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山形の巨樹・古木に会いに行く

連載

2023.03.04

いつのころからか、私は大きな木が好きだ。小学生時代の6年間、モミの木の御柱を祀る神社境内を通って登校していたからなのか。実家にある銀杏の木を見て育ったからなのか。大人になってからも大きな木を見つけては立ち止まり、幹に近寄って樹皮を見つめ、広がる枝葉を眺める。そんな風にしていると、はるか昔から生きてきた木のパワーをもらえるような気がするのだ。

さて、山形は市中に巨樹・古木が数多くのこる都市である。大きな火災や空襲などの影響が少なかったこともあるようだ。
毎年5月初旬、国分寺薬師堂の祭礼にあわせて開催される伝統の「植木市」は、樹木を販売するお店が並び、苗木を買い求めたり大物と呼ばれる庭木を眺めたりする市民で大いに賑わう。
(reallocal山形 わたしの山形日記/薬師祭植木市))

そのような背景もあって、木と人々との距離が近いことはこの街の特徴だ。ある時期山形は「森の都」と言われており、市の観光協会が絵葉書を作ったこともあったようだ。※

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山形市観光協会発行絵葉書の「タトウ(包み紙)」 写真提供:東北芸術工科大学

このご時世、庭に大きな木を植える家も減ってきてはいるものの、今なお山形には塀に囲まれた広い敷地に、立派な植木を持つ屋敷が多い。また、古くからある神社仏閣の境内や地域の公園、学校構内にも巨樹や古木が残存する。一部には県や市の天然記念物に指定されて保護されているものもある。日頃は通り過ぎてしまう、ごく身近にある山形の木々に会いに出かけた。

No.1 専称寺の大イチョウ(山形市緑町)

山形の市街地に、お寺が建ち並ぶエリアがある。旧町名は寺町。
そのなかでも、ひときわ大きなお寺が「最上山専称寺」。もともとは天童市高擶にあったそうだが、最上義光公がわずか15歳で処刑された愛娘、駒姫の供養のために山形に移し、菩提寺としたとのこと。本堂の大伽藍、梵鐘や鐘楼などの歴史的建造物をみるのも訪れる楽しみの一つである。

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五十七万石の大藩、最上家にふさわしい大伽藍。正式名称「最上山専称寺」 元禄時代に建立された本堂は山形市指定有形文化財。
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梵鐘および鐘楼 山形県指定有形文化財。

大イチョウ

境内にある市指定の天然記念物の大イチョウ(雄株)。
別名「雪降り銀杏」といわれるが、2023年の1月上旬は比較的暖かい日が続いており、降雨のため雪も溶けて秋に散ったイチョウの葉の絨毯が見られた。

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落葉した冬場は樹形が露わになる。 天をつかむように上に向かって伸びた枝が幾つも重なる。
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一歩一歩、ゆっくり木に近づいていく。イチョウの枝はポキッと折れやすいので事故を避けるため近づきすぎないように気を付ける。
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樹皮をモノクロ写真にして記録。樹種によって異なる”肌合い”を楽しむ。

1月下旬、雪が降った日に改めて撮影。
大イチョウの横にある築山ではソリ滑りを楽しむ園児たちの姿が見られた。大きな木の下で育つ子どもたちは、大人になってもこの場所で遊んだ記憶は残るのだろうか。ふとそんなことを思った。

山形の巨樹・古木に会いに行く

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大きく広げた枝が雪に映える。黄葉の最盛期に、また訪ねてみよう。

境内にある案内看板に「注意書き」が掲示されていた。観光目的で気軽に訪問できるお寺ではあるが、ここに書かれているようにお寺の檀家や信者の方、隣接する幼稚園に迷惑をかけることなくマナーを守った参拝を心掛けよう。

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【浄土真宗大谷派 最上山専称寺】  
山形県山形市緑町3-7-67 (電話)023-622-5981)
山形駅から徒歩25~30分
バス停「北高前」から徒歩5分
ホームページ
https://www.senshojigakuen.jp/temple/

 

No.2 熊野神社の夫婦欅(山形市六日町)

山形市六日町にある熊野神社。
延文3年(1358)山形城主、斯波兼頼公が行蔵院を遣わし、紀州熊野大権現を勧請し城内に祀ったことを草創とする。熊野神社が建つ場所は、山形城の鬼門の方角であり、災禍から城下を守る鎮護社として元和7年(1622)最上義俊公の時代に現在地に遷座されたそうだ。
同じく山形県内、「三大熊野」といわれる南陽市宮内の熊野大社には、これまで何度か参拝していた。ところが、山形市内にある熊野神社は市街地のどこにあるのか知らなかったため、地図で場所を調べての初訪問となった。

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本殿正面。参道の両側にイチョウの木が立つ。

夫婦欅(めおとけやき)

樹齢500年程といわれる欅の御神木。家庭および夫婦円満のご利益があるとのこと。我が家の安寧のため、ここはしっかりお参りしておかねば。

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落葉した季節のため、背景にマンションが建ち並ぶ景色。この欅の木はマンションができるよりはるか昔からあり、今とは全く異なる景色が広がっていたであろうと想像する。

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数年前から11月22日の「いい夫婦の日」に合わせて夫婦感謝祭が開かれており、20組ほどの夫婦が大絵馬に感謝のメッセージを書いて奉納するそうだ。今年の感謝祭には夫婦そろって参加したい。

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本殿正面屋根下にある卯年の絵馬。これは娘が美術部員の仲間と一緒に制作して奉納したそうだ。この絵馬を見ながら今年一年の飛躍および家族皆の健康を願い、手を合わせた。

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夫婦円満を願う夫婦欅の御朱印。こちらの限定御朱印は今年の予定数が終了しており、来年正月から頒布予定とのこと。
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緑の葉に覆われた夫婦欅。涼しげな木陰をつくる。
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写真提供:六日町熊野神社

市街地にある神社は、日々の散歩コースになる等、信者以外の地域住民にとっても身近な「憩いの場所」である。私もこうして境内にある木々に会いに行き、山形の神社仏閣を巡る日常を楽しんでいる。

【六日町熊野神社】(山形城鬼門鎮護社)
御祭神:須佐之男命 速玉之男命
山形駅から徒歩30分
バス停「新築西通り」から徒歩4分
ホームページ(里之宮湯殿山神社公式WEBサイト内)
https://www.yudonosan.jp/kumano.html

※参考
小形利吉著 『樹木が語る山形の歴史』 (昭和50年 pp.4-5序文)