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山形移住者インタビュー/直感と縁を大切に、まずは行動する。小島康平さん

移住者の声

2021.09.08

#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは小島康平さんです。東京から中国、アメリカを経て2020年春に山形市に移住。きっかけは山伏修行と山形で活躍する若い人々との出会いだったといいます。

インタビューの冒頭で「先日は3日間、山伏修行に行ってきました!」と話す小島さん。ハツラツとした表情で、山形暮らしを楽しんでいる様子がまっすぐに伝わってきました。ダイナミックに世界をまたいで活動してきた小島さんの目に、山形はどのように映っているのでしょうか。

会話を通じて感じたのは、「直感と縁を大切に、まずは行動してみる」というシンプルながらも強いメッセージ。これまで自分の中にあった感覚や固定概念が、大きく揺さぶられた気がしました。

山形移住者インタビュー/直感と縁を大切に、まずは行動する。小島康平さん
山寺の英語ガイドをつとめる小島康平さん。山寺を一緒に登りながらインタビューを実施。

アジア、欧米を経て山形と出会う

出身は東京で都会育ちでしたが、幼少期から父がスキーや山登りに連れて行ってくれて、自然の中で遊ぶことが大好きでした。

小・中学校はラグビー部で、中学を卒業してすぐに15歳でラグビーが国技のニュージーランドのクライストチャーチに留学しました。学校では現地の友達だけでなく、台湾や韓国、マレーシア人などアジア人留学生の友達が多くできました。それまでは英語圏への憧れが強かったですが、留学を体験して自分は日本人である前にアジア人なんだという認識が強くなり、次第に興味がアジアに移っていきました。

帰国後、ニュージーランドで出会った台湾人の親友家族と中国語で会話したいと思い、中国語の勉強を始め、台湾人の親友の家にホームステイしたり、大学では上海の大学に短期留学もしました。

山形移住者インタビュー/直感と縁を大切に、まずは行動する。小島康平さん

もっと中国や台湾でより多くの友達をつくり「アジアの架け橋」となることがしたいと思い、就職活動では、中国やアジアに行けるチャンスがある企業を探し、「これからはアジアへ」と入社案内に書いてあった広告会社に就職しました。

入社8年目で念願の中国赴任が決まり、2010年から8年間を中国の広州で過ごしました。プライベートでは、中国から週末や休みに一時帰国しては、中国、台湾、香港人の友達を連れて日本を案内することが増えていました。

友達はみな喜んでくれましたが、海外の友達のほうが日本全国を旅していて詳しく、日本の地方のおすすめを聞かれても、自分は行ったこともなかったり、知らないことが多いことに気がつきます。中国で暮らしながらも、魅力ある日本全国のことをもっと知りたいと思うようになりました。

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2018年に中国から帰任。その半年後に結婚、妻のアメリカ留学に伴い、会社を辞めてアメリカ西海岸のロサンゼルスへ。独立してからは、アメリカで広告撮影などコーディネートの仕事をしながら、友人の会社を手伝うことになりました。世界にまだ知られていない日本の地方の魅力を「新しいディスティネーション」に変えて、「地域と外国人を結ぶ仕組み」を創造することがミッションの会社で、その最初のプロジェクトが山形県の精神文化体験を海外に伝える事業でした。

2018年9月に山形を訪れました。山形といえば、子どもの頃に一度だけ蔵王にスキーをしに行った記憶があるくらい。ほとんど縁もゆかりもなく、偶然訪れることになった山形ですが、初日から参加した出羽三山での山伏修行で大きく人生観が変わることになったのです。

感じること、まずは行動すること

山形県精神文化ツーリズム事業では、山伏修行体験や山形の精神文化の魅力を海外に伝えることが目的。その後、フランスに行って山形の魅力を伝えるために、まずは自分自身が山伏修行を体験してみるというわけです。

山伏修行を通じて、事前に「頭で考えること」よりも、まずは「身をおいて、自分で感じること」の大切さを体験しました。修行の内容については、安全面を除いて、事前の説明はありません。修行参加者は国籍や性別、年齢、所属などは一切問われず、自己紹介もしません。お互いに単なる“ひとりの人”として参加します。

修行中は一切、会話をせず、ただ自然の中に身を置いて、祈り、感じることに集中します。修行の3日間は携帯電話をまったく触らず、話していいのは「うけたもう」の一言のみ。

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2021年7月出羽三山を巡る大聖坊山伏修行での月山抖擻(提供:小島さん)

修行中には、台風で大雨にあったり、木が倒れ山道が通れなかったり、予定通りにいかないことも多々ありますが、どんな時でも「うけたもう」。どんな状況でも、目の前のことを受け入れていきます。修行の最初は不安もありましたが、大聖坊の星野先達や、山伏の先達助手、一緒に参加したさまざまな国籍の方々を心から信用することで安心して、先が見通せない状況を受け入れることを身を持って体験しました。

それまでは、仕事やプライベートでの旅行など、事前に入念に調べて準備をしたり、何度もリハーサルをしたり、頭で理解してから行動することが、働く中で無意識のうちに身体に染み付いていましたが、学生時代に留学していた頃の自分は、頭で考えすぎずに、思い立ったらすぐ行動してなんでも挑戦してみるタイプでした。

不安よりも好奇心が強く、15歳でニュージーランドをバックパックの旅をした時のことや、直感型だった自分を思い出し、山伏修行を通じて「これでいいんだ」と肯定してもらえた気がしました。

自然に感謝し、自然と共に生きる。
日常を大切にする山形の人々

山伏体験によって、「直接自ら感じ、体験すること」の大切さを改めて感じ、その後も精神文化プログラム醸成事業のため、何度も山形を訪れて、出羽三山だけでなく、善宝寺、山寺、天童など、通訳や旅のコーディネートをして、山形のいろんな場所を巡りました。

その中で、西川町の出羽屋4代目の佐藤治樹さん、若女将の佐藤悠美さんと出会います。何度か訪ねるうちに親しくなり、2019年の夏には、初めてプライベートで出羽屋さんを訪れました。

山菜採りの名人渋谷保男さんと共に月山の山歩きをしながら、月山の山の恵みの豊かさを知り、月山の青空の下で佐藤治樹さんや佐藤明希菜さん、出羽屋の皆さんが心を込めて調理をしてくれて、「プルピエ」の佐藤洋一郎さんが生産者の想いを持ってナチュラルワインをペアリングしてくれ、「リッツガーデン」の安孫子陽平さんが山の恵みでオリジナルカクテルをつくってくれて。みなさん30代前半で活躍されている若手の方々ばかりが創り上げる「月山テロワール」。刺激的で衝撃的な出会いでした。 

出羽屋の佐藤治樹・悠美さんは月山の自然の恵みに感謝しながら、自ら山に入り、山菜について先代からの学びを継承しながらも、どうやったら子どもたちの世代により良い未来を残していけるか、持続可能な取り組みを実直にされていて尊敬しています。プルピエの店主佐藤洋一郎さん、シェフの武田悠さんも生産者に敬意を持って、周りの人たちを大切にしながら日々営まれている魅力いっぱいの大好きなお店。目の前のことに真摯に向き合うみなさんの姿勢から、学ぶことがたくさんあります。

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出羽屋にて、佐藤治樹・悠美夫妻と長男治磨君、プルピエの佐藤洋一郎さんと(提供:小島さん)

移住するまでの2年間、アメリカから山形へ8回は通ったと思います。時間を重ねるごとにもっと知りたい、もっと彼らの近くに1年の季節を通して長くいたいと、訪れる度に離れがたい気持ちが強くなっていきました。

夫婦共に東京出身ですが、留学を終え、日本に戻ったら日本のどこに住もうか?と常々話していました。僕は山形に魅了されていたので、妻を連れて2度案内してみたところ、山形の自然と優しい方々をすごく気に入ってくれて、2020年春にアメリカ留学を終えて、移住することにしました。

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自然を近くに感じる日常

今は山形市の十日町に住んでいます。山形駅や七日町にも近いエリアで、まちなかを自転車で巡ることが多いです。夫婦で経営しているコーヒー屋さん、レストラン、パン屋さんなど、個人経営の素敵なお店がたくさんありますね。

家は一軒家ではなく、アパートに住んでいます。移住者にとって戸建ては雪かきのハードルが高いと、山形に移住されてきた友人の皆さんから聞いたので、アパートにしました。今年の冬はけっこう雪が積もったのですが、駐車場で初めての雪かきを楽しみながらも、安心して過ごすことができました。

自宅の窓からは西蔵王や上山方面の山々が見えます。自然を近くに感じられる、山が見える場所に住みたかったので、窓からの景色を眺めながら毎日幸せを感じています。

移住してから人生で初めて車を買ったので、季節ごとに自然を見に行ったり、たくさんある日帰り温泉や道の駅を巡ったりもしています。先日は南陽にある「くぐり滝」に行ってきました。ほかにも、上山や長井、米沢、尾花沢など、山形市から少し車を走らせるだけで、魅力的な場所や素敵な方々との出会いがたくさんあります。

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季節ごとに多彩に変化する「食」の魅力

「食」の魅力も山形に移住した根幹の部分です。ひとつの季節の中に多彩な変化があって、例えばさくらんぼシーズンの約2週間でも紅さやか、佐藤錦、大将錦、そして紅秀峰などたくさんの品種があることを移住してから初めて知ったり、日に日に直売所に並ぶものが変わります。納豆ひとつとっても、スーパーに行けば豊富な種類があって食べ比べてみたり、天然の山菜が食べられたり。

最近は生産者さんのもとを訪ねて、西川町の細谷信太郎さんの雪下にんじん収穫体験、天童市さくらんぼ収穫お手伝い、南陽市ワイナリーでの葡萄収穫お手伝いなどをさせてもらっています。こうした体験は、やはりここに住まないとできないことですよね。

毎日のように直売所へ行ったり、農家さんや飲食店を巡ったり。山形の友人に紹介してもらって、山形にある日常の魅力や、食の体験を発掘している最中です。

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南陽市ワイナリーにて葡萄収穫お手伝いと、天童市のさくらんぼ収穫お手伝い。(提供:小島さん)

体験をコーディネートし、魅力を伝えていく

仕事は、山形を拠点に日本各地の自然体験、旅の体験コーディネート、そして海外から日本に来る方々の英語、中国語での体験ガイド、アテンドをしています。

今後、山形の自然体験を一つでも多くしたいと思っています。山寺の英語ガイドとしても活躍できるように、山寺英語ガイドの初期メンバーの皆さんと一緒に山形の魅力を日々、発掘中です。

山形移住者インタビュー/直感と縁を大切に、まずは行動する。小島康平さん
出羽三山を巡る大聖坊山伏修行、満行後に大聖坊十三代目当主星野先達と共に(提供:小島さん)

現在はコロナ禍ですが、来年以降には、自らも羽黒山伏になって外国や県外の人と地元の人との交流や体験づくりの機会をつくったり、山形の人と自然の魅力を伝えていければとも思っています。出羽三山、月山や山寺などお気に入りの場所や人、通っている店など、自分が好きなスポット、体験を少しづつ増やしており、それをどんな手段で伝えていくかは検討中です。

まだまだ魅力がいっぱいの山形。今後、長く住み続けたいと思っています。人、自然、食。これからも興味が赴くままに、素晴らしい出会いとご縁に感謝し、楽しみながら動いていきたいです。

取材:中島彩
写真:伊藤美香子