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山形県村山市・移住者インタビュー/大山裕貴さん「まさかこんなことになるとは」

移住者の声

2021.07.05

#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回は名古屋から山形県村山市に転入してこられた大山裕貴さんです。

山形県村山市・移住者インタビュー/大山裕貴さん「まさかこんなことになるとは」
今回の主人公・大山裕貴さん。いまの住まいから程近い、自ら落花生を植えた村山市の畑にて。

大山裕貴さんが村山市への転入届を提出したのは、2021年5月のGW明け。名古屋の地を離れてはじめて山形に足を踏み入れた日から、もうすぐ丸1年になろうとしている頃のことでした。それは「試しに暮らしてみる」段階から「ここで暮らしていくことを決めた」段階へとシフトしたことの表れでもあったのでしょう。

大都市から東北の片田舎への移住定住の好事例でもあり、リモートワーカーゆえに可能な新しいライフスタイル確立の成功例でもあり。しかし、実際のところ、本人にとっては「本格的にここで生きていくことになるというのは、かなり想定外の出来事」だったと言います。さて、それは一体どういうことなのか? とりあえず飛び込みでやってきたこの地で、裕貴さんの身に起きた意外な展開とは? インタビューがはじまります。

ACT1/デビューしたばかりのさくらんぼ農家
井上裕介さんを手伝うため、単身東根に乗り込む

名古屋では広告代理店に勤め、Webデザインや企画の仕事をしていました。10年ほど勤務しましたが、コロナによって名古屋市内の実家からのリモートワークが日常化すると、「どこにいたって仕事ができる」という感触を持ちました。それで、会社と相談して雇用形態を変え、ぼくはフリーランスとなり、外注先として仕事をもらうことになりました。

代理店時代には農家さんのネット販売をサポートする仕事もしていて、そのときから繋がりのあったひとりの農家さんから「山形で地域おこし協力隊をやっていたうちの息子がさくらんぼ農家として独立するので、サポートしてやってほしい」という話がありました。

ぼくはせっかくフリーランスになったし、農家さんの仕事がどういうものか知りたかったし、じぶんの仕事をやりつつ農作業をサポートするというのもできそうな気がしたし、面白そうだと思いました。それで、2020年5月、寝泊まりして生きていけるだけの荷物を抱え、名古屋から、新規就農したばかりのさくらんぼ農家・井上裕介さんがいる東根市に来てみたんです。

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さくらんぼ農家の井上裕介さん(左)と。井上さんも東京の不動産会社を辞めて東根市にやってきた移住者。東根市で地域おこし協力隊としての活動を経て、2020年にさくらんぼ農家としてひとりだちしたばかりだった。

実際やってみてわかったのは、この時期のさくらんぼ農家さんって本当に忙しいんだってこと。朝4時にはじまって、収穫して箱詰めして、また収穫して箱詰めして、出荷伝票書いて、、、。それに加えて井上さんは農家1年目だからわからないことも多いし、不慣れなこともいっぱいあるし、もちろんぼくもわかんないことだらけだし、毎日がほんとうに目まぐるしかったですね。それでも、前年まで東根市の地域おこし協力隊だった井上さんには協力隊仲間がたくさんいて、大石田とか尾花沢とか他地域からわざわざ手伝いに来て協力してくれて、みんなで必死に働いたことで、2ヶ月ちかい繁忙期をなんとか乗り切る、という体験ができました。

ACT2/よりよいプライベート空間を求めて
村山市の民泊工房FUu〜 に拠点を移す

そんな怒涛の忙しさのなかでも、ぼくにはWebデザインという自分の仕事もあったので、お昼のちょっとした休憩時間にPC作業をしたり、移動する車の助手席で仕事したり、夜になってから寝るまでの時間でやったり、、、という感じでなんとかさくらんぼの作業もこなしながら仕事していました。

ただ、ぼくは住む場所もないまま井上さんの部屋に押しかけちゃったので、ちいさい部屋で男ふたりが生活する暮らしはかなり窮屈なものでした。プライベートな空間がどうしてもほしくて押入れにこもった時期もあったくらい。

そんな日々を過ごすうち、だんだん「あぁいよいよ崩壊するなぁ」というところまでメンタル的に追い込まれてきまして(笑)。そんなとき、地域おこし協力隊をやっていた仲間のひとりから、東根のとなりの村山市にゲストハウスがあると教えられました。それがここ、民泊工房FUu〜でした。

ぼくは、じぶんだけのプライベート空間をもつことができるのがすごく嬉しくて。それで、さくらんぼの繁忙期が終わってからはこの場所に拠点を移し、また新たな気持ちで日々をスタートさせることになりました。

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民泊工房FUu〜は、村山市の地域おこし協力隊の経験をもつ大山芙由美さんが営んでいる宿泊施設。まるで、七宝焼を楽しむための合宿所のようなところ。山形県内各地の地域おこし協力隊もよく集まる場所だ。

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ACT3/コワーキングスペースkokageで仕事しつつ
近隣の農家さんたちと繋がり、サポートする

さくらんぼの仕事を通して地域おこし協力隊の人たちと仲良くなれたことで、みんなから東根、村山、尾花沢、大石田あたりのいいところを教えてもらったり、案内してもらったりするようになりました。協力隊のみんながもっていたネットワークや知恵に、ぼくはものすごく助けてもらった気がします。

ふーちゃん(民泊工房FUu〜を営む大山芙由美さん)も、もちろんそのひとり。おかげで、はじめてこのあたりに温泉があることも知りましたし、日々の食べ物がめちゃめちゃ美味しいことも知りました。このあたりはすごく農家さんが多いんですけど、なかには季節の野菜や果物を、おすそわけで玄関に置いていってくれるひともいて。それがまた感動的なおいしさなんです。

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のんびりとした畑と緑の風景が静かに広がっている。

村山市にはkokageというコワーキングスペースがあるので、仕事するときにはよくそこを利用しました。ここから車で15分くらい。ネット環境もいいし、仕事のモードにもなれるので、集中できてよかったですね。

そんなふうにして少しずつこの地域に馴染むうち、だんだん周りの農家さんが「このひとにお願いすると、インターネットで農産物を売ってくれるらしい」って、ぼくのことをなんとなく知ってくれたようで、「ちょっと手伝ってくれない?」「ネットで売ってくれない?」「パソコン直してくれない?」といった相談をもらうようになりました。

ぼくのほうは自分の仕事の時間はあるていど調節できるので農作業のサポートをすることもできるし、ネットのお手伝いもできるので、けっこううまくハマる環境かもなっていう手応えを感じています。これから少しずつでも関係を深めたり広がったりして、もっと多くの農家さんの役に立てたらいいなあと思っています。

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ACT4/大山芙由美さんと結婚。婿となり、
村山市民となり、仕事しつつ、畑を耕し…

そんな感じで、昨年の初夏に東根に来てから、夏には村山に来て、そして秋を迎え、冬のものすごい豪雪も、毎日の雪かきも経験しました。

このごろは、畑を借り、じぶんで畝を作って、タネを撒いて、畑仕事をやったりもしています。パクチーの種を植えたり、落花生の種を植えたり、じぶんの好きなものを育てています。こっちにきてから食べた塩茹での落花生の美味しさに感動してから、じぶんでイチから実際に育ててみたくなったんです。リアルにやってみることで理解できることがたくさんあるし、ここにいるからこそできることもたくさんある。そういうこと、どんどんやっていきたいです。

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2021年4月、ふーちゃんと入籍し、婿になりました。大山という姓に、最近なったばかりです。村山市役所に婚姻届出しに行ったら、担当の方から「市長に挨拶しに行っておいで」って言われて…、それで「結婚しました」ってふたりで市長に報告してきました。市長さんとの距離がこんな近さってすごいですよね。

行政のひとたちもみんな距離が近くて、いつも「こういうことやりたいんだけど」ってことを言ったりすると、「面白そうだからやってみなよ」ってすぐに応援してくれたりするんです。そういうのはすごくありがたいし、安心感があります。

それにしてもまさか結婚とは…、こんな展開になるとは思わなかったので…。じぶんでも驚いているんです。もちろん親も驚いていましたね。

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七宝焼のオンラインサイトを一緒につくるなど、芙由美さん(右)とは夫婦であるとともに、仕事仲間でもあるのだ。

そういえば、ぼくが最初に山形にくるきっかけだった井上くんも、さくらんぼを食べてそのおいしさに感動して、さくらんぼ農家になろうと決意して東根に来ちゃったひとなんですけど、そんな彼も最近やまがたのひとと結婚しました。なんか、人生ってすごいですよね、いろんなものが連鎖して、いろんなふうに展開していくんですね。

ここには感動するほどに美味しい野菜も果物もあるし、そういうものを分け与えてくれるこころ優しい人たちもいて、畑もあるし、やりたいことがあればパッとやれる土地も自由さもある。そんなかでじぶんの基盤をつくりながら、お互いの仕事をゆるやかにサポートしあえるような関係性をますます大切にした人付き合いをしながら、四季折々を味わう日々を楽しんでいこうと思います。

text 那須ミノル
photo 伊藤美香子

コワーキングスペースkokage
民泊工房FUu〜