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Uターン次女の就農日記(6)/畑を一歩飛び出して

連載

2024.02.27

2023年4月。山形にUターンした。山形に戻るのは、高校卒業以来。

Uターンするまでは、大学卒業から6年間、公務員として働いてきた。29歳のアラサーにして、脱・公務員からの就農。退職前、周囲からかけられた声の中で多かったのは「頑張ってね」という応援と、「辞めるなんてもったいない!早まるな!」という声。後者は、主に身内や親戚から(笑)。どちらの声もありがたく頂戴して、約10年ぶりに山形に戻ってきた。

農家1年目の昨年は、栽培技術を覚えることで一杯一杯だった。覚える技術は尽きないが、2年目となる今年からは少しずつ新たな取り組みをしていきたいと考えている。

というのも、現在は主に農協や市場を介して販売しているため、誰が食べてくれているか、食べた結果どう感じてくれたのかが分からない。朝から晩までどんなに汗水垂らして農作業に追われても、市場の相場で値段は決まり、今はそれが我が家の果物の価値をはかる基準となっている。いったい誰のために、何のために農業をやっているのか、時々分からなくなる時さえある。
もっと消費者の声を直接聞けたり、逆に消費者にも自分が口にする農産物がどんな環境でどんな思いで作られたのかを気軽に知れるような農業を展開できないだろうか。

その方法として、将来的に、観光果樹園のように自然の中で果物を五感で味わってもらったり、カフェなど飲食店というカタチで生産者と消費者が直接繋がる環境を作れないだろうか、など悶々と考えていた。

Uターン次女の就農日記(6)/畑を一歩飛び出して
交流会の様子。県内での飲食店経営についてゲストから講演。

そんなとき、山形市にて「地域の集いの場になる!飲食店のはじめかた」(主催:スタートアップステーション・ジョージ山形×若者支援コンシェルジュ(山形県事業))という交流会があることを知り、参考までお話を伺ってみよう!と軽い気持ちで交流会への参加を決意した。

交流会当日。県内でカフェやバーを経営する方の創業話や、空き家を活用した飲食店のプロデュース等について色々とお話を伺うことができた。初期費用や資金集めの方法、経営する上で考慮した方が良いことなど、具体的な声を聞くことができてとても大きな収穫だった。しかし本当の収穫は、その後に行われた参加者同士の交流だった。

周りの参加者の方に「農業をやっています」と伝えると、「農業やってるんですか!?良いですね!」「ぜひ果物を使わせてください!」といった好反応を多く頂いた。素直に嬉しさを感じると同時に、驚きに包まれた。なかには、農業への期待を大きく感じている方もいて、農業×観光、農業×宿泊業、農業×〇〇という形で、農業を起点に異業種の方と連携して新たな取組みもできることを知り、改めて「農業ってやっぱり面白いかも!」と新しい可能性を感じさせてもらった。

この交流会で知り合った、村山市で「クロスギルド」というバーを経営されている新関さんにウチのりんごを使ってドリンクを作ってもらうことになった。ドリンクにするので、傷がついていても構わない!という。

見た目も良く、美味しいものを販売するとなると、どうしても市場に出せない規格外のものが一定数出てくる。大抵は「訳あり商品」や加工用として安売りしたり、自家消費したり、最悪の場合は畑に捨ててしまう人もいる。少し傷がついているだけで行き場を失ってしまうのだ。我が家の傷がついたりんごも同様に、家族のお腹に収まるはずだったから、有効に活用してもらえることはとても嬉しい。

なるほど、農家として良いものを作って売るということはもちろん大事だが、どんなニーズがあるかを把握することに大きな可能性が隠れていると気づかせてもらった。

Uターン次女の就農日記(6)/畑を一歩飛び出して
規格外で販売できなかったりんごをくし切りに。

今回我が家のりんごを活用して作ってもらったのは、ノンアルコールのホットサングリア。りんごをくし切りにし、他の果物やスパイスと一緒にじっくり煮込む。飲ませてもらうと、りんご自体のほのかな甘味に加え、果肉に他の果物の酸味やスパイスの風味が染み込んで、とてもジューシーな仕上がりとなった。少し手を加えて調理するだけで、こんなにも美味しいとは!と感動した。

Uターン次女の就農日記(6)/畑を一歩飛び出して
他の果物とスパイスを加えて煮込む。煮込まなくても美味しそう。
Uターン次女の就農日記(6)/畑を一歩飛び出して
果物の甘味や酸味、スパイスが混じり合って贅沢な味わいに。

作ったサングリアは、新関さんが参加した地域の冬まつりでも提供され、たくさんの方に好評いただけたという。「美味しい!」という声を直接いただけることこそ、農家にとって一番のご褒美である。

Uターン次女の就農日記(6)/畑を一歩飛び出して
冬まつりでホットサングリアを提供。

興味本位で参加した交流会から、こうして普段は出会わない人と繋がって、私1人では成し得なかった新たな取り組みも生まれ、農業の新たな可能性を体感することができた。これから迎える農家としての2年目。技術を磨くことも大事だが、新たな出会いを重ねていくこともまた大事だと知るきっかけをもらった。今年はどんな人と出会えるだろう。たまに畑を飛び出して、出会いを紡ぎながら、少しずつ新しいことにチャレンジしていきたい。

◼️スタートアップステーション・ジョージ山形
https://www.george-yamagata.jp/

◼️若者支援コンシェルジュ やまがたおこしあいネット
https://yamagata-okoshiai.net/

◼️村山市 Barクロスギルド Instagram