【イベント報告】小さく継続して、ボールを遠くに投げてみる 福井で仕事をつくる人たちvol.2 ゲスト:「うらのこうの」田上夏伊さん
real local福井が新たに始めた企画「福井で仕事をつくる人たち」第2回目を開催しました。
企画趣旨はこうです↓
U・Iターンしてきた30歳前後が、福井の各地域で仕事をつくろうとしている。
福井で仕事をつくること。それは、ここで生きていくという意志の表れでもある。
誰かに頼まれたのか、自主的なのか。こりゃ一体何が起こっているのか?
「各地でぽこぽこと湧き始めた人たちのことを、もっと知りたい。個々の活動を、横につなぎたい」
そんな素朴な思いで始まった30歳前後の当事者による横つなぎリレートーク企画。
10代で東日本大震災、20代でパンデミックを経験した世代が、いま、地方でどう生きているのか。
泥臭さも、迷いも、前進する時の糧も赤裸々に、自分たちの言葉で語る仕事づくり実践のリアル。
※第1回目の記事はこちらからご覧いただけます。
第2回は2026年3月27日に開催。
1回目の開催から季節が進み、春のあたたかさが感じられる日でした。

今回のゲストは、福井市で設計事務所に勤めながら「うらのこうの」として活動する田上夏伊さん。
2021年に南越前町の地域おこし協力隊として着任してから現在までの約5年間を、出来事・感情・思想という3つの視点から振り返っていただきました。
なお、この記事では今回の聞き手である山本がトークの一部を抜粋してご紹介しています。
イベント全編は動画アーカイブでご覧いただけます。
記事の最後にご案内がありますので、気になる方はぜひそちらもご覧ください。
【ゲスト】
田上 夏伊さん|建築士(株式会社RIPEN所属/うらのこうの代表/元南越前町地域おこし協力隊
1996年生まれ、福井県福井市出身。横浜国立大学卒業、同大学院修了。コロナ期に帰福を決意。在学中に研究対象としていた「エコミュージアム」の実践を目指し、新卒で南越前町へ移住。2021年4月より地域おこし協力隊として「移住関係人口創出業務」に携わる。 2024年3月、南越前町河野の魅力を紹介するローカルガイドブック「うらのこうの01-LOCAL STUDIES-」の発行をきっかけに、「うらのこうの」としての活動体が発足。現在は建築設計業務の傍ら、住民を案内役としたまち歩きイベント「のこのここうの」の企画開催、ガイドブック「うらのこうの」の発行を継続している。
(※うらのこうのの活動紹介はインスタグラムや記事最後にあるアーカイブ動画をご覧ください!)
【聞き手1】
山本響|大野の印刷・編集室 みなと /大野市地域おこし協力隊
1998年生まれ、神奈川県出身。2023年5月新卒で地域おこし協力隊として「まちなか賑わい創出業務」に着任。 活動の一環として、まちなかの空き家を改修し「大野の印刷・編集室 みなと」を立ち上げ、制作伴走やワークショップの運営などを行う。
【聞き手2】
高橋 駿介さん|PLAYCITY 理事/合同会社LIGHT HOUSE 代表社員
1996年兵庫県生まれ。2016年大学進学を期に福井へ引っ越し。坂井市三国町にて茶ノ下旅館の経営、湊ノ芸術祭共同主催、また福井市中心市街地の古ビル運用委託や各地で設計デザイン業務を行う。

色々な場で田上さんの活動報告を聞く機会があり、活動の考え方がめちゃくちゃかっこいいなと思っていました。でも、意外とそこに至るまでの背景や田上さん自身の話は知らないことが多く、話を聞いてみたい!と思い、今回トークのリレーのバトンをお渡ししました!
余談ですが、聞き手の山本は、田上さんと大学の専攻も一緒で、1学年違い。1年間だけ研究室の直属の先輩後輩でもありました。お互い別のきっかけで福井に来て活動する中で、今回はトークの話し手と聞き手としてご一緒できたことがシンプルにとっても嬉しいです!

(前列左端が当時学部4年の山本、後列左端が当時院1年の田上さん)
出来事・感情・思想で振り返る5年間
前半は、田上さんが立ち上げたうらのこうのの活動と、それも含めた5年間の動きを3つの視点で振り返ってくれました。
3つの視点
①出来事編
②感情編
③思想編
1回目のトークの中で使っていたグラフも踏襲してくれて、出来事と感情の揺れ動きをグラフでまとめてくれた田上さん。いい意味でも、悪い意味でも、心がざわっと動いた瞬間を率直に語ってくれました。

途中には今聞くと少し意外だなと感じるエピソードも色々。
田上さん:移住してすぐ、福井にいる凄まじい人たちの活動をみて帰りてえと思った。」
わかる、、、私も、凄まじい人たちに圧倒されて、私にできることってないのでは??と思ったなあ。。
さらに、ローカルフォトのイベントの写真を見せながら、
田上さん:一番手前にいるの僕なんですけど、この時友達が誰もいなくて。
普段色んな人に囲まれて楽しそうに活動している田上さんを知っている人ほど、このエピソードは意外に感じたんじゃないかな〜
田上さん:今までは、いいことばかり話すことが多かったので、こうやってうまくいかなかった話もする機会があってよかった。
運営陣と一緒に、今回のトークイベントの振り返りをしていた時に、こんな風に言ってくれたのが嬉しかったです。
聞き手的に一番面白いなと思ったのが、3つ目の思想編のところでした。
ただ、この記事では抜粋して載せているので、ぜひアーカイブを見てください!!!!!!!
変わらない核
「地域をありのままで受け止める」
田上さんが自身の興味あるものに気づいたのは学部卒業直近。
建築学生は、卒業制作として、自分で対象敷地と課題を設定して、建築で解くということを行います。
田上さんが選んだ敷地は故郷の福井市。
最終的には、悩みまくって、答えもでず、エイっと提出してしまったそうです。
でも、それをみたある先生に「田上くんはこういうことをやりたかったんじゃない?」と言われて、教えてもらったのが和辻哲郎の『風土』だったそうです。

田上さん:この本では、いろんな気候が世界中あるけど、気候によって人と家の性格も変わってくるんだよねみたいなことを直感的に言ってます。人と自然環境とが相互に作用して、今の文化とか生活環境とか自然環境っていうのは成り立っている。
卒業後にヨーロッパ旅行していた時も、土地と人が繋がっているということを漠然と感じる瞬間が多々あって。そこら辺から、自分の表現したかったことはそういうことなのかなっていう風に思い始めるようになりました。
卒業設計に取り組んでいた頃は、やりたいことがうまく言語化できなかったけれど、「風土」に出会ったことで、言葉になったんですね。
そしてさらに、大学院では「エコミュージアム」という考え方に出会います。
田上さん:研究室の先生が取り組んでいて、1つの地域を博物館的に見立てるっていうことをやろうというものです。ある一定の領域の中の自然環境とかが、人間の作用によってガラリと違う風に見える。自分なりに、博物館的に見えるということをトライしようとしてるんだなと解釈しました。そう思えたらすごく面白くて。既存のまちなんだけど、見え方変えただけで面白いよねっていうのがツボでした。
ここら辺はまさしくうらのこうのでやっていることにダイレクトに繋がっている!
今の田上さんの活動の核は学生時代から育まれていたものなんだなということを感じるエピソードでした。
現在、田上さんは建築設計の仕事とうらのこうののような活動をしています。
一見別の領域に見えますが、その根底にあるものは同じだといいます。
田上さん:抽象的ですが、地域全体がありのままの状態で、その人がありのまま過ごしてるのに、ガラリと輝きを持つみたいなことを実現できたらすげえ嬉しいと思う。

まちづくりや活動というと、地域の中に何か新しい場所を作ったり、イベントを起こしたりのように、目の前に手を加えて変化させるものが多いように思います。まちづくりというと、地域の中に何か新しい場所を作ったり、イベントを起こしたりのように、目の前に手を加えて変化させることに目が向きがちだと思います。(もちろんそれはそれで大事なのですが)
しかし田上さんのアプローチは違う。
すでにあるものを肯定し、人の“見方”や“関わり方”に変化を起こしていく。シンプルだけど、実践は難しい。だからこそ、田上さんの姿勢に多くの人が惹かれるのだと思います。
そして、もう一人の聞き手である高橋さんからも、そこについて第2部の中でこんなコメントがあり、激しく頷きました。

高橋:田上くんがやっていることってめっちゃ大きいと思ってて。
僕らだから作れるものみたいなものを差し込みすぎても、その場で暮らしている人たちにとっての再現性がなかったら、それって一過性の盛り上がりに過ぎなくて。
田上くんは、まちの今見えている風景みたいなものに対するスタンスの取り方がかなり丁寧だし、外からの刺激的なものでドカンとやるっていう方法をとってないだけなんじゃないかなと思ってて。
私も、地域にない要素(リソグラフ印刷機)を持ち込んで、地域の中で浸透させていく手法をとっている。聞き手の高橋さんもおそらくその意識があるからこそのコメントだったのかなと思いました。だから私は、地域をありのままに受け入れる田上さんの眼差しと活動に尊敬と羨ましさを感じるのだなと聞いて気づきました。
今回のトーク全編は下記URLからご購入いただけます。ぜひご覧ください!
https://hororijapan.base.shop/items/143265059
今回ゲストと聞き手の感想
田上夏伊(ゲスト)
年度末、送別会シーズン真っただ中の金曜日。仕事仲間と楽しく語らう人々で賑わっているだろう駅前を横目に、PLAYCEでのトークに臨みました。せっかくトークを聴きに来てくれた方々に送別会より楽しかったと思わせたいという、謎の闘志を抱いてました笑
あと、第1回の山本響ちゃんのトークが良すぎて、プレッシャーを感じていました笑(アーカイブ要チェックです。販売されていますよ!)
今回のトークイベントでは「地域で仕事をつくる」という大きなテーマに向き合い、僕自身の等身大の歩みをお話ししました。久しぶりに自分と丁寧に向き合える良い機会になりました。これまで「うらのこうの」として歩んできた道のりは、地域おこし協力隊としての3年間と、その後の2年間。
駿介くんから、地域住民との関係性の作り方について質問があったとき、僕には正直正解がわからないけど、地域や住民さんに興味を向けるということが大事だと思いました。ですが、しっくり来なかったので、「僕が垂れ目だからですかね〜」と答えてしまいました笑
普段は見せない挫折や弱さについても時間をかけてお話ししました。全てが順調だったわけではないという「僕の弱さ」を開いたとき、会場の皆さんと深い部分で共感し合えた感覚がありました。小さな活動をゆっくりと、けれど視線は遠く、大きなものを目指して継続していく。その決意を新たにできた、大切な時間となりました。
山本響(聞き手1)
自分の中の田上さん像が一段階クリアになった気がしました。今まで、ふんわりと田上さんの活動のかっこよさを感じていましたが、田上さんが話し、駿介さんの問いかけなども聞く中で、自分の中で腹落ちした気がしました。印象的だった場面が、回の最後の方に、会場に駆けつけたうらのこうののメンバーが田上さんのことについて色々お話をしてくれた時。最初は田上さんが一人で始めたうらのこうのの活動が、今、それぞれに責任と愛着を持った活動になっていることが、それぞれのメンバーが語る言葉から見え、すごく良いなと思いました。
高橋駿介(聞き手2)
「小さく継続して、ボールを遠くに投げてみる」
「福井で仕事をつくるとは?」という問いから始まったこのトークイベント。早速このように明確な答えを持ってきてくれたことが、本当に嬉しかった。
田上くんは、自身の取り組みをしばしば「小さい」と表現する。一方で、今回はじめて「遠く」という言葉が登場した。この言葉にはどんな意図があるのだろう、とワクワクしながら話を追いかけた。
最初は、イベントの集客規模やエリアの広さ、会場のサイズのことを指しているのかと思った。しかし、私から見れば、彼の取り組みはむしろとても「大きい」。まちを丸ごと博物館にする「エコミュージアム」という考え方。参加者の人数に限らず、対象となるエリアや関わる主体にも制限がない。自分だったら、「大きなことをやっている」と言ってしまいたくなる。
それでも、多くの人と一緒に進むためには、「小さく」続けながら「遠くに」投げる。この姿勢はとても有効な手立てのように感じた。トークの中で「大きいよ」と安易に言ってしまったことを、少し後悔している。
うらのこうののチームマネジメントの面でも、田上くんの姿勢は印象的だった。メンバーとの関係性がとても柔らかい。多くのプロジェクトが立ち上げた個人に依存しがちな中で、うらのこうのでは複数のメンバーが主体的に動き、継続性が保たれている。
一方で、「遠くに投げる」という点では、田上くんへの信頼が確かに存在している。なんてバランスのいいチームだろう。面白い未来を示し、人々をワクワクさせる。その力で信頼を集め、余白を持たせながら、「小さく継続」し、「遠くに投げる」ことに人を巻き込んでいく。
田上くんは、いい仕事をしているなあ。
次回のお知らせ
トークシリーズ「福井で仕事をつくる人たち」は、第4回を開催予定です!
今回ゲストが気になる次のゲストを呼び、今回ゲストが聞き手にまわる形でバトンを繋いでいきます。
第3回目は、2026年4月24日(金)19:00-21:00。ゲストは演劇家のカサマツさん。(開催済)
第4回目は、2026年5月29日(金)19:00-21:00。ゲストはむらかみ道具店の村上捺香さん。
トークイベントのお知らせはこちらのインスタグラムで発信して参りますので、どうかよろしくお願いします!
(文:山本響、編集:川上真理子)
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