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鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)

施工事例

2020.12.25

「鎌倉R計画」は「鎌倉R不動産」の建築部門が過去に施工を行った事例集です。今回は、2020年1月にリノベーション工事が完了し、現在は定額で日本全国に住み放題という住宅のサブスクリプションサービスを展開する「ADDress」の鎌倉の拠点となっている「森の図書室」の事例を全2回に分けてお送りします。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
歴史を継承することまで考えられた空間に生まれ変わった(写真:八幡 宏)

「森の図書室」の決済と地主との建築関係の打合せをやっとのことで終え、ここからは建築部門の出番です。
この物件は昭和29年にまず片流れ屋根の部分が建てられ、そこから増築を繰り返えしてきた建物です。建物自体の持つポテンシャルは高いものの、いわゆる古民家からシェアハウスへのリノベーションにはやはり、いくつかの高いハードルが感じられました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
before|建物全体の傷みが激しかった

築年数の古さに加え空き家の期間が長く、このジメジメと湿気が多い北鎌倉の森の中では、建物全体の修繕と、安全に使うための工事が不可欠でした。

工事はまず、建物の周りの森・竹林を雰囲気を損なわない程度に残して伐採することからスタートしました。大きく育ちすぎた庭木、竹林など、建物は木に覆われてほとんど日陰になっていたため、このままでは森の心地よさよりも陰湿な雰囲気が勝ってしまいます。
そこで、まずは周りの竹林を伐採し、崩れた斜面に土留めを施し、大きくなりすぎた庭木を徹底的に剪定しました。
すると日差しや風が抜け、開けた斜面の下には、JR横須賀線の電車が走るのがはっきりと見え、北鎌倉の線路向こうの山々の風景も眺めることができるようになりました。
庭木は、果樹や花が咲くものなどを残して、季節を感じられる趣ある庭へと仕上げました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|建物とその前の庭部分。すっきりと整えられた(写真:八幡 宏)

日差しと風が抜け、建物が呼吸を取り戻しつつある。ここがスタートだ、と職人たちとうなずき合って、初めて建物の修繕・改修工事が始まりました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|風と光が抜けるリビングへと生まれ変わった(写真:八幡 宏)

建物に陽の光が差し込むようになってからは、外壁や基礎の補修、そして内装という順番で建物の修繕、改修工事を開始しました。予想していた通り、空き家の間に動物の被害や湿気での建物の劣化等が進み、建物自体の修繕の工事に多くの時間を費やすことになり、工事は難航。職人たちが力を合わせ、修繕に挑みました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|メインの建物入口(写真:八幡 宏)

外壁、屋根などの工事とも並行しながら内装の工事にも取り掛かります。もともとの建物に残されていたたくさんの本棚など、古民家ならではの素材の良さを利用しながら、この建物を生まれ変わらせる。そのことを念頭に置いていて内装を計画していきました。かつ、今回は建物をシェアハウスとして機能するものにしなくてはなりません。部屋数を確保し、快適な水まわり設備を充実させること。そして、安全に夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるようにすることが課題でした。
こうして、工事着工から約1年後、「森の図書室」が生まれ変わりました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|キッチンは広めで使い勝手もいい(写真:八幡 宏)
鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|2階のリビングも開放的(写真:八幡 宏)

生まれ変わった「森の図書室」。シェアハウスとして利用するため、スペックとしては、鍵のかかる個室を2部屋、そしてドミトリーの部屋が2部屋。水まわりの設備も充実させ、大人数でも利用できるキッチン、洗面3か所、トイレ2カ所、シャワーブース2カ所、ユニットバス1カ所を配しました。東西に連なる個室には外からアプローチできるよう、外廊下を設置し、庭にも通路を配して鎌倉らしく仕上げました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|キッチンとつながる広い空間に人が集まる。中央のテーブルは本棚を加工して作ったもの(写真:八幡 宏)

日当たりのいい空間として大きく生まれ変わったのは、リビングダイニングではないでしょうか。もともとの建物の3層スキップフロアの構造をそのままに、吹抜のある大きな空間を再生しました。日当たりもよく、人が集う心地の良い空間で、2階からはもちろん北鎌倉の山を遠くに見る素敵な眺望が楽しめ、集まった人たちが思い思いに寛げます。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|入口付近から。もともとのスキップフロアを再生した(写真:八幡 宏)

改修工事の際には、古民家ならではの材料の良さを生かしました。この建物には、たくさんの本棚があったのですが、ラワン材でできており、捨てるにはもったいない。そこで、家具等として再生することにしたのです。
本棚は一度解体したのちに、釘などを処理した上で、キッチンカウンターやダイニングテーブル、棚や手摺などに再利用しました。
加工方法は様々で、本棚を組まれた状態のまま切断して、そのまま置いた作業カウンターや、板材として美しいところだけを組み上げる棚や洗面、または、ホゾ穴などを埋めながら組み上げたテーブルなどに生まれ変わらせています。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|洋室部分(写真:八幡 宏)
鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|和室部分(写真:八幡 宏)
鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|本棚を残した洋室(写真:八幡 宏)

そして、工事中の打合せの中で生まれたコンセプトがあります。
「ここに立ち寄った人が本を残していくことができる。本をシェアすることができる拠点にする」。
これは、この建物の歴代の所有者が本にまつわることを仕事にしていたことや、もともと北鎌倉のこのエリアには、文学や考古学を専門とする人々が多く集ったという歴史があったからで、その歴史を継承していこうということになったのです。
そこで、リビングの共用部に大きな本棚を設置し、ここに来た人が自由に本を読み、そして自分が持ってきた本を置いていくことができる仕掛けをつくりました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
after|いたるところに本棚があり、そこに本を自由に置く(写真:八幡 宏)

着工から約1年という長い時間を経て、生まれ変わった「森の図書室」。タイトル通り、いまでは多くの利用者が北鎌倉の森の緑に癒され、本をシェアしていく拠点に生まれ変わりました。

鎌倉R計画|よみがえった「森の図書室」(後編)
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参考:「ADDress|鎌倉B邸」