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【神戸】FARM to FORK 2021 レポートvol.2

イベントレポート

2021.12.09

2021年10月30日(土)〜31日(日)に開催した、食都神戸DAY「FARM to FORK 2021」。今年は「みんなで守り育てよう!神戸の海、山、田畑。」をテーマに、様々なトークセッションや音楽ライブ、ワークショップ、そして地産の食を楽しむ2日間となりました。レポート第二弾では、農林漁業者を中心としたトークセッションの様子をお届けしていきます。

【神戸】FARM to FORK 2021 レポートvol.2
今回特にお伝えしたかったメッセージのひとつ「実は神戸は豊かな漁場だった」

FARM(=農地)から FORK(=食卓)へという名の通り、これまでは主に農業へスポットを当てたイベントでした。しかし今年ははじめて海辺での開催。

最近は漁師さんとのご縁もあり、神戸の海についてお話をうかがう機会も増えました。そんな中で、私たちの暮らしには農地だけではなく、海も、そして山も含めた自然の循環が大事なのだと改めて感じています。

そこで今回は神戸の海、山、田畑について思いを馳せるというテーマでイベントを企画。ここからは、日頃から農林漁業に関わり活動されている方々によるトークセッションの様子をレポートしていきます。

トーク「農林漁業サイクルサミット」

漁師の尻池宏典さん、農家の西馬きむ子さん、木材コーディネーターの山崎正夫さんに「海・農村・山の循環」の観点からお話いただき、神戸の豊かさや現状、そしてこれからの生活について考えました。

【神戸】FARM to FORK 2021 レポートvol.2
左から、尻池宏典さん(神戸ペアトローリングス)、西馬きむ子さん(ヘルシーファーム)、山崎正夫さん(SHARE WOODS)

「昔は自然の循環だけでなく、生活の中でも山と田んぼと海が一本に繋がっていたんです」と話す西馬さん。その頃は当然のように地産地消が行われていたのだとか。神戸でとれた食材を食べ、神戸でできたものを使う。だからこそ豊かな自然環境が守られていたのです。

しかし今では、都市の利便性や清潔を求めすぎる生活スタイルの広まりにより、きれいすぎる=栄養のない海になり、山は手入れされず荒廃し、田畑に水不足が起こる。それぞれ異なるフィールドで仕事をされている3者ですが、自然の中で働く者同士、環境の変化をひしひしと感じられているようです。

昔の生活に戻るのは難しいけれど、まずは神戸の豊かさや環境問題、生産者について知ることが大切。その上で、できるだけローカルなものを顔の見える生産者から買うという地産地消の意識を持つことが、巡り巡って私たちの将来を豊かにするのだと学びました。こうして海、山、田畑のつながりが可視化されることで、これからは少しでも暮らし方を変えみようかと思っていただけた方も多かったのではないでしょうか。

レポートでは伝え切れないほど、皆さんの思いの詰まったトークセッションとなりました。全容はEAT LOCAL KOBEのinstagramにてご視聴いただけますので、ぜひこちらからご覧ください。

トーク「神戸を取り巻く漁業のはなし」

須磨里海の会・吉田裕之さんを聞き手に、すまうら水産代表の森本明さん、漁師の西村和基さん、徳島大学教授の中西敬さんによるトークセッション。あまり知られていない神戸の漁業や、海を取り巻く環境についてお話いただきました。

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魚の帽子を被った中西先生によるクイズで、神戸の漁業について楽しく学びました。

「みなさんが思っている以上に兵庫は水産県で、その中でも神戸市ではものすごく魚が獲れている。しかも全国と比べて若い漁師さんが多いんです。」と中西先生。それだけ漁業が盛んな街だということを、クイズを混えてお話いただきました。これを聞いて神戸のイメージが変わったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしそんな神戸の海が今、どんどん痩せて漁獲量も減っている。海で働く森本さん、西村さんはそれを肌で感じながら、日々危機感を募らせているとのこと。

ではなぜ海の環境が変わってしまったのか。人に例えれば、1985年頃をピークにメタボ(=栄養過多)化した海が不健康なダイエット(=大阪湾に流れ込む水・栄養分を止める)をした結果なのだとか。人がきれいに透き通った海を求める一方で、魚にとっては栄養のない住処になってしまったのです。これまで環境を変えてきたのは人。ならばまた人の意識によって、海の環境を戻していかなければいけないというお話でした。

「海は私たちの生活の鏡です。海の環境が豊かで持続可能であれば、私たちの生活が豊かで持続可能だということ」という森本さんの言葉が印象的でした。まずは、人の暮らしと海が直結しているという意識を持つこと、神戸の海・漁業について知ることからアクションを起こしていきませんか?

→トークセッションの全容はこちらからご視聴いただけます。

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左から、吉田裕之さん(須磨里海の会会長)、森本明さん(すまうら水産代表)、西村和基さん(東垂水東水会会長)、中西敬さん(徳島大学)

トーク「火と水がつなぐ神戸のくらし」

旅する料理人・三上奈緒さんが聞き手となり、「海」の漁師・糸谷謙一さん、「山」の猟師・新田哲也さん、そして「里」の茅葺き職人・相良育弥さんが神戸の環境と人の営みについて語り合いました。

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1日目に行われた、三上奈緒さんによる焚き火料理の食事会。鹿を捌くのは猟師の新田さん
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左から、糸谷謙一さん(神戸ペアトローリングス)、三上奈緒さん(旅する料理人)

まずは糸谷さんが生業とされているしらす漁について、新田さんが鹿や猪を仕留めるところから精肉まで行うようになった経緯についてうかがいました。私たちの食はそういった第一次産業によって支えられているわけですが、そこには人間の都合で生態系や環境に影響を及ぼしてしまっているという葛藤もあるそうです。

だからこそ「私たち人間が生きているということは、何かの命をいただいているということ。文明的な生き方をしていると忘れがちだけど、そこにあえて向き合うことが大切。」と三上さんは話します。自然の恵みを美味しい状態で提供してくれる人の存在、そして美味しくいただくことの大切さに改めて気づくことができました。

また、トークセッションの中でキーワードになったのは「バランス」。自然と人の間合いの取り方=バランスを「自然に近いところで働いている我々が、人に伝えていくということが大事」だと相良さん。スケールが程よい神戸だからこそ、お互いがお互いを想像しやすい。自分が食べるものを誰がどこから届けてくれているのかがわかりやすいのは、自然と街の距離が近い神戸の地の利とも言えるかもしれません。登壇した4人だけでなく聞いているみなさんも、自然の循環の中にいる当事者として捉えていくことが豊かな未来を作っていくのでは、というメッセージで締め括られました。

→トークセッションの全容はこちらからご視聴いただけます。

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左から、相良育弥さん(株式会社くさかんむり)、新田哲也さん(カーリマン)
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まちなかでありながら海も山も近い須磨海岸

神戸だから発信できる「EAT LOCAL」

ステージの後ろに海、西側を見れば山、そして山の向こうの田畑に思いを馳せる。はじめてFARM to FORKの会場となった須磨海岸は、神戸の環境や食について想像力を掻き立たせられるロケーションでした。そんな中で開催されたトークセッションは、私たちの暮らしと海、山、田畑の繋がりをより切に感じられたのではないでしょうか。
農林漁業に関わる方々が、肩書きを超えて互いに関心を持ち熱く語り合う姿は、神戸の未来に希望を感じられるものでした。EAT LOCAL KOBEではこれからも生産者さんの声を届け、街の暮らしに農林漁業との関わりを取り戻していくために活動を継続していきます。少しでも多くの方が神戸の豊かな地産地消にご参加いただけると嬉しいです。