繋げる「接着」、接合部を平滑にする「漆の錆付けと塗り込み」、仕上げの金粉などを施す「粉蒔き」の工程があります。

「接着」と「漆の錆付けと塗り込み」の工程で厄介なのは、漆は20 度以上の温度と約70%の湿度でなければ硬化しないことです。梅雨の時期ですとこの条件が満たされますが、それ以外の季節ですとその環境が整いません。そこで「室」(むろ)という小箱の中でその環境を人工的に作ります。接合させる工程ではこの室に2 週間以上置きます。

また、「漆の錆付けと塗り込み」「粉蒔き」の工程での研ぎ出しや磨き出しには「木賊(とくさ)」という植物や「真綿(まわた)」という蚕の繭のわた、「鯛牙(たいき)」という鯛の牙を使った道具を使用します。これらは昔からの金継ぎの技法です。器の状態にもよりますが「漆の錆付けと塗り込み」を数回行いますので、完成するまでに10 工程程度の作業をします。

漆を塗ったり研ぎ出しをしたりする1 工程の作業時間は10〜30 分程度ですが漆を硬化させる時間と作業工程が多いためどうしても最低でも3 ヶ月以上かかってしまいます。金継ぎは思っている以上に時間と手間の掛かる作業なんですよ。

金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん

――最後にこれからどのような金継ぎをされていきたいですか?

器に限ったことではありませんが、気に入ったものや特別なものには思い出や想いが付随していきます。あの土地へ旅行した時に買ったなあとか、子供の七五三の時に使ったなあとか。そんな思い出が積み重なっている器を甦らせることは素敵なことだと思います。

金継ぎから見えてくる、違った“景色” 佐藤倫さん
こちらは、金継ぎではないが、金継ぎで漆を使うことから派生した別の仕事。木工作家「かわらまち木工舎さん」の木皿に、佐藤さんが漆仕上げを施した。

また、サックスのマウスピースや万年筆など、器以外の補修もお願いされます。こういう依頼を色々考えながらやっていくのは面白いですね。これから金継ぎを続けていくに当たって、奇抜なものではないけれども新しい独自の方法を探って行きたいです。

屋号

うつわつくろい さとう 佐藤 倫

URL

instagram: @utsuwatsukuroi

facebook https://www.facebook.com/rin.sato.52

住所

郡山市深沢2−10−9 ロムエン(雑貨と喫茶)

備考

(代金や掛かる期間など、伝達事項など) :
ご依頼品は直接上記住所「ロムエン」にお持ちいただくか、送付していただければお見積もりいたします。修理費用は¥2,000~、納期は3か月~半年程