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第4回クリエイティブ会議レポート 2020.9.21/ Q1プロジェクト

地域の連載

2020.10.26

山形ビエンナーレ2020会期中の921日、Q1クリエイティブ会議第4回「「TURN(ターン)とプロジェクトFUKUSHIMA!に見る、多様な〈個〉の出会い」が開催されました。

ゲストは、TURNプロジェクトディレクターを務める公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京事業推進室事業調整課長 森司さん、プロジェクトFUKUSHIMA! で福島大風呂敷など美術部門のディレクションをしている美術家・中﨑透さんのおふたり。モデレーターは、Q1プロジェクトのボードメンバーである深井聡一郎さん(株式会社Q1取締役・東北芸術工科大学教授)と馬場正尊さん(株式会社Q1代表取締役・東北芸術工科大学教授)が務めました。

山形ビエンナーレ2020のプログラムはオンライン配信となっており、このクリエイティブ会議もまた東北芸術工科大学内に設置されたスタジオからオンライン配信されました。

第4回クリエイティブ会議レポート 2020.9.21/ Q1プロジェクト
左より、馬場正尊さん、深井聡一郎さん、森司さん、中﨑透さん
Q1プロジェクトについて

山形市中心街にある山形市立第一小学校旧校舎(現まなび館)を、創造都市拠点として再整備する「Q1プロジェクト」が現在進行中です。2017年にユネスコ創造都市ネットワーク映像部門に加盟した山形市は、まちに蓄積されたそのクリエイティブの力を地域の持続的発展に活かしていこう、そして第一小学校旧校舎をその拠点として活用しようと計画、2022年度より本格稼働予定です。

とはいえ、創造都市の拠点としてそこがどうあるべきなのか、そこには何があり、どんな楽しみがあり、どんなふうに市民に開かれ、どんなふうに運営されるのが良いのかというのはそれ自体非常にむずかしいクリエイションです。そこで、Q1プロジェクトではそうした姿や方法論を議論・検討しインストールしていく過程も実験フェーズとして位置付けています。

クリエイティブ会議は、まさにその検討・実験フェーズにおける具体的なコンテンツのひとつであり、独自の方法論を持ったゲストを呼んでの公開企画会議の場。これまでもクリエイティブ会議では、ユニークな方々をゲストとしてお招きし、その経験や知見を集めて来ました。

これまでのクリエイティブ会議のアーカイブはこちら

第4回クリエイティブ会議レポート 2020.9.21/ Q1プロジェクト

 

Q1プロジェクト、実験フェーズにおける構想

さて、ボードメンバーからゲストのおふたりに提示されたのは、これまでのクリエイティブ会議などを通して現在構想されているQ1のコンテンツイメージについて。

テーマとなるのは「クリエイティブと地域産業を、暮らしで結ぶ」というもの。山形にすでにあるクリエイティブを、地域のビジネスとマッチングさせ、新しいクリエイティブ産業を生み出すようなイメージ。それを、これまで「まなび館」として利用されてきた1F空間のみならず、これまで閉鎖されて来たまるで廃墟のような荒々しい雰囲気を放つ2F、3Fの空間的魅力をも活用しながらやっていく。

そのとき「市民に開かれたものにする」というのが大事なところで、クリエイティブやアートというキーワードを掲げることによって、一部の人間しか楽しめないようなものになってしまうことにならないよう、多くの市民が気軽に利用し楽しめる施設にすることは重要なポイントとなる。そのためには、1Fから3Fまでの巨大な空間をどんな店、どんな空間、どんな利用方法で満たしていくかを考えた時に、日常的であること、つまり「暮らし」というのが重要なキーワードとなるのではないか、と。

例えば、市民に日常的に利用されるようなグロサリーとかデリ、カフェやパン屋さんのようなショップ。また例えば、クリエイティブに触れられる学童保育のような場所。「暮らし」という切り口からはそんな空間利用が想定されうるかもしれない。

もちろんクリエイティブな「楽しみ」も感じられる空間でありたい。例えば、山形国際ドキュメンタリー映画祭との連動。映像編集の技術が学べる空間や、映画の試写室があるのもいい。映像だけでなく、全国屈指のオーケストラである山形交響楽団とのコラボなど、音楽での楽しみも感じられたらいい。

さらには「仕事」や産業という切り口も重要。アーティストたちのオープンスタジオでは作品がリアルタイムで制作されたり、出来上がった作品がダイレクトに販売されたり。地域企業を巻き込んだシェアオフィスがあったり、学生たちと企業とのマッチングの場所になったり、新しい商品やサービスが生まれたりと。

そんな構想イメージがボードメンバーから語られたのち、ゲストおふたりとのフリーセッションが始まりました。以下、いくつかの要点でレポートします。

第4回クリエイティブ会議レポート 2020.9.21/ Q1プロジェクト

ゲストからのアドバイス&フリートークの要点

1)軸をあえてズラしてみることも

しっかりと機能を詰め込むことはいいことだけど、ちょっと中心的な軸とはまた違う軸を設定しておくことも大事かも、というようなコメントは中﨑さん。例えば、屋上に露天風呂を作ろう、とか、中庭にヤギを飼おう、というような(ちょっと突飛な、あるいは直感的に面白そうな)ことを仮に設定してみる。そういうちょっとズレた軸をあえて用意してみることで、じゃあヤギのドキュメンタリー映像を作ろうとか、じゃあプロジェクト会議をやろうとかいう動きが生まれ渦となって、それが中心的な軸と紐づいて面白くなっていくかも、と。

2)余白を残した中間支援的な空間づくりを

建物のポテンシャルはすごく感じたけれど、ちょっと現状のコンテンツイメージだと『密』感があるような気がした、とのコメントは森さんから。TURNプロジェクト)ディレクターであり、アーツ千代田3331)の店子でもあるという森さんは、ご自身の経験から、こういう場所では最初から想定されてはいなかったいろんなニーズが出てくるものだ、との持論を展開。みんなで会議をやるスペースがほしいとか、みんなでライブする場所がほしい、とかそういうことが後から生じてくるものだし、また、そこを借りていない人たちも使える場所とか、地域に関わる人たちが使える空間というのを用意しておくことも大切、と。そういう余白、空間的な中間支援、みたいなことを考えるのがいいのでは、と。

※TURN:障害の有無、世代、性、国籍、住環境などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を、表現として生み出すアートプロジェクト。https://turn-project.com/

※3331 Arts Chiyoda:旧千代田区立練成中学校を改修し誕生したアートセンター。2010年開館。現代アート、建築、デザイン、身体表現から地域の歴史・文化まで、多彩な表現を発信する場となっている。地域住民や近隣の子どもたちとのアートプロジェクト、地域行事への参加なども行われており、廃校をアートの文脈で蘇らせ街にひらくという意味ではQ1プロジェクトに近い、先行事例とも言える。https://www.3331.jp/

第4回クリエイティブ会議レポート 2020.9.21/ Q1プロジェクト

3)オンラインとリアルのハイブリッドな空間利用

また森さんからは、アーツ千代田3331でアーカイブに使っていた場所を常設スタジオに変えた、というご自身の経験談も語られました。コロナ前の「とりあえずリアルに集まる」という前提が壊れ、これから先は配信型のものとリアルに集う型のものとのハイブリットなものがデフォルトになる時代が来るから、それに向けたチャレンジをしてみた、とのこと。それはラジオの公開収録みたいな場所。カメラやマイクを用意し、自分たちで司会し、画面切り替えたりしながら、配信型の講座をやったりしている、と。UDトークによってリアルタイムで画面に文字を表示させルため、耳で聞こえなくとも目で情報が読めるし、災害時にはそこが情報配信基地にもなる、と。まさにQ1でも展開できそうな話題に。

また、そのようにオンライン放送をやってみると、今度はそこに関する契約的なことの準備が必要だとわかる、とも。コンテンツを再放送するときに発生するお金や権利とか。そういう契約に関する法的な確認なんていうのも、早い段階から整備しなければならない。

4)プロジェクトFUKUSHIMA!から学ぶ、みんなを巻き込むチカラ

中﨑さんからは、プロジェクトFUKUSHIMA(※)における「大風呂敷」の話。3.11原発事故後の福島で1万人規模の音楽フェスを開催したこのプロジェクトには、ネガティブな言葉として世界に広まってしまったFUKUSHIMAを文化の力でポジティブな言葉に変えたい、という想いがあった。まるで大風呂敷を広げたような話だけど、それならいっそ実際に大風呂敷を広げようぜ、とリアルな大風呂敷作りがはじまる。これはフェスの際、ブルーシートの代わりに敷くという実用的な使い方を想定してのものだったが、その風呂敷作りのために多くの人が倉庫に集い、風呂敷を縫い合わせ、そして当日大きな風呂敷を広げ、そこにたくさんの市民が腰を下ろしてフェスを楽しんだことから、やがて大風呂敷はプロジェクトFUKUSHIMA!のアイコンとなり、その後東京ほか全国各地で展開されたプロジェクトFUKUSHIMA!のシンボルとも推進力ともなっていった、という話。

そんな解説を中﨑さんがした後には、なぜこれほどたくさんの人を巻き込むことができたのか、どうやったらたくさんの市民を巻き込めるのか、とボードメンバーから質問が。それに対する中﨑さんからの回答は、人がいろいろやれる関わり白を作るということかもしれない、ということ。風呂敷を縫うために人が集まるのもまたフェスの一部なのだ、と。お客さんとしてではなく自分ごととして参加してもらえたからだろう、と。

(※)プロジェクトFUKUSHIMA!についてはこちら http://www.pj-fukushima.jp/ 
また、real local記事はこちら https://www.reallocal.jp/56453

5)非日常だからこそ参加したくなる

風呂敷を縫うというのは日常ではなく非日常であるということが、多くの人が参加するポイントになったのではないか、という指摘は森さんから。風呂敷を縫うなんてことは自分の普段の暮らしにはないけれど、行為としてはシンプルで難しいことでもなく、それでいて参画して仕事するとそれなりの充実感も得られて満足感がある。また、風呂敷を縫うための作業場として未利用となっていた倉庫が使用されたりしていたというのも象徴的で、それもいわば、たくさんの人が入れる余地がそこにあったということではなかったか。プロジェクト的にも、そして空間的にも、たくさんの人が参加できる余白があったということがポイントなのだ、と。

その誰しもが入りうる空間的余地。そういう空間的な中間支援とでもいうべきものがQ1にあってもいいのではないか。いつでも使い方を変えることのできる余白の空間があることによって、そこにドンドンいろんなものが盛り込めていけるのだから、と。

6)マイクロプロジェクトとその持続性

Q1は、問い続ける場所。完成されたハードがただ存在するような場所ではなく、ソフトによっていつも動いている場所でありたい。いつも更新し続けることのできる場所であるのが理想的。では、そういう場所であるためにはどうするのか。

Q1を考える上で、規模感のイメージは重要かもしれない、という議論もありました。中﨑さんからは、地元で実際に動いている人たちの共犯関係みたいなものの存在がとても重要、という指摘がありました。誰に言われなくとも俺はこれやるよって覚悟している人間が一人いるだけでプロジェクトというのは動くものだ、とも。森さんもその意見に頷きながら、大きいプロジェクトは金があればできるけど、小さいプロジェクトはハラをくくっていなければやれない、とコメント。

レポートは以上です。
reported by 那須ミノル