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越前丹南、日常に触れる旅6/お米でつながる食育ツアー

ローカルツアー

2021.09.29

日常に触れる旅と題して、福井県丹南地域のローカルトライアルツアー第6弾を紹介します。アーカイブはこちらからどうぞご覧下さい。

こんにちは!reallocal福井ライター、牛久保です。
今回は、福井の美味しいお米がつなぐ食育ツアーレポートです。
食べることを小さい頃から大切にしてほしいということで、今回のトライアルツアー参加者は、小さな子どもたちとそのご家族です。

玄米を精米して、自分たちで研いだお米を羽釜で炊いて、おにぎりにする。そして精米した時に出た糠でクッキーや福井の伝承保存食「へしこ」を漬けようという企画です。
さて、子どもたちはどんな反応をするでしょうか。

コウノトリが舞い降りる里山は生き物の宝庫!

まず最初に訪れたのは、越前市坂口地区にある越前市エコビレッジ交流センター「風の館さかのくち」です。見渡す限り緑の田園と越前瓦の集落の美しい里山風景が広がります。

越前丹南、日常に触れる旅6/お米でつながる食育ツアー
訪れたのは7月上旬。青々とした田園と空のコントラストの美しい日でした。

センターを案内してくださるのは野村みゆきさん。かつてコウノトリが舞い降りたこの地に、再び舞い降り棲みつくような自然と人との豊かな環境をというコンセプトのもと、長年環境づくりと環境教育に努めています。

「歴史と文化と自然をもっと伝えていきたい」と話す野村さん。今回もお米を炊く前に、この土地の里山環境についてみんなにお話しして下さいました。「コウノトリだけではなく、生き物全体の生態系を豊かにしていきたい。それがコウノトリの舞い降りる豊かな生態系につながります」。

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紙芝居や模型を使って、小さい子供たちが楽しく学べるようにお話ししてくださいました。

坂口地区には、アベサンショウウオやアカハライモリ、ハッチョウトンボなど絶滅危惧種の生き物たちが沢山いるそうです。
今年この地区の野外の人工巣塔でコウノトリが巣をつくり、ひなが巣立ちました。この場所での野生のコウノトリの巣立ちは、取り組みを始めて初めてだったとのこと。「コウノトリが2羽で餌をついばんでいる姿を見て、20年経ってようやく思い描いていた風景になりました」と野村さん。豊かな環境を育むことは、長い年月と地道な活動が必要です。

お米を精米して、羽釜で炊く

簡単な説明の後、早速みんなでお米を炊きます。
まずは精米機で玄米を精米。今回使ったお米はこの地区で育てられている無農薬米です。出る糠も無農薬だから、安心してクッキーや「へしこ」に活用できます。
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お米の一粒一粒を無駄にしないように、みんな一生懸命洗いました。

洗ったお米を羽釜へ。外で火をつけて炊いていきます。
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慎重に慎重に。

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今回使う羽釜はかまど付き。かまど部分に薪や小枝、新聞紙を詰めて火をつけます。
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徐々に火がついていく様子をじっと見入る子どもたち。か、かわいい。。

お米が炊けるまでの時間は、糠クッキーづくりと周辺の散歩。今回集まった子どもたちは2歳から5歳。元気なみんなは、気持ちの良い田園風景の中、遊びまわります。

羽釜で炊いた、お米の味は?

ドキドキしながら、羽釜の蓋を開けます。「めっこになっていないかな~?」と野村さん。※めっこ:福井弁。芯が固く残っているごはんのこと。
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小さなおにぎりにして試食しました。自分たちで研いで炊いたお米は美味しい~。おこげの部分がまた何ともたまりません!

越前丹南、日常に触れる旅6/お米でつながる食育ツアー
最後はみんなで記念撮影!豊かな生態系を育む里山の無農薬米は、人と生き物が共存して暮らしていく中で生まれた食のひとつ。楽しく体験しながら、甘いお米の一粒一粒を噛み締めました。

へしこづくりは地域の文化

炊きたてのお米を保温ジャーに入れて、山道を抜け、お次は浜へと向かいます。
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山道は竹林や、クマに注意の看板が出てきます。緑のトンネルを抜けるとそこは海!越前市のお隣、南越前町糠地区に到着です。

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着いたのは、「うみの宿さへい」さんのへしこの加工所。

へしこづくりはさへいの女将さん、南清美さんがレクチャーしてくださいます。へしこは鯖を糠につけた福井の伝統的な保存食。塩気が効いているので、お酒やごはんがすすむ逸品です。
南さんは、2012年に地元住民が立ち上げた「ヘレンプロジェクト」で、へしこの作り方からアレンジ方法まで参加者に指導しながら、伝統的な食文化や発酵食を伝える活動を行っています。「へしこは糠をサンドしてつくる保存食。しっかり糠を入れると塩分が取れるのでまろやかな仕上がりになりますよ」と南さん。南さんのレクチャーを受けながら、へしこづくりを体験します。
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南さんは結婚して南越前町に移り住みました。今では、この地域の食文化を守り伝える第一人者です。「秋祭りの時期につくるへしこを使ったへしこ寿司という料理もあります。昔は地区の家庭でそれぞれ作られていたけれど、今はほとんど作る人がいなくなってしまった。これからはへしこ寿司の作り方も積極的に伝えていきたいですね」。
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へしこづくりは、大人たちが体験!子どもたちはお母さんたちの手元を覗き込みます。内臓を取った鯖のおなかに糠をぎゅっと入れます。「もっと沢山入るよ~」と南さんから声がかかります。
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糠には米麹と唐辛子を入れます。「麹を沢山入れると発酵が早くなる。あとは、まんべんなく漬かるから、漬けた樽の真ん中あたりのへしこが一番美味しいかな」。
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漬けたへしこは木の板をかぶせて、重しをのせ、保存所へ。ここで酵母菌のおしらさんが生え、発酵していきます。途中で塩漬けした鯖から出る浸出液の「いしる」を入れるのがさへいさんのへしこのポイントだそう。これで旨みがぐっとUPします。
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保存所の中には、チョコレートやコーヒーなどを糠に混ぜたチャレンジ変わり種も!南さんやプロジェクトの皆さんの探求心と遊び心がうかがえます。
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へしこ工房の看板前で、つなぎを着てへしこのポーズ!大人たちも童心に帰って楽しみました。

白米とへしこ、お刺身でゴール!

午前中から体験してきて、おなかはもうぺっこぺこ。
最後は、おまちかねのお昼ご飯です。会場は、越前海岸が間近に迫る「うみの宿さへい」さん。
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じゃーん!羽釜で炊いた白ごはん!漁師宿のさへいさん、お刺身は流石の美味しさです。
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そして、じゃーん!へしこ!!へしこは糠をつけたまま軽く焼いたものをいただきました。
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最後にじゃーん!アレンジ料理、へしこのカナッペ!!!これは。。白ワインか日本酒のお供ですね。
美味しいごはんをみんなでもりもり食べました。
子どもたちは、ごはんを食べて元気復活!はじめての顔合わせがほとんどでしたが、みんなで追いかけっこをして最後はすっかり仲良しになっていました。

玄米を精米するところから始まった今回のトライアルツアー。みなさんいかがでしたか。

美味しい食の背景には、地域の生態系を育む地道な取り組みや、地域文化を次世代につなぐ想いがありました。そして何より、元気で明るく案内してくださった、野村さんと南さんのお二人の力強い存在が心に残りました。また会いたいなと思う人がいることが、その地域の魅力につながると改めて感じたトライアルツアーでした。
お米がつなぐ食のつながり。ごちそうさまでした!

この取り組みは、丹南地域周遊・滞在型観光推進事業の一環で、(株)JTB福井支店が実施したものです。

越前市エコビレッジ交流センター「風の館さかのくち」http://www.ecovilg.jp/

うみの宿さへいhttp://www.ecovilg.jp/